2021.02.13 - Songwriter | ||
Beyond The Wall of Sound
Various Musicians (2021) |
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(2021年2月14日SSB「ウォール・オブ・サウンドで棚からひとつかみ」放送予定にあわせて、Songwriterシリーズも "ウォール・オブ・サウンド" にスポットを当ててみます)
Songwriterシリーズ、
2021年1月16日に Phil Spector が亡くなりました。死因は新型コロナによるものとのこと。Phil Spector の Philles Records からリリースされたいわゆる、"ウォール・オブ・サウンド"。当時このサウンドに影響を受けた楽曲が数多くリリースされました。今回は「Songwriterシリーズ番外編」として、そのような Philles Records から影響を受けた楽曲、"スペクター・イミテーション" を取り上げてみます。題して、"Beyond The Wall of Sound" です。
今回は、アレンジや音質を抜きにしても、綺麗なメロディーをした曲を中心に選んでみました。音圧の方はイマイチのものもあるのでご勘弁を〜(笑顔)
A Little Love (Will Go A Long Way)(Freeman King-Gary Zekley) / Alder Ray(1964)
1964年のリリース作品。後に The Clique というグループで活動することになる、Gary Zekley が曲を書いています。歌っているのは、The Buttons などのガールグループで歌っていた Alder Ray です。この曲は Phil Spector がかつて組んでいたグループ、The Teddy Bears のメンバーだった Marshall Leib がプロデュースした作品で、録音も Gold Star Studio で録音されています。アレンジは その Gold Star Studio で活躍していたベーシスト Ray Pohlman。バックコーラスは The Blossoms とのことです。
I Still Love Him( Jerry Cole-Jimmy Cross )/ The Joys(1964)
Phillies Records と同じく、Gold Star Studios を本拠地にしていた Valiant Records。Perry Botkin Jr.-Gil Garfield も"ウォール・オブ・サウンド"をいくつか試みました。スタジオ・ガールグループ3人組の The Joys はかつて Phil Spector が組んでいた The Teddy Bears のメンバーであった Annette Kleinbard こと Carol Connors、そして Robin Ward こと Jackie Ward が在籍していました。曲を書いたのは、Jerry Cole という人、Gold Star Studio で Jerry Kolbrak 名義でギターを弾いていた人です。アレンジは Perry Botkin Jr.。この曲は、ヨーロッパで Françoise Hardy が取り上げました。
Can't Stop Loving The Boy (L.Weiss-T.Catalano) / The Carolines (1966)
Larry Weiss が書いた曲。2015年9月20日SSBでもオンエアされた、The Carolines 。ガール・ポップスのお手本のような溌剌としたナンバー。曲とプロデュースは Larry Weiss で1966年、ROULETTE からリリースされました。アレンジは Artie Butler が担当。
Baby That's Me(Jack Nitzsche-Jackie DeShannon) / The Cake(1967)
ニューヨークで結成された3人組のガールグループ、The Cake がリリースした作品。"スペクター・イミテーション" として特によく取り上げられるナンバーです。曲を書いたのは、Jack Nitzsche-Jackie DeShannon。しかし、アレンジは Jack Nitzsche ではなく、ニューオリンズ生まれのジャズ寄りのサックス奏者、アレンジャーの Harold Battiste が担当しています。エンジニアは Stan Ross。
I Can't Make It Alone(Carole King-Gerry Goffin) / P. J. Proby(1966)
Carole King-Gerry Goffin による作品。1966年、Liberty Records からリリース。P. J. Proby が歌いました。The Righteous Brothers が取り上げそうな曲調。プロデュースとアレンジは Jack Nitzsche。Sunset Sound Studio での録音ですが、"スペクター・イミテーション"の中でもとりわけ優れた作品だと思います。
If You Love Me (Really Love Me)(Geoffrey Parsons-Marguerite Monnot) / Jackie Trent(1964)
"ウォール・オブ・サウンド"はイギリスの音楽プロデューサー達にも影響を与えました。Tony Hatch もその1人で、邦題「愛の讃歌」で知られる "If You Love Me (Really Love Me)" を、"ウォール・オブ・サウンド"全開でアレンジして、アメリカの Kapp Records からもリリースしました。歌ったのは Tony Hatch の奥方の Jackie Trent。Tony Hatch という人は作曲才能も高い人ですが、アメリカ音楽へのアンテナの張り方も高い人でした。
Stay Awhile(Ivor Raymonde-Mike Hawker) / Dusty Springfield(1964)
もう1人、"ウォール・オブ・サウンド"に影響を受けたイギリスの音楽プロデューサーに John Franz がいます。Dusty Springfield が歌ったデビューシングル "I Only Want to Be with You" に続く第2弾シングル "Stay Awhile"。これも"ウォール・オブ・サウンド"全開で押してきました。曲を書いたのはデビューシングルに引き続き、Ivor Raymonde-Mike Hawker。アレンジは Ivor Raymonde です。バックコーラスは The Breakaways。ドラムスは The Outlaws 出身の Bobby Graham だと思います。John Franz はその後、アメリカから来た3人組、The Walker Brothers を迎え入れ、"ウォール・オブ・サウンド"の音像世界をさらに推進していきます。John Franz に関しては、『Behind The Walker Sound』も参考に。
Just Let It Happen (Chip Taylor-Trade Martin) / The Arbors (1967)
1967年にボーカルグループ The Arbors が歌った楽曲で、Chip Taylor と盟友、Trade Martin が書いた楽曲です。Bill Stegmeyer がアレンジを担当、落ち着いた素晴らしいアレンジです。ストリングスや打楽器の音色に奥行きがあって、洗練された"ウォール・オブ・サウンド"って感じです。オリジナルは1966年、Kapp Records からリリースした Chi Chi こと Chi-Chi McCauley のバージョン。同年、作者の Chip Taylor もこの曲を歌っています。
A Long Way To Be Happy(Carole King-Gerry Goffin) / Darlene Love(1965)
最後は真打、Phil Spector の Philles Records から聴いてみたいと思います。当時はリリースされなかった楽曲で Carole King-Gerry Goffin のペンによる作品。Darlene Love の歌唱、Gold Star Studios 録音のウォール・オブ・サウンド、一番勢いのある頃の作品です。映像の方も Gold Star Studios の当時の様子もわかりやくなっています。1966年に Liberty Records から Carolyn Daye という女性シンガーもこの曲を歌いました。