フィラデルフィアを中心に活動してきた Steals Brothers
2021.12.15
Songwriterシリーズ、
今回はフィラデルフィアを中心に活動してきた Steals Brothers を取り上げます。
Steals Brothers はペンシルバニア州ピッツバーグ出身の双子の兄弟。名前は Melvin and Mervin Steals で、綴りは"l" と"r" が違うだけですが、読み方は"Melvin = メルヴィン"、"Mervin = マーヴィン" と発音するんだと思います。
彼の初期の頃のクレジットは、"Mystro And Lyric" と名乗ってクレジットされることが多く、1970年後期以降、M&M Steals を使うようになります。
基本的には Melvin Steals が詩を書き、Mervin Steals が曲を担当していたようです。
1968年、Gamble Records を立ち上げたばかりの Kenny Gamle の元で働くようになり、Kenny Gamle-Leon Huff がプロデュースした白人グループ、The Jaggerz に "Gotta Find My Way Back Home" という曲を提供します。
1972年、Motown Records からAtlantic Records へ移籍した The Spinners のプロデュースを担当した Thom Bell は移籍第一弾シングルに、Steals Brothers が書いた "Could It Be I'm Falling in Love" を採用し、US Billboard Hot 100の4位、ゴールドディスクに輝きます。
以降、人気ソングライターとして、フィラデルフィアのミュージシャン達に多くの楽曲を提供していくようになります。Steals Brothers が生み出す楽曲はバラードもいいですが、ミディアム調、乗りがいい楽曲が持ち味だと思います。
例によって一部ですが、Steals Brothers が書いた作品を聴いてみたいと思います。
Gotta Find My Way Back Home (Melvin-Mervin) / The Jaggerz (1968)
1968年、Gamble Records からリリース。Kenny Gamble-Leon Huff のプロデュースで、アレンジは Bobby Martin と Thom Bell が共同であたっています。
The Jaggerz は1970年に Kama Sutra Records に移籍し、シングル "The Rapper" をリリースしヒットします。
Could It Be I'm Falling In Love (Mystro & Lyric aka Steals Brothers) / The Spinners (1972)
1972年、The Spinners の Atlantic Records の移籍第一弾シングル。アルバム『Spinners』にも収録。Thom Bell の上品なアレンジも効いており、心地いいグルーヴ。以降、プロデュースを担当した Thom Bell はSpinners のプロジェクトでは自分以外の楽曲も積極的に採用し、楽曲の幅を広げました。
Magic Of Your Love (Melvin Steals-Mervin Steals) / Brenda & The Tabulations (1973)
1966年、フィラデルフィアで結成した女性1名、男性3人のボーカル・グループ、Brenda & The Tabulations に提供したバラード曲。アレンジとプロデュースは Van McCoy が担当。たぶんニューヨーク録音だと思います。
Each Morning I Wake Up (Mystro & Lyric aka Steals Brothers) Disco Version / Major Harris Boogie Blues Band (1974)
1974年、The Delfonics に在籍していた Major Harris への提供曲。プロデュースは Steals Brothers が担当。アレンジは ギターリスト出身の Norman Harris が担当しました。今回はディスコバージョンで。
I'm in Heaven (Melvin and Mervin Steals) / Touch Of Class (1976)
1976年、4人組の Touch Of Class のアルバム『I'm In Heaven 』に収録されていたナンバー。プロデュースとアレンジは、Sigma Sound Studios では珍しい白人の John Davis が当たっています。Steals Brothers は本アルバムに4曲提供しています。6分強の長い曲ですが、Steals Brothers 得意のリズムパターン、後半の Vincent Montana のビブラフォンが素晴らしいです。
One Beautiful Day (Mystro & Lyric aka Steals Brothers) / Ecstasy, Passion & Pain (1975)
I'll Do Anything For You (Mystro & Lyric aka Steals Brothers) / Ecstasy Passion & Pain (1976)
ニューヨークで結成されたボーカル・インストルメンタル・グループ、Ecstasy, Passion & Pain に提供したディスコ調の曲。ボーカルの女性、Barbara Roy はギターを弾きながら歌います。アレンジとプロデュースは、Bobby Martin が担当。両曲とも元気な明るいナンバーです。
Don't Take Your Sweet Lovin' Away ( (Mystro & Lyric aka Steals Brothers) / Ghetto Children (1975)
1975年に Ghetto Children というグループに提供したナンバー。プロデュースとアレンジは Bobby Martin。Bobby Martin は好んで、Steals Brothers の楽曲を採用していたのがわかります。これも2人らしい明るい曲です。
Same Old Heartaches (Melvin and Mervin Steals) / The Impressions (1976)
1976年に長寿グループ、The Impressions がリリースしたアルバム『It's About Time 』は、8曲中6曲が Steals Brothers のペンによるもの。アレンジは H. B. Barnum が担当しています。西海岸での制作です。
(富田英伸)