ボサノバの源流を探る その3:Luiz Bonfá
2022.08.25
Cinema Music Composers シリーズ、
今回は Luiz Bonfá を取り上げます。
Luiz Bonfá は1959年のフランス・ブラジル・イタリアの映画『黒いオルフェ』 (Black Orpheus) の音楽が有名ですが、1940年代後期から活動してきたブラジリアンミュージックの草分け的存在でギターの名手です。今回はこの映画以外の映画や楽曲にも注目していきたいと思います。
Luiz Bonfá は1922年、リオデジャネイロ生まれ。1940年代後期に Quitandinha Serenaders というボーカルグループに参加しています。1955年にはアルバム『Luiz Bonfá』をリリース。このセッションで、Antônio Carlos Jobim、João Donato といった若いブラジリアンミュージシャン達と出会うことになります。Luiz Bonfá と Antonio Carlos Jobim は 1956年、詩人、作家の Vinicius de Moraes が書いた戯曲『Orfeu da Conceição』のために楽曲を書き、その年、その曲が Odeon Records からリリースされます。戯曲『Orfeu da Conceição』は1959年の映画『黒いオルフェ』 (Black Orpheus) となります。
映画『黒いオルフェ』は評価も高くアカデミー外国語映画賞を受賞、各国で上映されることになり、世界にボサノバを広く流行させる役割を果たしました。
映画『黒いオルフェ』の音楽を手掛けたことにより、Luiz Bonfá はアメリカを中心に世界からオファーがかかり、音楽活動を続けていきます。映画の方では、1965年のアメリカ映画『The Gentle Rain』をブラジルの編曲家、Eumir Deodato と共同で手掛けました。映画の方はヒットにしませんでしたが、このアルバムの楽曲を同年、Astrud Gilberto がアルバム『The Shadow Of Your Smile』で取り上げ、世の中に知られるようになります。また1968年の Elvis Presley の映画『バギー万才!! 』 (LIVE A LITTLE, LOVE A LITTLE) に楽曲を提供し、Elvis Presley が珍しく、ボサノバを歌っています。
Luiz Bonfá は2001年に78歳で亡くなりました。
まずは1959年の映画『黒いオルフェ』 (Black Orpheus) から2曲を。
Manhã de Carnaval (Luiz Bonfá- Antônio Maria) From "Black Orpheus" (1959)
Manhã de Carnaval (Luiz Bonfá- Antônio Maria) / Johnny Mathis & Agostinho dos Santos (1964-TV)
Manhã de Carnaval (Luiz Bonfá- Antônio Maria) / Caterina Valente with Luiz Bonfà (at "Hollywood Palace" in 1964)
1959年の映画『黒いオルフェ』 (Black Orpheus) から。オルフェの歌声は、Agostinho dos Santos というシンガーが声アテをしました。その Agostinho dos Santos が Johnny Mathis のショーに出演し、"Manhã de Carnaval" を歌った映像が残っています (画質悪し) 。2人とも美声!
1964年、イタリアで活動していた女性シンガー Caterina Valenteと Luiz Bonfá とのデュエットを合わせて。
Samba de Orfeu (Luiz Bonfá-Antônio Maria) From "Black Orpheus" (1959)
Samba de Orfeu (Luiz Bonfá-Antônio Maria) / Maria Toledo (1957)
映画『黒いオルフェ』から生まれた別の有名曲。後に多くのシンガーが英詩 "Sweet Happy Life" の題名で、広く歌われました。
Luiz Bonfá の奥様となった Maria Toledo が歌ったバージョンも合わせて。ギターで Luiz Bonfá が参加、Eumir Deodato のアレンジ、コンダクトです。
Non Stop To Brazil (Luiz Bonfá) From "The Gentle Rain" / Luiz Bonfá and Eumir Deodato (1965)
Non-Stop To Brazil (Luiz Bonfá-Matt Dubey-Norman Gimbel) / Astrud Gilberto (1965)
1965年のアメリカ映画『The Gentle Rain』のサウンドトラックから。音楽は Eumir Deodato と Luiz Bonfá が共同で行っています。
映画はヒットにしませんでしたが、このアルバムの楽曲を同年、Astrud Gilberto がアルバム『The Shadow Of Your Smile』で取り上げます。Don Sebesky のアレンジで、プロデュースは Creed Taylor です。
O Ganso (Luiz Bonfá) From "The Gentle Rain" / Luiz Bonfá and Eumir Deodato (1965)
O Ganso (Luiz Bonfá) / Astrud Gilberto (1965)
続いて、映画『The Gentle Rain』からサウンドトラックから。この曲もまた Astrud Gilberto のアルバム『The Shadow Of Your Smile』で世に知れ渡ります。Joao Donato によるアレンジです。
The Gentle Rain (Luiz Bonfá) From "The Gentle Rain" / Luiz Bonfá and Eumir Deodato (1965)
The Gentle Rain (Luiz Bonfá) / The Oscar Peterson Trio and The Singers Unlimited (1971)
続いて、映画『The Gentle Rain』からサウンドトラックから表題曲。ギターの名手、Luiz Bonfá の演奏が聴けます。
1971年のThe Singers Unlimited と The Oscar Peterson Trio とのコラボアルバム『In Tune』から。繊細なピアノに素敵なボーカル、酔いしれてください。
Tanto Amor (Reynaldo Dias Leme-Luiz Bonfá) / Luiz Bonfa & Maria Toledo (1965)
Luis Bonfá と結婚した Maria Helena Toledo は Luis Bonfá の作詞も手掛けました。2人が1965年にリリースしたアルバム『Braziliana』から。アレンジは Bobby Scott と Luiz Bonfa が共同で行っています。
Mundo Perdido (Luiz Bonfá-Maria Toledo) / Maria Toledo (1967)
Maria Toledo が1967年にリリースしたアルバム『Sings The Best Of Luiz Bonfa』から。詩を Maria Toledo が書いています。このアルバムは全編、Eumir Deodato のアレンジです。
Almost In Love (Luiz Bonfá-Randy Starr) From "LIVE A LITTLE, LOVE A LITTLE" / Elvis Presley (1968)
1968年の Elvis Presley の映画『バギー万才!! 』 (LIVE A LITTLE, LOVE A LITTLE) は 珍しく、Elvis Presley がボサノバを歌っている映画ですが、楽曲を提供したのが Luiz Bonfá でした。美人女優、Michele Carey 相手にロマンチックに歌っています。
* 『Braziliana』 / Luiz Bonfa & Maria Toledo (1965)
(富田英伸)