バカラック その3:1960年代中期、人気ヒットメーカーへ
2023.02.28
Burt Bacharach の3回目です。
第3回 : 1960年代中期頃の作品、人気ヒットメーカーへ
1958年、Perry Como に提供した "Magic Moments" が Billboard Hot 100 の4位になってからは、多くのレコード会社、ミュージシャンから Burt Bacharach にオファーが来るようになります。これまではジャズシンガー、いわゆるミドル・オブ・ロードのポピュラーシンガーへの提供が多かったのですが、1961年には The Drifters に "Mexican Divorce"、"Please Stay" を提供、プロデューサーチーム Jerry Leiber-Mike Stoller とも知り合いになり、R&B、ソウルミュージックとも深く関わるようになります。
同年、Gene McDaniels に提供した "Tower of Strength" が5位、 The Shirelles に提供した "Baby It's You" が8位を記録。翌年には Gene Pitney が歌った " (The Man Who Shot) Liberty Valance" が4位と大ヒット。テレビでも Burt Bacharach の楽曲を歌ったシンガー達と一緒に出演することも増え、そのルックスも手伝って人気ソングライターとなっていきます。
第1回に引き続き、Burt Bacharach が1960年代中期頃に書いた作品を聴いていきたいと思います。
Rome Will Never Leave You From (Burt Bacharach-Hal David) From "DR. KILDARE" / Richard Chamberlain And Others (1964)
Rome Will Never Leave You From (Burt Bacharach-Hal David) / Richard Chamberlain (1964)
"They Long to be Close To You" を最初に歌った俳優 リチャード・チェンバレン (Richard Chamberlain) ですが、Burt Bacharach は彼にこの曲以外に数曲、楽曲を提供しています。この曲は リチャード・チェンバレンが主演を務めたテレビ映画『DR. KILDARE』 (1961-1966) の挿入歌に使われました。ローマ生まれの女優 (ボンドガール!) 、ダニエラ・ビアンキ (Daniela Bianch) との共演シーンで登場します。
シングルは1964年、MGM Records からのリリース。オーケストレーションを担当したのは Perry Botkin, Jr.。
Rain From the Skies (Burt Bacharach-Hal David) / Adam Wade (1963)
1963年、ドラマーで俳優でもあった Adam Wade に提供した曲。アレンジも Burt Bacharach 自身が務めました。プロデュースにあったのはシンガー出身で後に映画『ポセイドン・アドベンチャー』の挿入歌、"The Morning After" などを書くこともなる Al Kasha。
From Rocking Horse To Rocking Chair (Burt Bacharach-Hal David) / Paul Anka (1964)
1964年、当時人気の高かった Paul Anka にも楽曲提供しています。プロデュース、アレンジともに Burt Bacharach 自身が務めています。"木馬から揺り椅子"...、長い人生、愛に包まれた可愛らしい詩も素敵です。
Reach Out For Me (Burt Bacharach-Hal David) / Lou Johnson (1963)
1960年代前半、Burt Bacharach が女性シンガーで推していたのが、Dionne Warwick だとしたら、男性シンガー推しはこの Lou Johnson だったと思います。"Reach Out For Me" の初出はこの Lou Johnson でアレンジ、プロデュース共に Burt Bacharach が務めています。バックコーラスは Doris Troy、Dee Dee Warwick、Cissy Houston が歌っています。
その後、Lou Johnsonは "The Last One To Be Loved"、"Kentucky Bluebird (Send A Message To Martha) " を Burt Bacharach のプロデュースの下、録音しています。
Kentucky Bluebird (Send A Message To Martha) (Burt Bacharach-Hal David) / Lou Johnson (1964)
Kleine Treue Nachtigall (Burt Bacharach-Max Colpet) / Marlene Dietrich (1968)
元々この曲は "Message To Martha" のタイトルで Jerry Butler の1963年のアルバム『Need To Belong』に収録されていましたが、アルバムの作者クレジットには "Leiber Stoller" と誤植されていました。1966年に Dionne Warwick が "Message to Michael" のタイトルでシングルリリースして、Burt Bacharach の作品として広く認知されるようになります。それに遡って1964年に Lou Johnson が "Kentucky Bluebird" のタイトルでこの曲をシングルリリースしています。プロデュース、アレンジ共に Burt Bacharach が務めています。
1968年には Burt Bacharach がコンサートツアーの指揮、アレンジャーを務めていたドイツ出身の大女優、シンガーのマレーネ・デートリッヒ (Marlene Dietrich) がこの曲をドイツ語で録音しました。その音源も合わせて。
Forever Yours I Remain (Burt Bacharach-Hal David) / Bobby Vinton (1964)
1964年、Bobby Vinton の大ヒット曲 " Mr. Lonely" を収録したアルバム『Mr. Lonely』に収められた楽曲。アレンジも Burt Bacharach によるもの。ラブレターを題材にした詩も素敵です。
I Say A Little Prayer (Burt Bacharach-Hal David) /Dionne Warwick (1967)
I Say A Little Prayer (Burt Bacharach-Hal David) From "My Best Friend's Wedding" (1997)
ラストは Dionne Warwick の歌唱のヒット曲を。1967年のリリースで、US Billboard Hot 100 の4位となりました。翌年には Aretha Franklin のバージョンがリリース、このバージョンも US Billboard Hot 100 の10位 となります。
1997年の映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』 (My Best Friend's Wedding) のキュートな1シーンを。出演者全員がレストランで楽しく歌いました。Burt Bacharach のメロディーが老若男女問わず、アメリカの人々に広く愛されている証です。
* Burt Bacharach と その奥さんで女優の Angie Dickinson
(富田英伸)