Perry Botkin Jr. の作品から Gil Garfield との共作を
2023.01.09
Songwriterシリーズ、
今回は Gil Garfield & Perry Botkin Jr. のチームで取り上げたいと思います。
西海岸のアレンジャーで知られる Perry Botkin Jr. は Valiant Records の Barry DeVorzon との共作が世に知られていますが、今回は Gil Garfield との共作曲に限って取り上げます。
まず、Gil Garfield について。
Gil Garfield、本名 Gilbert Garfield は1933年ロサンジェルス生まれ、2011年に亡くなっています。1950年代に Leiber and Stoller がプロデュースした男性2人、女性1人のボーカル・グループ The Cheers のメンバーでした。一番有名なのは後に Edith Piaf がカバーしたことで知られる "Black Denim Trousers and Motorcycle Boots" という曲。1960年代になるとソングライターに転進し、Leiber and Stoller との共作で、 Chuck Jackson に "I Keep Forgettin'" や Jay And The Americans に "It's My Turn To Cry" などを書いています。この The Cheers にはスタジオコーラス・シンガーの草分け的存在の女性、Sue Allen が在籍していました。
* The Cheers (一番下が Gil Garfield)
* Sue Allen については以下を参照ください。
Magic Voices シリーズ Sue Allen
続いて、Perry "Bunny" Botkin Jr.について。
Perry "Bunny" Botkin Jr. は1933年ニューヨーク生まれ。父、Perry Botkin はギター、バンジョーなどの名手だったそうです。1960年代になって西海岸スタジオのアレンジャーとして仕事を始めています。1960年には後の盟友となる、Barry DeVorzon が在籍していたインスト・グループ、John Buck And His Blazers に Barry DeVorzon との共作で楽曲提供しています。
これに遡って1957年に "Garfield- Botkin" の共作クレジットの曲があります。
これは誰もがご存知のこの曲です。
Passion Flower (Botkin-Garfield-Murtagh) / Fraternity Brothers (1957)
情熱の花 (Botkin-Garfield-Murtagh-訳詞:音羽たかし・水島哲) / ザ・ピーナッツ (1959)
聴いての通り、日本のザ・ピーナッツ「情熱の花」 (もしくはザ・ヴィーナス「キッスは目にして!」) のオリジナルです。メロディラインはベートーベンの「エリーゼのために」からの引用ですが、クレジットは Botkin-Garfield-Murtagh となっています。この曲は、Perry Botkin Jr. にとっても最初期の仕事だと思います。日本のザ・ピーナッツがこの曲を取り上げたのは、この曲をイタリアのカテリーナ・ヴァレンテ (Caterina Valente) がまず取り上げて世界なヒット。それを作曲家、編曲家の宮川泰さんが気に入ったのだと思います。ザ・ピーナッツ「情熱の花」と聴き比べを。
1960年代に入ると2人は自身のプロダクション、Garfield-Botkin Production を設立。本格的に楽曲制作にとりかかります。そのプロダクションから1963年にセッション・シンガーだった Jackie Ward を Robin Ward として Dot Records からデビューさせます。
Wonderful Summer (Gil Garfield-Perry Botkin Jr.) / Robin Ward (1963)
冒頭の潮騒の音。波の向こうから聴こえてくる心地よいストリングス。そして Robin Ward の気持ちいい声。いつまでも褪せることのない夏のメロディー。この曲を聴かないと夏は来ないです。
In His Car (Gil Garfield-Perry Botkin, Jr.) / Robin Ward & The Rainbows (1964)
Robin Ward & The Rainbows 名義でリリースしたサーフ・ミュージック。The Beach Boys の "In My Room" のアンサー・ソングとして知られています。
2人は Robin Ward にはその他に "Dream Boy"、"Winter’s Here"、"Bobby" など提供。どれもいい曲ばかり。
以下、Robin Ward 以外にGil Garfield-Perry Botkin Jr. のペンによる僕の好きな曲を紹介していきます。
You Are Here (Gil Garfield-Perry Botkin Jr.) / The Caravelles (1964)
聴いての通り、Robin Ward が1964年にリリースした "Winter's Here" と同じ詩違いの曲です。 The Caravelles はイギリスの2人組のガール・グループ。
Robin Ward と同じ1964年リリースですが、リリース時期と季節と合わず、この詩になったのかもしれません。
Don't Say Goodbye (Gil Garfield-Perry Botkin Jr.) / Jean King (1966)
雰囲気のあるいい曲です。歌っているのは Jean King という人はセッション・コーラスで知られる The Blossoms のメンバーだった女性。 アレンジは Perry Botkin Jr ではなく、 Ernie Freeman が担当しています。ビブラフォンを使った洒落たアレンジです。ビブラフォンはJulius Wechter だと思います。リリースはアニメーション制作で知られるハンナ・バーベラの関連会社、Hanna-Barbera Records。
Little Miss Understood (Gil Garfield-Perry Botkin Jr.) / Connie Stevens (1963)
1963年、Connie Stevens に提供した1曲。アレンジも Perry Botkin Jr.。Connie Stevens の "ツン" とした歌い方がキュートです!
Paradise (Gil Garfield-Harry Nilsson-Perry Botkin Jr.-Phil Spector) / The Ronettes (1965)
Phil Spector プロデュース作品ですが、冒頭に潮騒のSEが入っている "Wonderful Summer" を意識した作品となっています。アレンジは Jack Nitzsche。Perry Botkin Jr. も1960年後期の Philles Records の主力アレンジャーとなっていきます。作曲に Harry Nilsson の名が載っていますが、Nilsson が新人時代の1965年にリリースした自作のシングル、"She's Yours" は、Garfield-Botkin Production の制作です。
Poor Butterfly (John Golden-Raymond Hubbell) / Gil Garfield (1966)
最後に Gil Garfield の歌声を。曲は古いスタンダードナンバーですが、制作は Garfield-Botkin Production。Gil Garfield さん、元々シンガーなのでいい声しています。
*上記写真は Perry Botkin Jr.
(富田英伸)