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ロジャース&ハート その1

2024.01.25
Blue Moon

Blue Moon

Richard Rodgers-Lorenz Hart Part 1

(1934)

#Cinema Music Composers

(2023年11月26日SSB「ドゥー・ワップ・リクエスト特集」で、The Marcels "Blue Moon"がかかりましたので。)

Cinema Music Composers シリーズ
今回は Richard Rodgers & Lorenz Hart を取り上げたいと思います。Richard Rodgers が作詞家、Lorenz Hart と組んで活動していた1930年代中期辺りまで、2回に分けて取り上げていきます。

Lorenz Hart とのコラボ時代については1948年の2人の伝記映画『ワーズ&ミュージック』 (WORDS AND MUSIC) で描かれています。そのことを踏まえて書いていきたいと思います。

Richard Rodgers と Oscar Hammerstein II とのコラボレーションについては別項で取り上げていきます。




Richard Rodgers は1902年、ニューヨーク生まれ。ユダヤ系の一家で誕生しています。父親は医師でした。6才の頃からピアノを弾き始め、10代には楽曲作りをしていたとのこと。大学はコロンビア大学で、Lorenz Hart そして、後に組むことになる Oscar Hammerstein II もコロンビア大学出身でした。

1919年、Richard Rodgers が18才頃に友人を介して、Lorenz Hart と知り合います。Lorenz Hart は1895年生まれ、Richard よりも7才年上です。Lorenz Hart はそれまで ドイツの演劇の英語翻訳などの仕事をしていました。同年、2人はコメディミュージカル『A Lonely Romeo』のために、楽曲 "Any Old Place With You" を書きます。これが初コラボとなります。その後、ビジネス手腕に長けていた Lorenz Hart の積極的な働きもあって、2人はミュージカルショーの音楽を手掛けていくようになります、1920年代に入ると、彼らがミュージカルのために作った楽曲がレコード化され、ラジオを通して聴衆に届くようになります。彼らが作ったミュージカルはロンドンでも公演され、人気作曲家チームとなります。

しかし、1929年に起きた世界恐慌により、2人はニューヨークでの活動ができなくなり、以前から声がかかっていた西海岸ハリウッドに拠点を移し、映画の仕事を開始します。映画『今晩は愛して頂戴ナ』 (LOVE ME TONIGHT、1932) 、映画『ハリウッド・パーティー』 (HOLLYWOOD PARTY、1934) 等の映画の中に登場する楽曲を書きました。


I'll Take Manhattan (Rodgers & Hart) From "Makers Of Melody" / Ruth Tester and Allan Gould (1929)

Manhattan (Rodgers & Hart) From "WORDS AND MUSIC" / Mickey Rooney、Tom Drake (dubbed by Bill Lee) & Marshall Thompson (1948)

Manhattan (Rodgers & Hart) / Rosemary Clooney and The Earl Sheldon Orchestra (1959)

Rodgers & Hart が最も初期に作った曲。1925年に出版されています。1925年には Ben Selvin 楽団、Paul Whiteman 楽団がレコーディング。1929年にショートフィルム『Makers Of Melody』で歌われました。今回はその映像を。
2人の伝記映画『ワーズ&ミュージック』では2人が初めて作った曲として登場します。トム・ドレイク (Tom Drake) 演じる Richard Rogers が作ってきた楽曲にミッキー・ルーニー (Mickey Rooney) が演じる Lorenz Hart が詩をつけ歌い出します。ちなみにトム・ドレイクの歌をアテた Bill Lee というシンガーは後に、映画『サウンド・オブ・ミュージック』 (THE SOUND OF MUSIC、1965) のクリストファー・プラマー (Christopher Plummer) の歌アテをやった人です。
数多くのシンガーが歌いましたが、今回は Rosemary Clooney もバージョンも一緒に。ユーモアある明るいナンバーです。


Mountain Greenery (Rodgers & Hart) / Roger Wolfe Kahn (1926)

