2020.10.14 - Songwriter
Coming Back To You Coming Back To You
Kenny Seymour

(1977)

(2020年10月11日SSB「スイートソウル特集」で、First Class "Coming Back To You" がかかったので)


Songwriterシリーズ
今回は First Class の "Coming Back To You" を書いた Kenny Seymour という人に迫ってみたいと思います。

まずは時代を1950年代に遡って Doo Wop グループ、The Imperials の話から始めたいと思います。
1958年、Doo Wop グループ、The Imperials が End Records からリリースした "Tears on My Pillow" が Billboard Hot 100 の4位と大ヒットします。The Imperials は特徴的なファルセットのリードボーカリスト、"Little Anthony" Gourdine の名前を前面に出し、Little Anthony and The Imperials となり、人気グループとなります。

1961年、"Little Anthony" Gourdine はソロ活動のため、The Imperials から離れソロデビューします。その時、The Imperials に加入したのが、George Kerr でした。後に George Kerr は自身の音楽活動と並行して、ニューヨーク、ニュージャージーを拠点に Stang Records、All Platinum Records といったレーベルを中心にプロデューサーとして活動していくことなります。George Kerr が The Imperials に在籍していた期間は短く、George Kerr の代わりに The Imperials に加入したのが、今回取り上げる Kenny Seymour です。

Kenny Seymour は1957年に結成された Doo Wop グループ The Impacts のリードボーカリスト(バリトン)でした。この The Impacts は1960年代に The Blue Chips と名乗って活動をしていた時期がありました。

1963年、"Little Anthony" Gourdine のソロ活動はあまり大きな効果を得られずに活動を終了し、The Imperials へ戻ってきます。その時に代わりとして Kenny Seymour は The Imperials から離脱しました。

Little Anthony and The Imperials は アレンジャー Don Costa が主宰する DCP International Records から再デビューします。同レーベルで Teddy Randazzo がプロデュースを担当。1964年にリリースした "Goin' Out Of My Head " が Billboard Hot 100 の6位の大ヒット、グループは復活します。

その時、Teddy Randazzo は The Imperials を離脱した Kenny Seymour の才能に気づいていました。Teddy Randazzo は Kenny Seymour がかつて所属していたグループ、The Impacts を Kenny & The Impacts として復活させてプロデュース、DCP International Records からシングルをリリースします。

Wishing Well(Kenny Seymour) / Kenny & The Impacts(1965)

その後、Kenny Seymour は Teddy Randazzo の片腕として、楽曲制作やアレンジを担当し、Little Anthony and The Imperials をスタッフとして支えていくことになります。また The Imperials を通じて縁ができたプロデューサー George Kerr からも声がかかるようになり、George Kerr が手掛けたミュージシャンに楽曲を提供していくようになります。

1960年後期以降、プロデューサー George Kerr の下で Kenny Seymour が書いた楽曲中心に聴いていきたいと思います。


It's Been A Long Time Coming(Kenny Seymour-M.Young) / The Earls(1968)

My Lonely Lonely Room(C.Dyce-Kenny Seymour) / The Earls(1968)

"Remember Me Baby(Barry Mann-Cynthia Weil)" などで知られる White Doo Wop グループの The Earls。この作品は1968年、ABC Records からリリースしたシングルAB面。プロデュースは George Kerr。アレンジは後にインストグループ The Stuff などで活躍することになる Richard Tee です。Doo Wop を脱皮し、ブルーアイドソウルな The Earls ‎が聴けます。


Wishing And Hoping(Kenny Seymour) / Billy Keene (1968)

1968年リリースの Kenny Seymour の単独クレジット作品です。録音は西海岸のようで、ミュージカルディレクターを務めた Lee Young はドラマーで、サックス奏者の Lester Young の弟だそうです。快活で気持ちいい曲。


Going Going Gone(Kenny Seymour) / The O'Jays(1968)

The O'Jays は Philadelphia International Records で活躍する前は George Kerr がプロデュースを手掛けていました。1968年、Bell Record からリリースしたシングル。これも Kenny Seymour 単独クレジットで、Richard Tee がアレンジです。


Nothing To It(Kenny Seymour) / Ronnie Love(1978)

1978年の作品。プロデュースとアレンジを担当したプロデューサーの Greg Carmichael は Patrick Adams とよく一緒に仕事をしている人です。同年、その Greg Carmichael と Patrick Adams のプロデュースで、Magnetic Touch というグループもこの曲をレコーディングしています。


Coming Back To You(Dru Butler-Kenny Seymour) / First Class(1977)

1977年、First Class が All Platinum ‎Reords からリリースした楽曲。プロデュースは George Kerr と Sylvia Robinson です。SEの電話が切られる途端、コーラスもプツッと切られるという電話を使ったアイデアが秀逸。
リチャード・マシスン(Richard Matheson)の短編小説「蒸発」みたいな終わり方です(笑顔)


I've Got The Rest Of My Life To Love You(Kenny Seymour) / Kenny Seymour(1973)

1973年、Kenny Seymour はソロシングルをリリースしています。プロデュースは George Kerr で、アレンジは Bert Keys が担当。いいメロディにいいリズムをした心地よい曲です。Kenny Seymour さん、Doo Wop 時代にリードボーカルを担当していただけにいい声をしています。

(富田英伸)

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