Thom Bell その1:生い立ちと1960年代の初期の作品
2022.05.17
(2017年7月9日SSB「納涼リクエスト大会」で、Connie Stevens"Keep Growing Strong" がかかりましたので。)
Songwriterシリーズ、
今回はフィラデルフィアを中心に活動してきた Thom Bell を2回に分けて取り上げてみたいと思います。
Thom Bell についてはSSBで2005年11月13日から2005年11月27日まで3週間かけてソングライター特集で取り上げられました。
第1回目は1960年代の初期の作品を中心に取り上げ、2回目では1970年代以降、特に Linda Creed とのコラボレーション作品を取り上げていきたいと思います。
第1回目 : Thom Bell の生い立ちと1960年代の初期の作品
第2回目 : 1970年代以降、特に Linda Creed とのコラボレーション作品
第1回目 : Thom Bell の生い立ちと1960年代の初期の作品
Thom Bell は1943年 (1941年の説あり) ジャマイカ生まれ。その後、家族はアメリカ、フィラデルフィアに移住。幼い頃からピアノやドラムスに親しんでいたそうです。
Thom Bell が16才頃のこと。Thom Bell の妹が Kenny Gamble のガールフレンドだったようで、Kenny Gamble が Thom Bell の自宅に訪問した時に2人は出会ったようです。Kenny Gamble は実は自分は曲作りをしていると Thom Bell に打ち明け、それから2人は意気投合し、Thom Bell の自宅で一緒に曲作りをするようになったとのこと。
1959年に、Kenny Gamble はボーカル・インストルメンタルグループ、The Romeos というグループを結成し、Thom Bell を誘います。その時のメンバーは以下の通り。
Kenny Gamble、Roland Chambers (guitar) 、Karl Chambers (drums) 、Winnie Walford (bass) 、Thom Bell。
*Kenny Gamble and The Romeos (中央でピアノを弾いているのが、Thom Bell、その上が Kenny Gamble)
Kenny Gamble は プロデューサーの Jerry Ross の事務所に出入りするようになり、ソングライターとシンガーの両方で契約を結びます。
1963年、Jerry Ross は Kenny Gamble と Thom Bell とデュオ・グループ、Kenny & Tommy を組ませ、Heritage Records からシングルデビューさせます。
その後、Thom Bell は Kenny Gamble や Romeos の友人らとともにCameo-Parkway Records などのスタジオでアレンジャー、そしてソングライターとして活動していくことになります。
1967年、Cameo Records のプロデュサーであった Stan Watson は自身のレーベル、Philly Groove Records を立ち上げる際、Thom Bell を誘って、Stan & Bell Productions を設立。そこから1968年、The Delfonics "La La Means I Love You" がヒットし、Billboard R&B チャート 2位を記録します。
*Philly Groove Records のプロデューサー、Stan Watson (右) と Thom Bell
今回の第1回目は Thom Bell が主に1960年代に手掛けた楽曲を一部ですが、聴いてみたいと思います。
Some Day (You'll Be My Love) (Kenny-Gamble-Thom Bell-Murray Wecht) / Kenny and Tommy (1963)
1963年、Jerry Ross の Heritage Reords からリリースされた、Kenny Gamble と Thom Bell によるデュオ。Doo Wopスタイルの落ち着いたバラード。Heritage Reords の創設パートナーである Murray Wecht が一緒にクレジットされています。
I Can't Take It (Kenny Gamble-Thom Bell) / The Orlons (1963)
1963年、Cameo Records の男性1人、女性3人のグループ、The Orlons に提供した曲。2人がソングライターとして活動し始めた頃の楽曲です。アレンジは Thom Bell が担当。
Thom Bell は同時期、Parkway Records で Chubby Checker に楽曲提供、アレンジも担当しています。
What Would I Do (Thom Bell) / The Tymes (1966)
1966年、"So Much in Love" で知られる TheTymes に提供したナンバー。Thom Bell の単独クレジットとなっています。アレンジは Jimmy Wisner が担当しています。
プロデュースには、白人ソングライターの2人 Bobby Bloom、John Linde、そして Billy Jackson がクレジットされています。
You've Been Untrue (Thom Bell-William Hart) / The Delfonics (1967)
1967年、Cameo Records からリリースした The Delfonics のデビューシングル。The Delfonics のメンバーの William Hart との共作です。プロデュースは Thom Bell が担当。たぶん、プロデューサーの Stan Waton はこれを聴いて 自身のレーベル、Philly Groove Records に The Delfonics を移籍させ、Stan & Bell Productions を設立したと思われます。
後に席巻したフィラデルフィア周辺の "スィートソウル"と言われているサウンド (ファルセット・ボイス、フリューゲルホルン、ストリングス...) はここら辺が原点になっている気がします。
I've Had It (B. Jackson-L. Andrews-T. Bell) / Lee Andrews & The Hearts (1968)
1960年代後半、一連のThe Delfonics プロジェクト以外にもスタジオワークを行っています。1950年中期から活動しているグループ、Lee Andrews & The Hearts への提供曲。Billy Jackson らとの共作で、プロデュースはその Billy Jackson。アレンジは Thom Bell。
Let's Make A Promise (Kenny-Gamble-Thom Bell-Mikki Farrow) / Peaches And Herb (1968)
1968年、男女デュオの Peaches & Herb に提供した楽曲。Kenny-Gamble らとの共作で、Gamble-Huff の初期のプロデュース作品です。アレンジは Thom Bell と Bobby Martrin が共同であたっています。
この頃、Kenny Gamble、Leon Huff、そして Thom Bell は音楽出版管理会社、
Mighty Three を設立しています。
Look The Other Way (Thom Bell-Mikki Farrow) / Lesley Gore (1968)
1968年に白人女性シンガー、Lesley Gore に提供した楽曲。これもGamble-Huff の初期のプロデュース作品です。アレンジは Thom Bell が担当。
I Wanna Be A Free Girl (Thom Bell-Linda Creed-Kenny Gamble-Leon Huff) / Dusty Springfield (1970-TV)
最後にイギリスの歌姫、Dusty Springfield に提供した楽曲をライブ映像で。これも Gamble-Huff の初期のプロデュース作品ですが、後に Thom Bell とチームを組んで数々の楽曲を生むことになる Linda Creed が初めてクレジットされている作品です。
* Mighty Three の3人、Leon Huff、Thom Bell、Kenny Gamble
(富田英伸)