2021.09.10 - Songwriter | ||
Ain't Nothing Wrong
Chuck Jackson-Marvin Yancy (1977) |
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(2021年9月5日SSB『棚からひとつかみ』で Ronnie Dyson "Ain't Nothing Wrong" がかかったので、2019年11月28日分をアップグレードして再アップします。)
Songwriterシリーズ、
今回は Charles "Chuck" Jackson and Marvin Yancy を取り上げたいと思います。
まず、Charles "Chuck" Jackson ですが、1960年初頭に Burt Bacharach の"Any Day Now"等を歌って活躍したソウル・シンガー、Chuck Jackson、この人も本名が Charles Jackson ですが、この人とは同姓同名ですが別人です。
"Chuck" Jackson こと、Charles Henry Jackson は1945年、サウスカロライナ州グリーンビル生まれました。1969年辺りに、Jerry Butler に楽曲を提供してそのキャリアが始まります。1971年にボーカル・グループ、The Independents を結成します。そのメンバーだったのが、Marvin Yancy です。Marvin Yancy はシカゴ生まれの "Chuck" Jackson より5才年下でした。1972年に Scepter Records 傘下の Wand Records からアルバムをリリース。プロデュースに就いたのは Stan Green でした。そこで2人はグループのために共作していくことになります。ただ、Marvin Yancy はすぐにグループから離れ、楽曲書きに専念したようです。2人は The Independents の活動傍ら、Jerry Butler、Jerry Butler の兄弟の Billy Butler、同じ Wand Records 所属の Clara Lewis、Loleatta Holloway といったミュージシャン達に楽曲を提供していくようになります。1975年には2人が書いた曲、"You" が Aretha Franklin に取り上げられます。
その同じ頃、デビュー前の Natalie Cole と出会います。Natalie Cole はジャズピアニスト、シンガーの父、Nat King Cole とは違って、幼い時からよく聴いていた Aretha Franklin のようなソウルミュージックを目指していました。Chuck Jackson と Marvin Yancy は Aretha Franklin に提供する予定の曲や不採用になった曲を Natalie Cole の声でデモを録音、それを父 Nat King Cole が所属していた Capitol Records に持ち込みます。Capitol Records のプロデューサー、Larkin Arnold からOKが出て、1975年、Natalie Cole のデビューアルバム『Inseparable』が Chuck Jackson-Marvin Yancy 全面プロデュースで制作されます。そこからシングルカットされ、デビューシングルとなった "This Will Be (An Everlasting Love)" は U.S. Billboard Hot 100 の6位となります。2人は Natalie Cole のプロジェクトに専念するため、The Independents を解散します。
デビューアルバム『Inseparable』のアレンジ、その後の Natalie Cole のアルバム一連について、特筆すべきは優れた楽曲アレンジだと思います。Chuck Jackson-Marvin Yancy だけではこのグルーヴ感、煌びやかな音感は出なかったと思います。2人と共同でアレンジを担当した Richard Evans について少し触れておきたいと思います。
Richard Evans は1950年後期から活動しているアレンジャーで、ジャズ寄りのミュージシャンのアルバム等で活躍してきました。特に Ramsey Lewis の作品でアレンジを担当していました。1966年にはシカゴで Soulful Strings を結成。そのリーダーとなって活動します。この The Soulful Strings には、後に Earth, Wind & Fire を手掛けることになる Charles Stepney、ドラマーの Morris Jennings、ギターの Phil Upchurch らが在籍していました。とてもバランス感覚の良いアレンジャーです。
Marvin Yancy は1976年に Natalie Cole と結婚、公私共に Natalie Cole を支えました。1980年、2人は離婚。1985年に Marvin Yancy は心臓発作で亡くなりました。34才の若さでした。
一方、Chuck Jackson は1978年、1979年にソロアルバムを2枚リリース。1980年代に入ると、The Montclairs 出身の Phil Perry と組んで楽曲を制作。1990年以降も Aretha Franklin、そして Whitney Houston 等に楽曲を提供、プロデュースを行いました。
Chuck Jackson-Marvin Yancy が手掛けた作品を聴いてみたいと思います。
Walk Easy My Son(Chuck Jackson) / Jerry Butler(1971)
まず最初に Chuck Jackson が Jerry Butler に提供した楽曲を聴いてみます。Chuck Jackson 単独クレジットの作品。アレンジは Gerald Sims が担当。冒頭のピアノは Donny Hathaway が弾いています。
