2021.02.24 - Cinema Music Composers | ||
Bonjour Paris
Roger Edens (1957) |
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Cinema Music Composers シリーズ、
Roger Edens の2回目です。
1950年代中期、Roger Edens はある1つの企画を立ち上げます。1927年に上演されたブロードウェイミュージカル『FUNNY FACE』の映画化です。当時、その舞台に立ったのは、フレッド・アステア(Fred Astaire)と姉のアデル・アステア(Adele Astaire)でした。音楽は George Gershwin-Ira Gershwin が担当していました。Roger Edens はそのミュージカルの舞台をパリに変え、大掛かりな海外ロケを考えていました。
しかし、主演候補に挙げていたオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)が既にパラマウント映画社と契約していたため、その企画は難航しました。Roger Edens は古巣のMGM映画社から離れ、自分の事務所を立ち上げ、パラマウント映画社にこの企画を持ち込みます。スタンリー・ドーネン(Stanley Donen)監督など旧知のMGM映画社のスタッフを動員して、1957年に映画『パリの恋人』(FUNNY FACE)は制作されました。
映画『パリの恋人』は Roger Edens が制作者として渾身の力で取り組んだ作品です。先述のようにこの映画は1927年に上演されたブロードウェイミュージカル『Funny Face』が元になっています。音楽は George Gershwin-Ira Gershwin でしたので、この映画も殆ど、Gershwin のナンバーで占められています。しかし要所要所で、Roger Edens 自身が楽曲を書いています。どれもキュートなナンバーです。
この映画のオーケストレーションを担当した Alexander Courage について触れておきたいと思います。
この映画を含め、1950年代のMGM映画社の音楽は1920年代から1930年代のブロードウェイ・ミュージカルナンバーが多いですが、1950年代になるとそれらの楽曲はいささか古く感じられます。映画化におけるオーケストレーションや楽曲のアレンジはとても重要な役割を担うことになります。Alexander Courage のオーケストレーションはとても溌溂として瑞々しく、映画に活性を与えました。Alexander Courage は2008年に亡くなりましたが、弟子筋にあたる John Williams が音楽担当した映画『ジュラシックパーク』(Jurassic Park、1993)辺りまで、Alexander Courage はオーケストレーションを行っていました。テレビ版の『スター・トレック/宇宙大作戦 』(STAR TREK、1966〜1969)のテーマ曲を作った人でもあります。
Alexander Courage が行ってきたオーケストレーションを俯瞰して見ると、ハリウッド映画の音楽歴史が1920年代のミュージカル黎明期から現在まで繋がっていることがよく理解できます。
1957年の映画『パリの恋人』(FUNNY FACE)から、Roger Edens が書き下ろした3曲を聴いていきたいと思います。
Think Pink(Roger Edens-Leonard Gershe) From "FUNNY FACE"(1957)
主役3人がパリに旅立つ前のニューヨークファッション編集社ビルでのシーン。鮮やか派手な衣装デザインは、イーデス・ヘッド(Edith Head)が担当。(ちなみに、パリでのオードリー・ヘプバーンのワードロープの衣装はジバンシー(Hubert de Givenchy)が担当しました)。色彩コンサルタントには写真家リチャード・アヴェンドン(Richard Avedon)が協力しています。脚本を担当したレナード・ガーシェ(Leonard Gershe)は、そのリチャード・アヴェンドンに着想を得て、フレッド・アステア演じる写真家の人物像を作り出したとのこと。女性編集長を演じたケイ・トンプソン(Kay Thompson)の本職は、MGM映画社のボーカルアレンジャーで、Roger Edens とは旧知の仲でした。
Bonjour Paris(Roger Edens-Leonard Gershe) From "FUNNY FACE" / Kay Thompson, Audrey Hepburn & Fred Astaire(1957)
3人がパリに到着しての最初のナンバー。パリに到着した楽しさが溢れるシーン。パリの観光名所、街並みにもまだ珍しく、海外旅行がまだまだ一般的でなかった時代。多くの人が映画で海外を知った時代です。
On How to Be Lovely(Roger Edens) From "FUNNY FACE" / Kay Thompson and Audrey Hepburn(1957)
2人で可愛く踊るシーン。とってもキュートなシーンです。オードリー・ヘプバーンが出演したミュージカル映画は本作品ともう一本、1964年の映画『マイ・フェア・レディ』(MY FAIR LADY)がありますが、映画『マイ・フェア・レディ』は オードリー・ヘプバーンの歌吹替を Marni Nixon が行いました。映画『パリの恋人』はヘプバーンの実際の歌が聴くことができる貴重な作品となりました。