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aboutバカラック その７：1970年代
2023.04.12
Burt Bacharach の7回目。最終回です。
第7回 : 1970年代、ミュージカル映画『失われた地平線』
Burt Bacharach が移籍した A&M Records には The Carpenters が所属しており、積極的に Burt Bacharach-Hal David の作品を取り上げ、1970年、" (They Long to Be) Close to You" がBillboard Hot 100 1位を4週間続くヒット。ライブコンサートでも Bacharach Medley を披露し、日本国内でも Bacharach メロディーが広く浸透します。
Bacharach-David Medley / The Carpenters (1972)
1970年代に入ると、大ヒットした大型パニック映画『大空港』 (Airport、1970) を制作した映画プロデューサー、ロス・ハンター (Ross Hunter) が、ジェームス・ヒントン (James Hilton) の冒険ＳＦ作品『失われた地平線』 (Lost Horizon) のミュージカル映画化を企画。Burt Bacharach は1973年、ミュージカル映画『失われた地平線』の映画音楽を担当します。
しかし映画は興行的に不振、映画界からの評価も低く、それまで『サウンド・オブ・ミュージック』 (THE SOUND OF MUSIC、1965) などを代表するハリウッド映画における大型ミュージカル映画の終焉に繋がりました。このことは Burt Bacharach に大きなショックを与え、Hal David とのパートナーシップを解消してしまいます。
しかしこの映画からは "Living Together, Growing Together" が生まれ、映画公開に先立ち、1972年に The 5th Dimension がシングルリリースし、1973年のBillboard Hot 100 の32位となります。
映画『失われた地平線』の音楽を手掛けた以降、1970年代、中期から後期にかけてのBurt Bacharach は落ち着いた活動時期で、2枚程のソロアルバムをリリース。
1981年に新しい伴侶となった Carole Bayer Sager のアルバム『Sometimes Late At Night 』がリリース。美しい Bacharach メロディーが戻ってきます。
それはまた別の機会に。
One Less Bell To Answer (Burt Bacharach-Hal David) / Keely Smith (1967)
One Less Bell To Answer (Burt Bacharach-Hal David) / The 5th Dimension (1969)
この曲は The 5th Dimension のナンバーとして広く知れ渡っていますが、初出は1967年、Louis Prima の奥様だったシンガー、Keely Smith のバージョンのようです。
1969年に Bones Howe プロデュースの下、The 5th Dimension が取り上げ、翌年 U.S. Billboard Hot 100の2位となります。リードボーカルを執ったのは Marilyn McCoo。彼女にとっても大切な曲となりました。
Raindrops Keep Fallin' on My Head (Burt Bacharach-Hal David) / B. J. Thomas (1969)
久々の古巣の Scepter Records からのリリース作品です。映画『明日に向って撃て!』 (BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID、1969) 劇中では自転車のシーンと一緒に多くの映画ファン、音楽ファンの心に刻み込まれました。B.J. Thomas のボーカルも切ないです。
South American Getaway (Burt Bacharach) / Burt Bacharach (1969)
映画『明日に向って撃て！』 ( BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID、1969) から印象的な、２人が南米ボリビアへと旅立つシーンで使われたスキャット。
スキャット・パートのメンバーは以下の通り。
Sally Stevens (ソプラノ)
Jackie Ward (Robin Ward) (アルト)
John Bahler (テナー１)
Ron Hicklin (テナー2)
Gene Morford (バス)
Long Ago Tomorrow (Burt Bacharach-Hal David) / B.J. Thomas (1971)
B.J. Thomas は "Raindrops Keep Fallin' on My Head" をきっかけに Burt Bacharach の曲を取り上げるようになりました。この曲が昔から大好きで、Burt Bacharach らしい曲展開の中に、Bacharach にしては珍しく曲に影、暗さがあって心にずっと染みて入るナンバーです。
Something Big (Burt Bacharach-Hal David) / Mark Lindsay (1972)
Burt Bacharach が主題歌を手掛けたもう1つの西部劇映画から。元々は『Something Big 〜テキサス大強盗団』 (Something Big、1971) という映画のために作られた曲でしたが、Mark Lindsay 自身がプロデュースし直してシングルがリリースされました。これも大好きな曲。
The World is A Circle (Burt Bacharach-Hal David) Making From "Lost Horizon " (1973)
The World is A Circle (Burt Bacharach-Hal David) From "Lost Horizon " (1973)
映画『失われた地平線』 (Lost Horizon、1973) の音楽メイキングから。歌唱指導に応えて歌う子ども達の素晴らしい歌声。映画の評判は芳しくありませんでしたが、サウンドトラックはとても気に入っています。
子ども達に交じってリードボーカルのリヴ・ウルマン (Liv Ullmann) の声アテをしたのは Diana Lee というシンガーで、『サウンド・オブ・ミュージック』 (THE SOUND OF MUSIC、1965) のクリストファー・プラマー (Christopher Plummer) などこれも数多くの声アテをやってきた Bill Lee の娘さんです。
最後にこの曲を。
この曲は1972年の Dionne Warwick のアルバム『Dionne』が初出となりますが、この Barbra Streisand のバージョンはそれよりも先で当時未発表曲。それが2021年にリリースされた Barbra Streisand のコンピレーションアルバム『Release Me 2』で初めてCD化されました。このアルバムは1962年から2020年に録音された Barbra Streisand の未発表曲が収録されています。このバージョンは1971年のテレビ番組『Singer Presents Burt Bacharach』放送のために作成されたバージョンです。CD化になった2021年に作成された映像アニメーションも詩の意を汲んで素晴らしい出来になっています。
実は2023年2月8日、Burt Bacharach の訃報に触れた時、頭の中に廻った曲はこの曲でした。それだけ僕にとっても大事な曲。
戦争、紛争、貧困、飢餓、家庭崩壊、虐待、そして失われていく幼いの命。この曲が作られてから、もう50年以上経つというのに.....。現状は変わらず、未だ犠牲が強いられている子どもがいることを。
Be Aware (Burt Bacharach-Hal David) / Barbra Streisand (1971-2021)
世界の片隅で絶望している人々がいます。
気づいて。
あなたの子どもたちが眠っている間、
世界のどこかで家のない子どもがいます。
気づいて。
いいえ、1人の子どもも。
気づいて。
(富田英伸)