Muskrat Love を書いた Willis Alan Ramsey の曲たち
2022.05.09
(2020年1月19日SSB「『ねずみ』で棚からひとつかみ」で、Captain & Tennille "Muskrat Love" がかかったので)
Songwriterシリーズ、
今回は Willis Alan Ramsey を取り上げます。
Willis Alan Ramsey は1951年、アラバマ州バーミンガムで生まれ、ダラスで10代を過ごしました。音楽的には Woody Guthrie 等カントリーミュージックの影響を受け、自らギターを持ち、テキサス周辺で歌うようになりました。彼を注目した人に Leon Russell がいます。Leon Russell と Denny Cordell が興したレーベル、Shelter Records からアルバム『Willis Alan Ramsey』を1972年にリリースします。このアルバムから後述する "Muskrat Candlelight"、それ以外に Jerry Jeff Walker、Jimmy Buffett、Waylon Jennings、The Bellamy Brothers といったミュージシャンがこのアルバムから楽曲を次々と取り上げていきます。
1979年、アルバム『Willis Alan Ramsey』が日本でリイシューされた時には「リオン・ラッセルと彼をとりまくサムライたち」というシリーズとしてリリースされました。しかし Willis Alan Ramsey がリリースしたアルバムはこのアルバムが唯一となり、その後の活動はライブハウス等が中心となりました。
今回は Willis Alan Ramsey が作った楽曲、"Muskrat Candlelight" を中心に聴いていきたいと思います。
Muskrat Candlelight (Willis Alan Ramsey) / Willis Alan Ramsey (1972)
Willis Alan Ramsey の1972年のアルバム『Willis Alan Ramsey』から。"Muskrat Love" のオリジナルとなります。ギターとベースが Willis Alan Ramsey、エレクトリックピアノとヴィブラフォンは Leon Russell。2人だけの演奏です。詩の内容は Muskrat = ジャコウネズミのサムとスージー、ダンスの後、サムはスージーに結婚を申し込む、といったとっても可愛い詩です。
アルバム『Willis Alan Ramsey』には Leon Russell の人脈で、Nick DeCaro、Eddie Hinton、Jim Keltner、Russ Kunkel、Leland Sklar といったミュージシャンが参加しています。
Sun Down (Willis Alan Ramsey-Additional Lyrics : Herb Alpert-Lani Hall) / Lani Hall (1972)
Willis Alan Ramsey の "Muskrat Candlelight" にいち早く注目したのが、A&M Records の Herb Alpert でした。Sergio Mendes & Brasil '66 から離れた女性ボーカリスト、Lani Hall のデビューアルバム『Sun Down Lady』をプロデュースするにあたり、この楽曲を採用しました。一緒に歌っているのはその Herb Alpert です。ギターは Larry Carlton が弾いています。
Herb Alpert と Lani Hall は Muskrat = ジャコウネズミの要素を大人の男女に変更して、日没の恋人達がダンスするといった風に詩を作り変えます。実際に熱烈な恋愛中だった Herb Alpert と Lani Hall。翌年、この詩の通り、2人は結婚します。
Muskrat Love (Willis Alan Ramsey) / America (1973)
3人組のグループ、America が1973年のアルバム『Hat Trick』でこの曲をA面1曲目に取り上げました。タイトルはわかりやすく "Muskrat Love" となりました。同年シングルカットされ、US Billboard Hot 100 の67位となります。America は殆ど楽曲は自作ですが、Willis Alan Ramsey のこの曲にとても魅力を感じたんだと思います。
Muskrat Love (Willis Alan Ramsey) / Captain & Tennille (1976)
1976年に Captain & Tennille がリリースしたアルバム『Song of Joy』に収録。即興に近いエレクトリック・ピアノにジャコウネズミの声を意識したユーモア感あるシンセサイザー。シングルカットされ、US Billboard Hot 100 の4位のヒットとなりました。Herb Alpert の A&M Records からヒットが出たのには縁を感じます。
アルバム『Willis Alan Ramsey』の楽曲をカバーしたミュージシャンを3組程聴いてみたいと思います。
Ballad Of Spider John (Willis Alan Ramsey) / Jimmy Buffett (1974)
Ballad Of Spider John (Willis Alan Ramsey) / Willis Alan Ramsey (Live)
1973年に Jimmy Buffett がアルバム『Living And Dying In 3/4 Time 』で取り上げました。バックボーカルには Buzz Cason が参加しています。Willis Alan Ramsey 自身がライブで演奏したものも合わせて。精悍なマスクをしていますが、声は野太く力強いです。
Satin Sheets (Willis Alan Ramsey) / Waylon Jennings (1977)
Satin Sheets (Willis Alan Ramsey) / Bellamy Brothers (1976)
1977年に Waylon Jennings がアルバム『Ol' Waylon』で取り上げた楽曲。Chips Moman プロデュースでナッシュビルの American Studios で制作されました。バックボーカルの女性は Waylon Jennings の奥さんでもある Jessi Colter とソングライターとしても有名な Toni Wine です。
1976年には兄弟デュオ、Bellamy Brothers もこの楽曲を取り上げました。こちらは Tony Scotti がプロデュースに就いています。
(富田英伸)