初期の Kenny Gamble その1:1962年〜1964年
2022.10.10
Songwriterシリーズ、
今回からフィラデルフィアソウルの重鎮、 Kenny Gamble の初期の時代を4回シリーズで取り上げていきます。
第1回 : 1962年〜1964年
Kenny Gamble こと Kenneth Gamble は1943年、フィラデルフィア生まれ。10代の頃から音楽好きで、友人達のグループを組んで歌っていたそうです。Kenny Gamble が16才頃のこと、1人の少女が Kenny 同じ学校に転校してきます。その少女の一家は、ジャマイカからフィラデルフィアへ移住してきた一家でした。Kenny Gamble はその少女と仲良くなり、少女の家に遊びにいきました。その家には少女の兄でピアノが堪能な Thom Bell がいました。Kenny Gamble は実は自分は曲作りをしていると Thom Bell に打ち明け、それから2人は意気投合し、Thom Bell の自宅で一緒に曲作りをするようになったとのこと。
1959年に、Kenny Gamble はボーカル・インストルメンタルグループ、The Romeos というグループを結成し、Thom Bell を誘います。その時のメンバーは以下の通りです。
Kenny Gamble、Roland Chambers (guitar) 、Karl Chambers (drums) 、Winnie Walford (bass) 、Thom Bell。
*Kenny Gamble and The Romeos (中央でピアノを弾いているのが、Thom Bell、その上が Kenny Gamble)
19才頃、Kenny Gamble は音楽プロデューサー、Jerry Ross の事務所に出入りするようになりました。Jerry Ross が 自分自身の Heritage レーベルを設立した頃で、その秘められた才能を確信した Ross は Kenny Gamble とソングライターとシンガーの両方で契約を結びます。
Kenny Gamble は Thom Bell を事務所に連れていき、Jerry Ross は2人にデュオ・グループを組ませ、Kenny & Tommy の名で、Jerry Ross のレーベル Heritage Records からデビューさせました。1963年にシングル "I'll Get By", "Someday You'll Be My Love" といった Doo-Wop スタイルのバラード・ナンバーをリリースしました。
Some Day (You'll Be My Love) (Kenneth Gamble-Thom Bell-Murray Wecht) / Kenny & Tommy (1962)
シングル番号、Heritage-108 が記載されたシングルで、Kenny Gamble と Thom Bell のデュオ。共作者の Murray Wecht は Jerry Ross の Heritage Records の共同創設者で、ピアニストでもあります。録音時の資料は以下の通り。この時期に既に Leon Huff とは周知の仲だったようです。
録音年 : 1963年
レコードNo. : Heritage 108
ソングライター : Kenny Gamble-Thom Bell
スタジオ : Virtue - Philadelphia
エンジニア : Frank Virtue
ミュージシャン : Bobby Martin, Bobby Eli, Joe Macho, Thom Bell, Leon Huff
(You Better) Watch Your Step (Kenny Gamble) / Sammy Sevens (1963)
Watch Your Step (Thom Bell-Luther Dixon-Kenny Gamble) / Brooks O'Dell (1963)
以降、Kenny Gamble は Jerry Ross の下で多くの楽曲を書いていくことになります。1963年から Swan Records からリリース。アレンジは Joe Renzetti と Kenny Gamble が共同で行っています。
その年、Brooks O'Dell というフィラデルフィア出身のシンガーがカバー、その時のクレジットには Thom Bell と Luther Dixon も一緒に記載されています。
You Are A Lucky So And So (Kenny Gamble) / Sammy Sevens (1963)
先の曲を歌った Sammy Sevens のシングル。アレンジは同じく Joe Renzetti と Kenny Gamble が共同で行っています。A面録音の "Here Comes The Bride" は Jerry Ross との共作曲。Kenny Gamble 単独クレジットの作品は、20代前半とは思えない、落ち着いた老成した楽曲が多いです。
You Better Be A Good Girl Now (Kenny Gamble-Jerry Ross) / The Swans (1963)
Jerry Ross が手掛けたガールグループ、The Swans に提供した楽曲。The Swans は 後に The Dreamers 、The Mellow Moods、The Sweet Three といった名前でも活動。アレンジは Joe Renzetti と Kenny Gamble 。この辺りから Gamble- Ross 十八番である、シャッフルビートが誕生してきます。
He's No Ordinary Guy (Jerry Ross-Kenny Gamble-Joe Renzetti-Robert Richards) / Dee Dee Sharp (1964)
1964年、Cameo Records からリリースされた同じく、Jerry Ross のプロデュース作品。Joe Renzetti らとの共作曲。歌ったのは後に Kenny Gamble の奥様となる Dee Dee Sharp。柔らかいリズム・ギター (たぶん、Joe Renzetti が弾いていると思います) が特長でこの時代にしては洒落た曲調。
I've Got Mine You Better Get Yours (Jerry Ross-Kenny Gamble) / The Sapphires (1964)
Jerry Ross が手掛けたガールグループの中で良い作品が生まれたのが、The Sapphires でした。女性リードボーカルの Carol Jackson の優しい声が持ち味でした。アレンジは Joe Renzetti と Kenny Gamble 。
You Don’t Know What You Got Until You Lose It (Jerry Ross-Kenny Gamble) / Kenny Gamble (1964)
1964年、Jerry Ross のプロデュースの下、Columbia Records からリリースした、Kenny Gamble のソロデビューシングル。アレンジは Jimmy Wisner。憂いとあるしっとりしたとした深みのある曲調。後に、Bobby Hebb もこの曲をカバーしました。
* Kenny Gamble and The Romeos
(富田英伸)