2021.01.07 - Songwriter | ||
It Can Happen To You
Joe Renzetti (1970) |
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(2021年1月3日SSB「新春放談」で、Joe Renzetti が書いた Sacha Distel "It Can Happen To You" がかかりましたので)
Songwriterシリーズ、
今回は Joe Renzetti を取り上げます。
Joe Renzetti は1960年代、フィラデルフィアを拠点に活躍したギターリスト/アレンジャーです。今回は Joe Renzetti がアレンジと共に他の作家の楽曲制作に参加した作品を中心に聴いていきたいと思います。
Joe Renzetti こと Joseph Renzetti は1941年、フィラデルフィア生まれ。1950年代後半にはレコードスタジオで働き出しています。当初は Leroy Lovett の楽団に所属し、いわゆるジャズ・ビックバンドのギターリストでした。その Leroy Lovett が書いたヒット曲、Al Hibbler の "After The Lights Go Down Low " などでギターを弾いています。
1950年代後半、ロックンロール全盛の時代を迎えます。Joe Renzetti は Leroy Lovett のジャズ・ビックバンドを抜けて、地元のフィラデルフィアでロックンロール・セッションに参加するようになります。Joe Renzetti のそのギター技量の高さに目をつけたプロデューサー、ソングライターの David Appell から連絡が入り、フィラデルフィアの Cameo-Parkway Records のハウスバンドミューシャンとなります。そこでドラムス Bobby Gregg、ベーシスト Joe Macho と出会い、鉄壁のフィラデルフィア・リズムセクションが誕生します。
1964年頃まで、人気テレビ音楽番組 Dick Clark ホストの『American Bandstand』はフィラデルフィアで制作され、Joe Renzetti など Cameo-Parkway Records のハウスバンドミューシャン達はその番組でも演奏するようになり、腕を磨いていくことになります。特にその番組で人気があったのはダンスミュージックでした。Cameo-Parkway Records でも次々とダンスミュージックが作られていくようになります。大ヒットした Chubby Checker "Let's Twist Again"(Kal Mann-Dave Appell、1961)、Dee Dee Sharp "Mashed Potato Time"(Kal Mann-Bernie Lowe、1962) といったダンスナンバーは、Joe Renzetti を中心としたリズムセクションが担当したと言われています。Joe Renzetti のアレンジにグルーヴ感があるのはこの数多くのダンスミュージックに携わってきたからだと思います。
Cameo-Parkway Records でのセッションを通じ、ピアニスト/アレンジャーの Jimmy Wisner と出会い大きな影響を受け、Joe Renzetti はアレンジャーとなります。またフィラデルフィアで活躍していたプロデューサー達、Jerry Ross、Billy Jackson、John Madara-David White、Kenny Gamble らと交流し、彼らからギターリスト/アレンジャーとして腕を買われ、多くの楽曲のアレンジを行っていくようになります。
1970年代後半になると、映画音楽家に転身。映画『ザ・シンガー』(ELVIS、1979)、映画『エクスタミネーター』(THE EXTERMINATOR、1980)、映画『ポルターガイスト3/少女の霊に捧ぐ』(POLTERGEIST III、1988)などの音楽を手がけます。1978年の映画『バディ・ホリー・ストーリー』(THE BUDDY HOLLY STORY)では、アカデミー賞音楽(編曲・歌曲)賞を受賞しています。
今回は、Joe Renzetti がフィラデルフィアで数多くのセッション、ギター/アレンジを行った際に、楽曲制作にも参加した作品をいくつか聴いていきたいと思います。
Everybody Crossfire(Jerry Ross-Kenny Gamble-Joe Renzetti) / Sammy Sevens(1963)
1963年、Swan Records からリリースされた Jerry Ross のプロデュース作品。Jerry Ross-Kenny Gamble に Joe Renzetti が加わった楽曲です。アレンジは Kenny Gamble と Joe Renzetti が共同で担当。当時のダンスミュージックを反映したナンバーです。
He's No Ordinary Guy(Jerry Ross-Kenny Gamble-Joe Renzetti-Robert Richards) / Dee Dee Sharp(1964)
1964年、Cameo Records からリリースされた同じく、Jerry Ross のプロデュース作品。歌ったのは後に Kenny Gamble の奥様となる Dee Dee Sharp。柔らかいリズム・ギター(たぶん、Joe Renzetti が弾いていると思います)が特長でこの時代にしては洒落た曲調です。
Gonna Be A Big Thing(Jerry Ross-Joe Renzetti-Neil Brian) / The Sapphires (1966)
1966年、ABC-Paramount Records からリリース。女性1人、男性2人のグループ、The Sapphires が歌いました。前年、1965年にガールグループ、The Yum Yums に提供したバージョンがオリジナルとなります。軽快なダンスナンバー。途中、転調する感じがなんとも心地よいです。Joe Renzetti らしいサウンドに仕上がっています。
Dream(Jerry Ross-Joe Renzetti-Michael Mascia) / Keith and The Admirations(1965)
"98.6"、"Ain't Gonna Lie" の歌唱で知られる Keith が所属していたボーカルグループ、Keith and The Admirations に提供した楽曲。Jerry Ross プロデュース作品で、1965年、Columbia Records からリリース。どことなく、The Four Seasons と思わせるサウンドをしています。
Love, Love, Love(Jerry Ross-Joe Renzetti) / Bobby Hebb(1966)
1966年、Bobby Hebb に提供したJerry Ross プロデュース作品。Joe Renzetti がアレンジで、アレンジ主導で作られたような楽曲、これも心地よいナンバーです。サックスとコーラスのユニゾンの使い方が実に上手いです。思わず手拍子しながら聴いてしまいます。オリジナルは前年、1965年にリリースされた Ray Hoff And The Off Beats です。
Our Love Started All Over Again(Jerry Ross-Joe Renzetti-William Frederick-Neil Brian) / Keith(1966)
1966年、Keith に提供した楽曲で、"Ain't Gonna Lie" のB面に収録された作品。これまでと異なり、スケールの大きいバラード曲になります。アレンジも Joe Renzetti が担当。
Once Upon A Time(Billy Jackson-Jimmy Wisner-Joe Renzetti) / The Orlons(1967)
フィラデルフィアで結成された女性3人、男性1人のグループ The Orlons に提供した楽曲。Billy Jackson-Jimmy Wisner チームにアレンジャー Joe Renzetti が共作した珍しい作品。アレンジは Joe Renzetti が担当しています。シャッフルが効いた心地いいナンバーです。
It Can Happen To You(Joe Renzetti) / Sacha Distel(1970)
1970年、Joe Renzetti 単独クレジットの作品です。Sacha Distel はフランス出身のシンガーで1950年代はジャズ・ギターリストとして活躍した人。1970年に
Warner Bros. Records からリリースしたアルバム『Sacha Distel』はプロデュースを Jimmy Wisner と Cliff Richard、The Shadows などを手掛けてきたイギリスの Norrie Paramor が分け合って担当していて、番組SSBでコメントがあったようにどこでレコーディングされたのかイマイチ不明な感じになっています。プロデューサーの Jimmy Wisner からの依頼で、Joe Renzetti が書下ろした曲だと思います。これも素敵なシャッフルビート・ナンバーです。