バカラック その2:セプターレコードとディオンヌ・ワーウィック
2023.02.21
Burt Bacharach の2回目です。
第2回 : Scepter Records、Dionne Warwick
この回は Dionne Warwick の歌唱で、Burt Bacharach のメロディーを聴いていきたいと思います。
1960年代に入ると、Burt Bacharach は時代の流行に合わせていわゆるポップソング、ソウルミュージックのミュージシャン達にも楽曲を提供するようになります。1961年、Scepter Records の The Shirelles に "Baby It's You " を提供。共作者は Hal David の兄の Mack David。その頃から、Scepter Records との関係が深くなっていきます。
The Drifters へ "Mexican Divorce" を提供。The Drifters を手掛けたソングライター、プロデューサー・チーム、Jerry Leiber-Mike Stoller から4人の女性セッションシンガーを紹介されます。その4人とは Cissy Houston (Whitney Houston の母) 、その姪の Dee Dee Warwick、Dionne Warwick、そして、Myrna Smith でした。Cissy Houston と Warwick 姉妹はそれまで The Drinkard Singers というゴスペルグループで活動していました。Cissy Houston と Myrna Smith は後に The Sweet Inspirations のメンバーとなります。当時、Burt Bacharach は Dee Dee Warwick、Dionne Warwick の3人で Burt And The Backbeats というグループ名義でシングル "Move It on the Backbeat" をリリースしています。
Burt Bacharach は女性シンガー達の中で特に Dionne Warwick の声に惹かれ、1962年、A面 " I Smiled Yesterday" B面 "Don't Make Me Over" を提供。これが Dionne Warwick のソロデビューシングルで Scepter Records からリリースされます。"Don't Make Me Over" はB面にもかかわらずこちらがヒットします。
Burt Bacharach はその後、1970年代まで長きに渡って、Dionne Warwick に楽曲を提供。その多くが Burt Bacharach がプロデュース、アレンジを手掛けた作品であり、Burt Bacharach の新しい楽曲のお披露目の場にもなっていました。
今回は、Dionne Warwick の歌唱曲の中でも、あまり耳にする機会の少ない楽曲、そして僕の特に好きな曲を選んでみました。
Window Wishing (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1969)
1969年、 Barry Mann-Cynthia Weil の "You've Lost That Lovin' Feeling" のB面に収録されました。このB面の方がお気に入り。この曲を街に連れ出して、通りを歩いてみたくなります。
Here I Am (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1965)
映画『何かいいことないか子猫チャン』 (What's New,Pussycat?、1965) の時に作られた楽曲。その時はインストでしたが詩が加えられ、Dionne Warwick が録音しました。1965年アルバム『 Here I Am』の表題曲。少し物悲しいバラードです。
Don't Say I Didn't Tell You So (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1965)
1965年アルバム『The Sensitive Sound Of Dionne Warwick 』収録曲。Burt Bacharach ならではの曲調の展開。ミュートを効かせたトランペットをこういう風に使えるのもすごいです。素晴らしいアレンジです。
In Between The Heartaches (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1966)
1965年アルバム『 Here I Am』の1曲目に収録。「心痛のはざまで」とでも訳すのでしょうか。切ないメロディーが心を打ちます。
Check Out Time (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1970)
1970年アルバム『Very Dionne 』の1曲目に収録。男女の別れと旅立ちの歌ですが、ドラマティックな曲調展開に心が持っていかれます。
Who Gets The Guy (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1971)
1971年シングルとしてリリース。口笛から始まる心地よいメロディとリズム。"This Guy's in Love with You" や "Raindrops Keep Fallin' On My Head" に通ずる曲調です。
Walk the Way You Talk (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwick (1971)
先の "Who Gets The Guy" のB面に収録されていた曲。少し、コンテポラリーな曲調です。一連の Dionne Warwick のアルバムはプロデュースは Bacharach -Hal David が行っていますが、自分達以外の楽曲を収録する場合は他のアレンジャーに依頼することが多いです。
The Balance of Nature (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwicke (1972)
1972年、Dionne Warwick は Scepter Records から離れ、Warner Bros. Records からリリースしたアルバム『Dionne』から。Scepter Records から離れても Burt Bacharach の作品が収録されました。このアルバムが Dionne Warwick とのコラボ時代の最終作品となりました。このアルバムにはアレンジャーに Bob James や Don Sebesky が参加しています。これも胸打つ切ない曲です。
Hasbrook Heights (Burt Bacharach-Hal David) / Dionne Warwicke (1972)
Hasbrook Heights (Burt Bacharach-Hal David) / Burt Bacharach (1971)
今日の最後はこの曲を。同じく、アルバム『Dionne』から。ラストに収録されました。これもお気に入りの曲。心地いい気持ちになります。合わせて、Burt Bacharach が歌ったバージョンも。これも雰囲気いいです。
(富田英伸)