2021年12月に亡くなったミュージカル女優、Sally Ann Howes を追悼して
2022.05.07
Magic Voicesシリーズ、
今回は主にブロードウェイミュージカルを中心に活躍した女優、Sally Ann Howes を取り上げます。
Sally Ann Howes はイギリス、ロンドンで生まれました。両親とも舞台俳優で、祖父も舞台演出家、芸能一家で育ちました。その家族の影響で1943年には映画『Thursday's Child』という作品で子役としてデビュー。1940年代は子役としていくつかの映画に出演しました。同時に歌のレッスンも受け、1953年に父親と一緒に舞台ミュージカル『Paint Your Wagon』に出演、ミュージカル女優を目指していくようになります。
1958年、ブロードウェイからオファーがかかり、それまでジュリー・アンドリュース (Julie Andrews) の当たり役だったブロードウェイ・ミュージカル『My Fair Lady』をジュリー・アンドリュースから引き継ぐ形で、主人公イライザを演じました。同年、ミュージカル『Damn Yankees』、ミュージカル『Damn Yankees』の制作、作曲を手掛けてきたブロードウェイミュージカルの大物プロデューサー Richard Adler に目染められ結婚。Richard Adler が手掛けるミュージカルに出演するようになります。
Sally Ann Howes は1966年に Richard Adler と離婚。その年にテレビミュージカル『Brigadoon』に出演。1968年にこれまで007シリーズを手掛けてきた Albert R. Broccoli が制作する映画『チキ・チキ・バン・バン』 (Chitty Chitty Bang Bang) の出演依頼がきます。Sally Ann Howes はスクランプシャス製菓会社の令嬢、トルーリー・スクランプシャス (Truly Scrumptious) を演じました。
1970年代以降、ミュージカル映画が不遇の時代となったため、Sally Ann Howes はテレビショーや舞台を中心に活躍しました。
Sally Ann Howes はブロードウェイミュージカルを軸足に活動してきたのですが、もう少しミュージカル映画にも出演してほしかったです。
Sally Ann Howes は2021年12月、91才で亡くなりました。
多くの人々に Sally Ann Howes の清楚な印象を深く残した映画『チキ・チキ・バン・バン』 (Chitty Chitty Bang Bang) から。音楽は Robert B. Sherman と Richard M. Sherman のシャーマン兄弟が手掛けました。原作は007シリーズで有名なイアン・フレミング (Ian Fleming) 。脚本にはイアン・フレミングの友人で『チャーリーとチョコレート工場』などを書いた童話作家、ロアルド・ダール (Roald Dahl) が参加しています。
Truly Scrumptious (Robert B. Sherman-Richard M. Sherman) From "Chitty Chitty Bang Bang" / Heather Ripley, Adrian Hall, and Sally Ann Howes (1968)
チキ・チキ・バン・バン号を製作したポッツさんの2人の子どもとの浜辺のシーン。 (Truly Scrumptious = 本当に美味しい) 名前がそのまま曲名となって、美味しそうなスィーツ名が次々と登場。子ども2人の声も可愛らしいです。子どもの歌声の後、Sally Ann Howes の伸びやかで透き通った歌声が登場します。
Lovely Lonely Man (Robert B. Sherman-Richard M. Sherman) From "Chitty Chitty Bang Bang" / Sally Ann Howes (1968)
映画『チキ・チキ・バン・バン』の中で唯一の Sally Ann Howes の独唱シーン。美しい英国庭園でトルーリーさんが歌います。曲を書いたシャーマン兄弟はディズニー・プロダクションの作家で知られていますが、これが初のディズニー以外の作品となります。
Doll On a Music Box/Truly Scrumptious (Robert B. Sherman-Richard M. Sherman) From "Chitty Chitty Bang Bang" / Sally Ann Howes and Dick Van Dyke (1968)
ポッツさんとトルーリーの楽しい人形シーン。ポッツさん演じるディック・ヴァン・ダイク (Dick Van Dyke) の芸達者振りも素晴らしいですが、トルーリーのオルゴール人形も見事。今度はディック・ヴァン・ダイクが "Truly Scrumptious" が歌います。
トルーリー役には『メリー・ポピンズ』 (Mary Poppins、1964) でディック・ヴァン・ダイクと共演したジュリー・アンドリュース (Julie Andrews) に先ずオファーがいったようです。
以降、Sally Ann Howes が映画『チキ・チキ・バン・バン』以外の作品に主演したシーンを観ていきたいと思います。
Tonight (Leonard Bernstein-Stephen Sondheim) / Howard Keel and Sally Ann Howes (TV-1960)
1960年のテレビショーから。1957年に初演となったミュージカル『West Side Story』から "Tonight" をハワード・キール (Howard Keel) と歌っています。この作品が映画化されるのは翌年の1961年です。
The Heather On The Hill (Alan Jay Lerner-Frederick Loewe) From "Brigadoon" / Robert Goulet and Sally Ann Howes (1966)
1966年のテレビミュージカル『Brigadoon』から。Robert Goulet とのデュエットです。この作品には『刑事コロンボ』 (Columbo) が一躍有名になるピーター・フォーク (Peter Falk) も出演しています。この作品が評価され、映画『チキ・チキ・バン・バン』へのオファーに繋がったとされています。映画版と異なり現代的な作りになっています。
最後に映画『チキ・チキ・バン・バン』のエンディングシーンを。観た方はご存知の通り、ラストは「夢オチ」でエンディング。チキ・チキ・バン・バン号はスーパーカーではなくごく普通の車でした。
幼少時代、これまで東宝や大映の怪獣映画ばっかり観てきたんですが、この映画は僕が映画館で観た最初の洋画でした。生まれて初めて観たキスシーン!子どもながらにこのシーン、よく覚えています。この時、僕は子どもでも胸トキメいていたんだと思います〜 (笑顔)
素敵なトルーリー・スクランプシャスを演じた Sally Ann Howes さんのご冥福をお祈りします。
Chitty Chitty Bang Bang Ending (Robert B. Sherman-Richard M. Sherman) From "Chitty Chitty Bang Bang" / Sally Ann Howes and Dick Van Dyke (1968)
若い頃の Sally Ann Howes 。
(富田英伸)