バカラック その6:1960年後期、西海岸へ
2023.03.25
Burt Bacharach の6回目です。
第6回 : 1960年後期、ミュージカル『Promises, Promises』、映画『明日に向って撃て!』、音楽の拠点は西海岸へ
1968年、Burt Bacharach-Hal David はニール・サイモン (Neil Simon) 脚本のブロードウェイ・ミュージカル『Promises, Promises』の音楽を手掛けます。本作は映画『アパートの鍵貸します』 (1960) を元にしたミュージカルでしたが、個人的にはミュージカル映画化してほしかった作品です。
その頃になると Burt Bacharach 自身は A&M Records に移籍、音楽制作の拠点は西海岸になります。A&M Records のオーナーでもある Herb Alpert に "This Guy's in Love with You" を提供、Billboard Hot 100 の1位となります。同年には"To Wait for Love" もリリース。
1969年、アメリカ国内からも映画音楽のオファーがあり、映画『明日に向って撃て!』 (BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID、1969) の劇伴を含む、音楽監督を担当。Scepter Records 所属の B. J. Thomas が主題歌 "Raindrops Keep Fallin' on My Head" を歌いました。レコーディングの当日、B. J. Thomas は咽頭炎だったそうで、しかしそのかすれた声が逆に幸いして、雰囲気のある歌唱になりました。この映画で Burt Bacharach は1969年アカデミー賞のベストソング賞とベストスコア賞のダブル受賞しました。
What The World Needs Now Is Love (Burt Bacharach-Hal David) / Jackie DeShannon (Bell Studios、1965)
Come And Get Me (Burt Bacharach-Hal David) / Jackie De Shannon (1966)
Windows and Doors (Burt Bacharach-Hal David) / Jackie De Shannon (1966)
ソングライターでもある Jackie De Shannon への提供曲を3曲。"What the World Needs Now Is Love" は元々、Dionne Warwick が歌う予定でしたが、Jackie De Shannon のバージョンが先に世に出て、U.S. Billboard Hot 100の7位となり、シンガーとしての Jackie DeShannon の代表曲となります。他の2曲を含め、プロデュース、アレンジ共、Burt Bacharach で Bell Sound Studios で収録されました。
"What the World Needs Now Is Love" は録音模様の画像が現存しています。
Try To See It My Way (Burt Bacharach-Hal David) From "On The Flip Side" / Rick Nelson and Joanie Sommers (1966)
Try to See It My Way (Burt Bacharach-Hal David) / Peggy March (1966)
この曲、元々は1966年テレビミュージカル『On the Flip Side』のために作られた楽曲で、出演した Rick Nelson と Joanie Sommers がデュエットしました。アレンジとコンダクトは 第1回で登場した Peter Matz が手掛けています。素晴らしいアレンジです。
1966年、"Little" がとれた Peggy March が取り上げました。アレンジは Jimmy Wisner が手掛けています。
Don't Count The Days (Burt Bacharach-Hal David) / Sandi & Salli (1968)
Don't Count The Days (Burt Bacharach-Hal David) / Marilyn Michaels (1968)
ちょっと聴く機会の少ない作品を。Sandi & Salli という女性2人組が歌った曲。テレビで活躍した女性デュオだそうです。Capitol Records からリリースされました。アレンジを担当したのは Gene Page。西海岸での録音だと思われます。
東海岸側では、シンガー、女優の Marilyn Michaels という女性が同年録音しています。アレンジを担当したのは Four Seasons と関係が深い Charlie Calello です。
Wanting Things (Burt Bacharach-Hal David) / Connie Francis (1968)
1960年の映画『アパートの鍵貸します』 (THE APARTMENT) をミュージカルに仕上げた1968年初演のブロードウェイミュージカル『Promises, Promises』のために書かれた楽曲です。1968年、Connie Francis がリリースしたアルバム『Connie Francis – Sings Bacharach And David』で取り上げられました。素晴らしい歌唱に Claus Ogerman の流麗なオーケストレーションが冴えます。
It Doesn't Matter Anymore (Burt Bacharach-Hal David) / The Cyrkle (1967)
1967年、The Cyrkle のセカンドアルバム『Neon』に収録。元々は1966年テレビミュージカルドラマ"『On the Flip Side』のために作られた楽曲。アレンジは John Simon 。終わりの方、ちょっと転調するところがいいです。
The April Fools (Burt Bacharach-Hal David) / Percy Faith, His Orchestra And Chorus (1969)
1969年の映画『幸せはパリで』 (THE APRIL FOOLS) 。映画内では Dionne Warwick 歌唱のものが使われましたが、契約上の関係でサウンドトラック盤には収録されず、Percy Faith, His Orchestra And Chorus のバージョンが収録されました。素敵なコーラスですが、コーラスメンバーの記載がないのが残念です。プロデュースは Jack Gold。
I'l Never Fall In Love Again (Burt Bacharach-Hal David) From "Promises, Promises" / Jill O'Hara, Jerry Orbach (1968)
I'l Never Fall In Love Again (Burt Bacharach-Hal David) / Burt Bacharach and Angie Dickinson (Hollywood Palace、1970)
この "I'l Never Fall In Love Again" も人気曲で、いろいろな人が取り上げていますが、決定的なバージョンがなかなかない曲。オリジナルとなったMGMブロードウェイ・キャスト・レコーディング『Promises, Promises』から。歌っている Jill O'Hara という女優さん、とってもいい歌い方です。
1970年、テレビ番組『Hollywood Palace』で、Burt Bacharach と当時の奥様で女優のアンジー・ディキンソン (Angie Dickinson) が番組ホストとして出演、2人でこの曲を歌っています。このアンジー・ディキンソンがとっても可愛いです!脚が綺麗な女優さんで有名でした。アンジー・ディキンソンは日本国内でも主役ペパーを演じたテレビ映画『女刑事ペパー』 (Police Woman、1974-78) が放送され、人気を博しました。
* 『Promises, Promises』制作の頃の Burt Bacharach
(富田英伸)