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ロカビリー時代の数少ない女性ライター Sharon Sheeley

2022.03.22
Poor Little Fool

Poor Little Fool

Sharon Sheeley

(1958)

#Songwriter

(2022年3月20日SSB『リクエスト特集』で Ricky Nelson " Poor Little Fool" がかかったので、作者の Sharon Sheeley を取り上げます。)

Songwriterシリーズ
今回は Sharon Sheeley を取り上げます。

ロックンロール、ロカビリー全盛の1950年代、その業界で活躍していたソングライターは殆ど男性でした。Sharon Sheeley は数少ない、このジャンルで成功した女性ソングライターです。

Sharon Sheeley は1940年4月4日、カルフォルニア、ニューポート・ビーチ生まれました。容姿端麗で、高校生の頃からモデルのバイトをやっていたそうです。ロックンロール、有名人好きのこの少女はハリウッドを目指します。そこで出会った当時の大スター、Elvis Presley に「君、ロックンロールの曲を書いてみたら?」と軽く声をかけられたのが、楽曲作りのきっかけになったそうです。

淡い短いデート。それを曲にしたのが "Poor Little Fool" 、そのデートのお相手はなんと、The Everly Brothers の Don Everly。18歳の彼女が初めて書いた曲でした。

Sharon Sheeley が住んでいたロサンゼルス郊外の近所には、人気シンガー、Ricky Nelson が住んでいました。彼女は自分の車を Ricky Nelson 自宅前で、わざとエンストさせ、故障に見せかけます。自宅から出てきた Ricky Nelson に猫なで声で助けを求め、まんまと Ricky Nelson の自宅に入り込むことに成功。作ったばかりの "Poor Little Fool" を Ricky に聴かせ、売り込みに成功します。Ricky Nelson が歌った "Poor Little Fool" は1958年4月にレコーディング、US Billboard Hot 100 の1位を獲得します。

Poor Little Fool (Sharon Sheeley) / Ricky Nelson (1958)


写真 : Sharon Sheeley と Ricky Nelson

Sharon Sheeley、今度は人気絶頂のロックンローラー、Eddie Cochran にアプローチをかけます。 Eddie Cochran のマネージャーでソングライター仲間である Jerry Capehart に楽曲を売り込み、1959年の大ヒット曲、Eddie Cochran にとっても代表曲となった "Summertime Blues" のシングルB面に Sharon Sheeley が作った "Love Again" が採用されます。Eddie Cochran と出会った Sharon Sheeley、2人は恋に落ちます。

Love Again (Sharon Sheeley) / Eddie Cochran (1959)

同年、Eddie Cochran と兄、Bob Cochran、そして Sharon Sheeley が共作。"Somethin' Else" が生まれます。アメリカでは振るいませんでしたが、UK Singles Chart の22位を記録。イギリスでも Eddie Cochran の人気が博します。

Somethin` Else (Eddie Cochran-Bob Cochran-Sharon Sheeley) / Eddie Cochran (1959)


写真 : Sharon Sheeley と Eddie Cochran

"Somethin' Else" のイギリスでのヒットをきっかけに1960年1月、Eddie Cochran はイギリスでツアーを行い、前年、既にイギリス入りしていた Gene Vincent と一緒にツアーを行いました。Sharon は4月4日の自分の20歳の誕生日を Eddie と一緒に過ごすためにイギリスを訪れます。

1960年4月16日、イギリスツアーを成功させた Eddie Cochran、Gene Vincent、そして Sharon Sheeley らはアメリカへの帰路のため、ヒースロー空港へ向かいます。深夜12時頃、空港に向かう彼らが乗った車は反対車線の街路灯に激突。 Eddie Cochran は車外に投げ出されてしまいます。その後、搬送先の病院で死亡が確認されます。Eddie Cochran、享年21才。Gene Vincent も重傷を負います。Sharon Sheeley は重体でしたが、奇跡的に命をとり留めました。

Sharon は、ロサンゼルスに戻り、恋人を失い絶望の中、音楽との縁を断とうと決心します。失意の1年が過ぎた頃、ある1人の女性が彼女の元を訪れます。女性シンガー、ソングライターの Jackie DeShannon です。Jackie は彼女の心の支えとなり、音楽業界への復帰に誘い、一緒に楽曲制作を行うようになります。そして音楽業界でも珍しい女性2人ソングライターチームが誕生しました。


写真 : Sharon Sheeley (左) と Jackie DeShannon (右)

Sharon Sheeley-Jackie DeShannon、女性ソングライターチームの楽曲をいくつか聴いてみたいと思います。

(He's) The Great Imposter (Sharon Sheeley-Jackie DeShannon) / The Fleetwoods (1962)

Sharon Sheeley-Jackie DeShannon チームが、男性1人女性2人組の The Fleetwoods に提供した楽曲。亡き Eddie Cochran が所属していた Liberty Records からのリリースです。アレンジは Hank Levine。


Heart In Hand (Sharon Sheeley-Jackie DeShannon) / Brenda Lee (1962)

リトル・ミス・ダイナマイトこと Brenda Lee に提供した楽曲。落ち着いたバラード曲です。Brenda Lee には"Dum Dum" という楽曲も提供しており、こちらは Billboard Hot 100 の4位をつけました。

Breakaway (Sharon Sheeley-Jackie DeShannon) / Irma Thomas (1964)

2人が Irma Thomas に提供した楽曲、とても快活なリズム。後に Jackie DeShannon もセルフカバーしています。1983年には Tracey Ullman がカバーしヒットとなりました。

Can't Help Forgiving You (Sharon Sheeley-Jackie DeShannon) / Mark Wynter (1964)

イギリスのシンガー、Mark Wynter が取り上げた楽曲。ディレクションは Tony Hatch が担当しています。同年、The Searchers もこの曲を取り上げています。
Sharon Sheeley は2002年に亡くなりました。




1988年、アメリカでリーバイスのCMで、Sharon Sheeley と Eddie Cochran の出会いが映像化されました。ドレスを捨てて501ジーンズと白いスウェト姿で、Eddie と出会う女性、"Sharon Sheeley " がかっこいいです!

Levi's 501 commercial (C´mon everybody) (1988)



(富田英伸)