The First Time We Met(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / The Independents(1973)
The Independents が1973年にリリースしたシングルを映像付きで。一番左のリードを歌っているのが Chuck Jackson です。アレンジは Tom-Tom こと Tom Washington です。
This Will Be (An Everlasting Love)(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Natalie Cole(1975)
(I Like Being) Close To You(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Ronnie Dyson(1976)
1975年にリリースした Natalie Cole のデビューシングル。U.S. Billboard Hot 100 の6位のヒットとなり、彼女にとっても素晴らしい門出となりました。元気で晴れやかなボーカル。アレンジはChuck Jackson-Marvin Yancy と共同で、Richard Evans が参加。翌年、この曲で詩を変え、ミドルテンポにして Ronnie Dyson が歌いました。
(I Like Being)Inseparable(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Natalie Cole(1975)
1975年リリースのデビューアルバム『Inseparable』から表題曲。うって変わってソロ―バラードナンバーです。デビューの頃から歌の表現力が高いことがわかります。流麗なアレンジは Richard Evans 。
Mr. Melody(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Natalie Cole(1976)
(I Like Being)Mr. Melody(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Natalie Cole(1976、第5回東京音楽祭ライブ)
1976年にリリースしたシングル。中盤の Natalie Cole の素晴らしいスキャット!歌う愉しさに溢れています。ここでもグルーヴ感たっぷりの Richard Evans のアレンジが響き渡っています。同年、Natalie Cole はこの曲を引っ提げて、第5回東京音楽祭に出場、グランプリを取ります。テレビで放送されたその時の映像が残っています。これはうれしいですね!
(I Like Being)Loving Power(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Impressions(1976)
Chuck Jackson-Marvin Yancy は1976年に Impressions のアルバム『Loving Power』を手掛けました。ちなみにエクゼクティブ・プロデューサーは Ed Townsend です。ここでも Richard Evans の抑えたアレンジが光っています。このリズムパターンの延長線上に名曲、"Paper Doll" が見えてきます。
Ain't Nothing Wrong(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Ronnie Dyson(1977)
1977年にリリースされた、Ronnie Dyson のアルバム『Love In All Flavors』は Chuck Jackson-Marvin Yancy が全面プロデュースしたアルバムとなりました。このアルバムはシカゴで録音されました。シングルカットされたこの曲は Gene Page と Richard Evans が共同で行っています。
I'll Take a Chance On Love(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Carol Douglas(1977)
1977年に Carol Douglas のアルバム『Full Bloom』に提供したナンバー。Chuck Jackson-Marvin Yancy 得意の"語り"から始まります。アレンジを担当したのは John Davis 。ニューヨークの Media Sound Studio での録音です。
Passionate Breezes(Chuck Jackson-Marvin Yancy) / Charles Jackson(1978)
Chuck Jackson が本名の Charles Jackson 名義でリリースしたソロ作品。1978年にリリースしたアルバム『Passionate Breezes』から表題曲。アレンジは Mark Davis。しっとりとした曲調です。1980年に The Dells がこの曲を取り上げました。
Where Do Broken Hearts Go(Chuck Jackson-Frank Wildhorn) / Whitney Houston (1987)
1987年、Whitney Houston に提供した1曲。4枚目のシングルとしてリリースされました。ミュージカルを中心に手掛ける作曲家、Frank Wildhorn との共作曲です。US Billboard Hot 100 の1位となります。プロデュースは Narada Michael Walden。
Search On(Chuck Jackson) / Aretha Franklin(1981)
最後に Aretha Franklin に提供した楽曲を。1981年のアルバム『Love All the Hurt Away』に収録されました。Chuck Jackson 単独クレジット作品です。Aretha Franklin 自身がリズムアレンジをしました。