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ボサノバの源流を探る その2:Milton Nascimento

2022.07.28
Travessia

Travessia

Milton Nascimento

(1967)

#Songwriter

(2022年7月24日SSB「納涼リクエスト大会」のコメントにあった、Milton Nascimento と Earth Wind & Fire の関係を少しだけ深堀していきたいと思います。)

【シリーズ : ボサノバの源流を探る (その2) 】

Songwriterシリーズ
今回は Milton Nascimento を取り上げます。

Earth Wind & Fire の1977年の大ヒットアルバム『All 'N All』に主要な楽曲の間に "Brazilian Rhyme (Interlude) " という短い曲が収録されました。

Brazilian Rhyme (Interlude) (Milton Nascimento) / Earth, Wind & Fire (1977)

短い曲ながらも心地よいコーラス、グルーヴある演奏、The Mastering Lab による抜けのいい分離された音。自然と体が横に揺れていきます。多くの人がそのノリの良さに気づいたと思います。クレジットにはブラジルの音楽家 Milton Nascimento の名前が見つかります。このアルバムにA面、B面の両方に登場するのですが、曲のコーダ部分だけなので、このアルバムのために作ったオリジナル楽曲なのか、それともカバー曲なのか僕にとってずっと謎でした。

その後15年経って、1992年にEarth Wind & Fire の3CDボックスアルバム『The Eternal Dance』がリリース、"Ponta De Areia" という曲が冒頭に追加されます。そして、2017年には Brazilian Rhyme (Extended Mix Version) が市場に出回り、この曲の全貌が明らかとなってきます。

Brazilian Rhyme (Extended Mix Version) (Fernando Rocha Brant-Milton Nascimento) / Earth, Wind & Fire (1977-2017)

出自は2曲共、Milton Nascimento の1975年のアルバム『Minas』に収録された曲です。"Brazilian Rhyme" の元になった "Beijo Partido" は Milton Nascimento が作った楽曲ではなく、Milton Nascimento と音楽活動を共にしてきた、ブラジルのボーカリスト、ギターリストの Toninho Horta が作った曲のようです。聴いてみましょう。

Ponta de Areia (Fernando Brant-Milton Nascimento) / Milton Nascimento (1975)

Beijo Partido (Toninho Horta) / Milton Nascimento (1975)




Milton Nascimento について簡単に

Milton Nascimento は1942年ブラジル、リオ・デ・ジャネイロ生まれ。1967年に
アルバム『Milton Nascimento』でレコードデビューしていますが、それ以前に楽曲提供を行っていた模様です。Milton Nascimento の名前が知られるようになったのは、自身のデビューアルバム『Milton Nascimento』に収録されていた楽曲、"Travessia " だと思います。当時ブラジルで人気だった Elis Regina がこの取り上げ歌い、これが元になって、ブラジル以外のシンガーやジャズミュージシャンがカバーしていきました。
1969年にはアメリカA&Mレコードからアルバム『COURAGE』をリリース。これがきっかけにアメリカのジャズミュージシャンとも交流が始まり、人気を博します。

Milton Nascimento の音楽は僕ら日本人には難解な部分がありちょっととっつきにくいのですが、今回は前述した初期の曲、多くのミュージシャン達に愛された "Travessia " を聴き比べていきたいと思います。

Travessia (Milton Nascimento) / Elis Regina (1967)

Milton Nascimento が1967年にリリースしたデビューアルバム『Milton Nascimento』に収録されていた楽曲のカバーにあたります。この曲以外にも、Gilberto Gil、Tom Jobim などブラジリアンミュージックは当時人気高かった Elis Regina によって歌われ、その後世界に広まりました。その功績は大きいと思います。


Bridges (Travessia) (Fernando Brant-Gene Lees-Milton Nascimento) / Sarah Vaughan (1978)

1978年の Sarah Vaughan のアルバム『O Som Brasileiro De Sarah Vaughan』に収録されたバージョン。Milton Nascimento とのデュエット。ギターも弾いています。ここでは "Bridges" という英語詩が与えられています。


Bridges (Travessia) (Fernando Brant-Gene Lees-Milton Nascimento) / Sergio Mendes & Brasil 88 (1978)

Sergio Mendes & Brasil '88 という名義ですが、1978年にリリースしたアルバム『Sergio Mendes & Brasil '88』に収録されたカバーです。これも好きなバージョンの1つで、女性ボーカルは Bonnie Amaro となっていますが、Bonnie Bowden のことです。素晴らしいボーカル!


Travessia (Milton Nascimento) / Milton Nascimento (1967)

最後にデビューアルバム『Milton Nascimento』に収録されていたオリジナルを。このアルバムは当時ブラジル内のみのリリースで世界的に殆ど流通していなかったため、多くの人がこのオリジナルに触れたのは2003年に再発されてからとのこと。Milton Nascimento の優しい歌唱です。




* Brazilian Rhyme (Extended Mix Version) / Earth Wind & Fire (2017)


(富田英伸)