初期の Kenny Gamble その3: 1966年〜1968年
2022.10.27
今回はフィラデルフィアソウルの重鎮、 Kenny Gamble を初期の時代を4回シリーズで取り上げていきます。
第3回 : 1966年〜1968年
Kenny Gamble は Leon Huff と一緒に 1971年に Philadelphia International Records を興し、一世を風靡していくことになりますが、ここで、 Leon Huff について少し触れておきたいと思います。
Leon Huff は1942年、ニュージャージー州カムデン生まれ。子どもの頃は教会の聖歌隊でピアノとオルガンを演奏していたそうです。1960年初頭に、Doo Wop グループ、The Lavenders を結成。1961年にシングル "Slide" C/W "Angel" をリリース。その時、プロデューサーに就いたのが、Jerry Ross と Murray Wecht でした。
* The Lavenders (一番右が Leon Huff)
Jerry Ross よりも Leon Huff の才能を見抜き、いち早く登用したのが、プロデューサーチーム、John Madara-David White でした。Madara-White チームがプロデュースするThe Pixies Three、Len Barry といったミュージシャン達に楽曲提供していくようになります。1964年、Patty & The Emblems に書いた "Mixed-Up Shook-Up Girl" は Billboard Hot Singles の37位のヒットとなりました。また1965年には、初期の頃の The Three Degrees に "Drivin' Me Mad" という曲を書いています。
Kenny Gamble とは、1962年の Kenny & Tommy のシングル録音時に既に出会っている模様で、1963年には The Orlons に Gamble-Huff クレジットで "Don't You Want My Lovin" を提供しています。そして、1960年代中期から本格的にソングライターチームとなっていきます。1966年に設立した Gamble Records では Gamble-Huff Production の記載があり、事実上、2人で運営していたと考えられます。
Our Love Is Everywhere (Jerry Ross-Joe Renzetti-Kenny Gamble) / The Sapphires (1966)
1966年、Jerry Ross プロデュース作品。Jerry Ross とアレンジャー/ギターリストの Joe Renzetti との共作曲です。アレンジはJoe Renzetti と Kenny Gamble。The Sapphires ぴったりの落ち着いたボサの雰囲気のある楽曲です。冒頭の女性ソプラノは Marlena Davis でしょうか。
Hello Baby (Jimmy Bishop-Kenny Gamble-Barbara Mason) Barbara Mason (1966)
1965年の歴史的な Barbara Mason "Yes, I'm Ready" のセッション後に制作された曲。Arctic Records の設立者の Jimmy Bishop と Kenny Gamble、そして Barbara Mason との共作曲です。Barbara Mason は1972年にも "Yes, I'm Ready" をレコーディングしていますが、その時も Kenny Gamble がバックコーラスで参加しています。
My Best Friends Man (Jimmy Bishop-Kenny Gamble) / Dee Dee Sharp (1966)
1966年、Kenny Gamble の奥方の Dee Dee Sharp がAtco Records からリリースしたシングル。Jimmy Bishop との共作曲。知られざる良い曲。アレンジのクレジットがありませんが、ストリングスもとてもいいです。
I’m Gonna Make You Love Me (Jerry Ross-Kenny Gamble) / Dee Dee Warwick (1966)
I’m Gonna Make You Love Me (Jerry Ross-Kenny Gamble) / The Supremes and The Temptations (1968)
1966年、Dee Dee Warwick に提供した楽曲。Jerry Ross との共作クレジットで、Jimmy Wisner がアレンジを担当。初期の Kenny Gamble の楽曲で一番有名な曲です。同年には、Jerry Ross がプロデュースした Jay & The Techniques も録音しています。
1968年に Frank Wilson と Nickolas Ashford のプロデュースで Diana Ross & The Supremes and The Temptations がカバーし、Billboard Hot 100 の2位となりました。
Please Don't Rush Me (Kenny Gamble-Leon Huff-Elizabeth Bacone) / The Baby Dolls (1967)
1967年、ガールグループ The Baby Dolls に提供した楽曲。Kenny Gamble が設立した Gamble Records からリリースされました。クレジットには Kenny Gamble-Leon Huff に Elizabeth Bacone という女性プロデューサーが加わっています。アレンジには後に Philadelphia International Records で重要な役割を果たすことになる Bobby Martin が担当しています。
I'll Be Standing By (Kenny Gamble-Leon Huff-Cindy Scott) / Lesley Gore (1968)
"It's My Party" の大ヒットを持つ Lesley Gore に提供した曲。Kenny Gamble-Leon Huff と一緒にクレジット掲載されている Cindy Scott は The Supremes の Lynda Laurence の姉で、別名、Sundray Tucker の名でレコードをリリースしています。アレンジは Thom Bell と Bobby Martin が共同で行っています。
Never Gonna Give You Up (Kenny Gamble-Leon Huff-Jerry Butler) / Jerry Butler (1968)
1968年、Mercury Records からリリース。Kenny Gamble-Leon Huff プロデュース作品。Billboard Hot 100 の1位を獲得しました。クレジットには Kenny Gamble-Leon Huff に Jerry Butler が加わっています。この年に新たに設立された Sigma Sound Studios で録音され、 Bobby Martin がアレンジを担当。フィリーサウンドの胎動を感じ取ることができます。
* Kenny Gamble、Leon Huff、Thom Bell
* Leon Huff、Kenny Gamble
(富田英伸)