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ミシェル・ルグランの歌声

2022.07.10
Quand On S'aime

Quand On S'aime

Michel Legrand

(1965)

#Magic Voice

( (2022年現在) Michel Legrand が2019年に亡くなって早3年 (2022年現在) 、Christaine Legrand に続いて、Michel Legrand の歌声も聴いていきたいと思います)

Magic Voicesシリーズ
今回は Michel Legrand を取り上げます。

今回は、作曲家、ジャズ演奏者としての Michel Legrand ではなく、シンガー (シャンソン) 、Michel Legrand の側面から探っていきます。映画音楽家としての Michel Legrand はあらためて、Cinema Music Composers シリーズで取り上げていきたいと思います。個人的も1960年中期から1970年代初期に Michel Legrand が歌っていた時代が一番好きです。


Michel Legrand が世界的に注目されたのが、Miles Davis と共演した1958年のアルバム『Michel Legrand Featuring Miles Davis – Legrand Jazz』だと思います。Michel Legrand、この頃はこの作品の影響もあって、Michel Legrand がリリースするアルバムはインストのオーケストレーションジャズのアルバムが中心でした。

1950中期以降、Michel Legrand はジャズ・アレンジャー、オーケストレーションだけでなく映画の音楽を担当するようになります。その中で大きな出会いとなったのが、ジャック・ドゥミ (Jacques Demy) 監督。ジャック・ドゥミの実質的デビュー作品となった1961年の映画『ローラ』 (LOLA) 、そして、1963年の『シェルブールの雨傘』 (LES PARAPLUIES DE CHERBOURG) 、1966年の『ロシュフォールの恋人たち』 (LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT) で数多くの歌入り楽曲を作りました。

歌うことは元々、姉の Christaine Legrand の影響もあったと思いますが、ジャック・ドゥミとのコラボは"歌う"楽曲を作ることが自身が"歌う"ことにも繋がっていきます。この1960年代中期から1970年まで、Michel Legrand は自身が歌う楽曲=いわゆるシャンソンも多く作り、自身で歌いました。1964年にはボーカルアルバム『Sérénades Du XXe Siècle』、『Chante Et S'accompagne』をリリースしました。

今回は、Michel Legrand が歌った映像、他のミュージシャンとの共演などを観ていきたいと思います。


Quand On S'aime (Eddy Marnay-Michel Legrand) / Nana Mouskouri Duet with Michel Legrand (1965)

メガネ男子とメガネ女子のデュエット (笑顔) 。ギリシャ出身で世界的に活動した女性シンガー、Nana Mouskouri との共演です。鳥が空を駆け巡るように自由奔放、楽しそうに歌っています。途中、楽譜も吹っ飛ばします!。Michel Legrand という人はほんとに音楽の神様に愛された人だったと痛感。


Quand Ça Balance (Eddy Marnay-Michel Legrand) / Michel Legrand (1964)

1964年のボーカルアルバム『Chante Et S'accompagne』から1曲。この頃はジャック・ドゥミとのコラボで数多くの歌曲を書いていた時期と重なり、"弾けたルグラン" を聴くことができます。ジャズを基本にして歌唱、アレンジ、スキャット、コーラス、全ての音が宙を駆け巡ります。


Trombone, Guitare Et Compagnie (Eddy Marnay-Michel Legrand) / Michel Legrand (1964)

Michel Legrand といろいろな"楽器"との共演。画面は左右に動き回り、楽器の愉しさが伝わっていきます。そして、スマートなジャズとめくるめくスキャット。"楽器"の猛獣使い=アレンジャーとしての Michel Legrand も見えてきます。1964年のボーカルアルバム『Sérénades Du XXe Siècle』収録曲。


La valse des lilas (Once Upon a Summertime) (Eddie Barclay-Eddy Marnay-Michel Legrand) / Michel Legrand (1965)

"Once Upon a Summertime" の英語題名で知られる楽曲。Michel Legrand 自身も1964年にシングル、リリースしています。元々は1950年代中期に作られた楽曲で、当時はCatherine Sauvage などが歌っていました。Michel Legrand が初期に作った名曲、その後数多くのシンガーに愛されました。今回は Michel Legrand の弾き語りで。


Toi et moi (Michel Legrand) / Petula Clark Duet with Michel Legrand (1972)

1972年、イギリスの Petula Clark との共演です。Petula Clark は夫がフランス人ということもあってフランス語にも長けた人でした。この曲は、1970年の映画『殺意の週末』 (THE LADY IN THE CAR WITH GLASSES AND A GUN) のために書かれた曲で、大幅にアレンジが施され、素敵なデュエット曲に生まれ変わっています。


Sweet Gingerbread Man (Alan Bergman and Marilyn Bergman-Michel Legrand) / Michel Legrand (1972)

ジャズシンガー、Sarah Vaughan の共演。Sarah Vaughan は1971年にこの曲で、Mainstream Records からシングルリリースしている関係で、この曲で共演したのだろうと思います。元々は1970年の映画『The Magic Garden of Stanley Sweetheart』の挿入歌で、その時は The Mike Curb Congregation が歌いました。Michel Legrand にしては朗らかな1曲。


I Will Wait For You (Michel Legrand-Jacques Demy-Norman Gimbel) / Michel Legrand (1973)

1973年に入って、Nana Mouskouri と再度、共演です。この時は『シェルブールの雨傘』 (LES PARAPLUIES DE CHERBOURG) のために作られた、"Je ne pourrai jamais vivre sans toi" を英語詩で歌っています。


Marion ne m'aimait pas (Eddy Marnay-Michel Legrand) / Michel Legrand (1964)

最後に再度、1964年のボーカルアルバム『Chante Et S'accompagne』から。切ない失恋バラード曲。オーケストレーションに負けず素晴らしい歌唱力。
現在、Michel Legrand のボーカルアルバムはCDでは殆ど流通されていませんが、Michel Legrand の功績の1つとして、この歌声が多くの人に届くといいなあと思います。



* Miles Davisと共演した1958年のアルバム『Michel Legrand Featuring Miles Davis – Legrand Jazz』の頃、Michel Legrand 26歳。


(富田英伸)