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イギリスのソングライター Ken Gold

2022.08.15
Putting It Down

Putting It Down

Ken Gold

(1975)

#Songwriter

(2022年8月14日SSB「納涼リクエスト大会」で、Delegation "The Promise Of Love" がかかったので)

Songwriterシリーズ
イギリスのソングライター、Ken Gold を取り上げたいと思います。今回は初期に手掛けた曲を中心に。

Ken Gold は Michael Denne とのチームで "Rainin' Through My Sunshine" で知られる The Real ThingDelegation、Billy Ocean などUKソウルのソングライターとして活動した人です。

1970年当初から、本名の "Christian Gold" 名義で曲書きを始め、1970年中期になると Michael Denne とのチームで曲を作るようになります。彼らが作る楽曲の洗練さや先進性がアメリカでも評価され、アメリカ国内のミュージシャンやプロデューサーが彼らの楽曲を積極的に取り上げるようになります。1978年には彼らはソロ・アルバム『Denne & Gold』をリリースします。


今回は、Ken Gold がUKソウルの主力として手掛けてきた The Real Thing、Delegation 辺りは次回の機会に回し、初期に書いた曲や、後にアメリカのミュージシャン達も取り上げた楽曲を"聞き比べ"中心に聴いていきたいと思います。


その後 Ken Gold は楽曲作成を始めます。その頃の曲を2曲程。本名の "Christian Gold" 名義でクレジットされています。1973年にボーカルグループ The Crikets に提供したナンバーで、その The Crikets がレコーディングした際、この曲のバックコーラスを担当したのが Summer Wine でした。Summer Wine は The BeachBoys フォロワーで知られる Tony Rivers が在籍したイギリスのグループ。Summer Wine 自身もこの曲を録音しています。同年1973年に Tommy Leonetti という人も録音しています。

Wasn't It Nice In New York City (Christian Gold) / The Crickets (1973)

Wasn't It Nice In New York City (Christian Gold) / Summer Wine


その Tony Rivers の別ユニット、Hollywood Freeway に提供した曲で Tony Rivers との共作となっています。後にアメリカで Jackie Wilson、Frankie Valli、Telma Jones が取り上げることになります。

You're The Song (That I Can't Stop Singing) (Christian Gold-Tony Rivers) /Hollywood Freeway (1973-UK)


ここから聴き比べを。
まずは"It Only Happens When I Look At You" という曲を聴き比べていきます。

It Only Happens When I Look At You (Ken Gold- Michael Denne) / Aretha Franklin (1975-US)

1975年に Atlantic Records のJerry Wexler と Aretha Franklin がプロデュースした Aretha Franklin のアルバム『You』に Ken Gold の楽曲が取り上げられました。アレンジは Gene Page。


It Only Happens When I Look At You (Ken Gold- Michael Denne) / Jackie Wilson (1976-US)

そして1976年には Brunswick Records の Jackie Wilson がこの曲を取り上げました。David Van DePitte によるアレンジでスピード感が増し、このバージョンはとても人気を博しました。プロデュースはシカゴの Carl Davis と Sonny Sanders。 Jerry Wexler も Carl Davis も音楽のアンテナが高いです。


It Only Happens When I Look At You (Ken Gold- Michael Denne) / Love Machine (1975-EU)

実はこの曲を1975年に Love Machine なるガールグループがヨーロッパのみでリリースしています。聴いてわかる通り、アレンジは1975年の Aretha Franklin 版よりも1976年の Jackie Wilson 版に非常に似ています。もしかするとこの Love Machine がオリジナルなのかも知れません。


続いて、"Putting It Down" という曲を聴き比べていきます。

Putting It Down (Ken Gold) / Eugene Record (1977-US)

The Chi-Lites 出身の Eugene Record。1977年にリリースしたファースト・アルバム『Eugene Record』に Ken Gold の楽曲が収められていました。Ken Gold は Jackie Wilson をプロデュースしたCarl Davis に続き、シカゴ勢に人気が高いです。


まぶしい貴方 (Ken Gold-大橋一枝-有馬三恵子) / HI FI SET (1977-JPN)

アメリカのみならず日本国内でもこの曲が取り上げられました。取り上げたのは村井邦彦さん率いる Alfa Records でした。日本語詩をつけて、HI FI SETによる歌唱です。


Putting It Down (Ken Gold) / Jimmy Helms (1977-UK)

同年1977年、イギリス本国で Ken Gold 自身のプロデュースし、盟友 Lynton Naiff がアレンジしたのが Jimmy Helms 版。いわゆる本命盤です。


Putting It Down (Ken Gold) / Realistics (1975-UK)

いろいろ元を手繰っていくとこの曲は1975年にリリースした Realistics というグループがこの曲のオリジナルのようです。


いろいろイギリス本国とアメリカでリリースされたものを聴き比べてきました。その他、Frankie Valli が The Real Thing の"You To Me Are Everything" を、カナダのソウルシンガー、The Mighty Pope が同じく The Real Thing の "Can't Get By Without You" を取り上げています。

1960年代、多くのイギリスのビート・グループがアメリカの R&B 、ソウル・ミュージックを取り上げてきました。その音楽を聴いて育った Ken Gold の楽曲をアメリカが受け入れたのは1つの"逆輸入"ととらえることもできると思います。それは1970年代に入ってUKソウルがしっかり熟成してきた成果とも言えるでしょう。


Ken Gold はソングライター活動以前に1960年代後期に Playground というグループに参加しています。1970年に Ken Gold がグループのために書いた "The Rain, The Wind And Other Things" をシングルリリースしています。ボーカルも Ken Gold のようです。

The Rain, The Wind And Other Things (Gold) / Playground (1970)


最後にソロ・アルバム『Denne & Gold』から1曲聴いてみたいと思います。A面1曲目に収録されている楽曲を。

Let's Put Our Love Back Together (Ken Gold) / Denne And Gold (1977)


(富田英伸)