2019.11.14 - Songwriter | ||
A Smile And A Ribbon
Mark McIntyre (1956) |
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Songwriterシリーズ、
今回は Mark McIntyre という人を取り上げたいと思います。
Mark McIntyre は1956年に Billboard Hot 100 の4位とヒットになった、"Tonight You Belong To Me" を歌った姉妹デュオ、Patience and Prudence のお父さんになります。Patience and Prudence は後に、The Osmonds や Jackson-5 といった兄弟姉妹で活躍するグループの先駆けとなりました。
Mark McIntyre は1916年生まれ、1970年に亡くなっています。1940年代は Frank Sinatra のオーケストラに所属してピアノを弾いていました。作曲も行うようになり、Peggy Lee、Dinah Shore などに楽曲提供していくようになります。1942年に長女、Patience Ann McIntyre が誕生。1945年に次女、Prudence Ann McIntyre が誕生しています。
1956年に女優でシンガーの Lisa Kirk という女性に "A Smile And A Ribbon" という曲を書きます。詩を書いたのは Lisa Kirk の当時の夫だった Robert Wells で、Mel Tormé との共作曲、"The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire)" で知られている人です。Mark McIntyre はこの曲を試しに次女の Prudenceに歌わせてみました。
そして、姉妹のデュオで、1926年に Billy Rose-Lee David によって作られた曲、"Tonight You Belong to Me" を録音しました。1962年、日本国内でヒットした邦題『イチゴの片想い』で知られる、Nancy Sinatra が歌ったバージョンはこの Patience and Prudence のバージョンがお手本になっています。ここで参考まで、 Patience and Prudence の "Tonight You Belong to Me" を聴いてみたいと思います。
Tonight You Belong To Me (Billy Rose-Lee David) / Patience & Prudence (1956)
その2曲を Liberty Records のプロデューサー、Si Waronker に聴かせてみました。Si Waronker はこの2曲をとても気に入り、A面を "Tonight You Belong to Me"、B面を "A Smile And A Ribbon" でシングル・リリース。Billboard Hot 100 の4位と大ヒットとなりました。
このヒットを受けて、Mark McIntyre は娘たちのために楽曲を書き、演奏していきます。また Liberty Records の所属ミュージシャン、Gene McDaniels やキャラクターグループ、The Chipmunks のためにも楽曲を書きました。
Mark McIntyre の2人の娘、Patience & Prudence の作品から聴いてみたいと思います。
A Smile And A Ribbon (Mark McIntyre-Robert Wells) / Prudence (1956)
先に書いた通り、元々は 女性歌手 Lisa Kirk 向けに書いた作品。ソロで歌った次女の Prudence は当時、11歳くらいでした。チェレスタの優しい音色と可愛らしい声。今でもとっても好きな曲です。詩を書いたのは "The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire)" で知られる Robert Wells。
You Tattletale (Leon Pober-Mark McIntyre) / Patience & Prudence (1957)
続けて Patience & Prudence のナンバーを。1957年にリリースした作品です。演奏は The Mark McIntyre Orchestra となっています。2人の声の多重で録音、無垢な声で癒されます。
Whisper Whisper (Bill Olofson-Mark McIntyre) / Mike Clifford With Patience & Prudence (1962)
1962年に "Close To Cathy" のヒットを持つ、シンガー兼俳優の Mike Clifford と一緒に歌った作品。カントリー調の曲で、Mike Clifford もいい声しています。
ここからは Patience & Prudence 以外の作品を聴いてみます。
He's Just My Kind (Huddleston-McIntyre) / Peggy Lee With Dave Barbour And His Orchestra (1946)
1946年に Mark McIntyre が書いた初期の作品です。Peggy Lee にとっても極初期の作品になります。演奏を指揮している Dave Barbour は Peggy Lee の旦那さんです。しっとりとしたロマンティックなナンバー。
Never Underestimate (Floyd Huddleston-Mark McIntyre) / Dinah Shore (1954)
1950年代に入ってからの作品。Dinah Shore に提供した作品です。アレンジは後に Ella Fitzgerald のレコーディングに携わることになる Buddy Bregman が担当しています。詩を書いた Floyd Huddleston は映画界、テレビ界でシナリオを書いていた人です。
The Trouble With Harry (Huddleston-Eiseman-McIntyre) / Les Baxter And His Orchestra (1955)
1955年に制作された作品。映画『ハリーの災難』 (The Trouble With Harry) にインスパイアされた作品で、映画とは直接関係はない模様です。映画同様、ちょっとユーモアのある作品です。
A Smile And A Ribbon (Mark McIntyre-Robert Wells) / Lisa Kirk (1956)
"A Smile And A Ribbon" のオリジナルバージョンです。先に書いたように Lisa Kirk は詩を書いた Robert Wells の奥様でした。演奏は Percy Faith のオーケストラです。大人のハスキーボイスです。
Laddie-O (Bill Olofson-Mark McIntyre) / Margie Rayburn (1959)
Patience & Prudence は1956年の "Tonight You Belong to Me" がヒットしたのみとなりましたが、Mark McIntyre は Patience & Prudence が所属していた Liberty Records のミュージシャン達に曲をいくつか書くようになります。The Sunnysiders というカントリーグループに所属していた Margie Rayburn という女性に書いた作品です。この人もいい声しています。
When I Was A Child (Floyd Huddleston-Mark McIntyre) / Gene McDaniels (1960)
When I Was A Child (Floyd Huddleston-Mark McIntyre) / Peggy Lee (1960)
1960年、Liberty Records の所属のミュージシャン、Gene McDaniels に提供した作品。とても優しい曲です。Gene McDaniels は名前を本名の Eugene McDaniels に戻し、ソングライターに転身します。同年、デビュー当時から縁のある Peggy Lee もこの曲を取り上げました。それも合わせて。
A Smile And A Ribbon From "Ghost World" (2001)
友人から教えてもらった映画『ゴーストワールド』(Ghost World、2001) にこの曲が流れてきました。とってもいい使い方だと思いました。ラストに近づく辺りにこの曲が登場。主人公の少女は友人ともちょっとずつ気持ちにズレが生じて、仕事=バイト始めてもうまくいかない。虚ろになっていく自分と街の風景...。そんな気持ちをそっと癒すように無垢なこの声が流れてきます。