Mountain Greenery (Rodgers & Hart) From "WORDS AND MUSIC" / Perry Como (1948)

Mountain Greenery (Rodgers & Hart) / Mel Torme (TV Show、1956)

1926年、ミュージカル『The Garrick Gaieties』のために作られた楽曲。その年に Roger Wolfe Kahn の楽団が録音し、レコード化されました。
映画『ワーズ&ミュージック』では、映画に出演することが殆どない Perry Como が出演し歌っています。当時のミュージカルショーを意識したシーンとして登場します。セントラルパークを背景から始まるとても色鮮やか、華やかなシーンです。
Mel Torme がテレビショーのために歌ったバージョンも合わせて。しなやかに歌い上げています。映画『ワーズ&ミュージック』同様、都会シーンから山並みのバックへと変わります。


My Heart Stood Still (Rodgers & Hart) / Broadway Nitelites、Vocal by Franklyn Baur (1927)

My Heart Stood Still (Rodgers & Hart) / Chet Baker (1958)

My Heart Stood Still (Rodgers & Hart) / Bernadette Caroll (1962)

1927年、ロンドンで開催されたレビュー『One Dam Thing after Another』のために作成された楽曲で、同年のブロードウェイミュージカル『A Connecticut Yankee 』の中で歌われ、人気曲となりました。Rodgers & Hart の2人がパリ旅行中に車中ガタガタの音を立てた時、で同席した女性が「ああ!私の心は止まった!」 (My Heart Stood Still) と叫んだことをヒントに書いた曲だそうです。同年にリリースされた音源を聴いてみましょう。
1958年、Riverside Records からリリスされた Chet Baker のアルバム『 (Chet Baker Sings) It Could Happen to You』からのバージョンを。
ポップス・フィールドでは、Four Seasons の Bob Gaudio とNick Massi が共作した "Nicky" を歌った Bernadette Caroll が1962年にシングルリリースしていますので、これも合わせて。


Took Advantage Of Me (Rodgers & Hart) / Paul Whiteman Bing Crosby & trio, vocal (1928)

Took Advantage Of Me (Rodgers & Hart) / Rosemary Clooney (1960)

1928年、ミュージカル『Present Arms』のために作られた楽曲。同年、Paul Whiteman 楽団演奏で録音されました。クレジットにはありませんがまだ駆け出しの頃の Bing Crosby が歌っています。軽快で可愛らしい曲です。
1960年に Rosemary Clooney がリリースしたアルバム『Rosie Solves the Swingin' Riddle!』からのバージョンも合わせて。


Isn't it Romantic? (Rodgers & Hart) From "LOVE ME TONIGHT" /Jeanette MacDonald (1932)

Isn't it Romantic? (Rodgers & Hart) / Jack Jones (1967)

2人が西海岸ハリウッドに拠点を移し、映画の仕事を開始した頃の作品。1932年の映画『今晩は愛して頂戴ナ』 (LOVE ME TONIGHT) で歌われたナンバーです。映画の中では主演のモーリス・シュヴァリエ (Maurice Chevalier) とジャネット・マクドナルド (Jeanette MacDonald) が歌いました。今回はそのジャネット・マクドナルドが歌ったバージョンを。
この曲も人気曲で多くのシンガーが歌いましたが、1967年の Jack Jones のアルバム『Without Her 』からのバージョンも合わせて。Jack Jones らしく"ロマンチック"に歌い上げています。


The Bad in Every Man (Blue Moon) (Rodgers & Hart) From "MANHATTAN MELODRAMA" / Shirley Ross (1934)

Blue Moon (Rodgers & Hart) / Mel Tormé (1961)

Blue Moon (Rodgers & Hart) / The Marcels (1961)

1934年の映画『ハリウッド・パーティー』 (HOLLYWOOD PARTY) のために書かれたナンバーです。その年に詩と題名を書き替え、1934年の映画『男の世界』 (MANHATTAN MELODRAMA) の中でも使われました。
1948年の2人の伝記映画『ワーズ&ミュージック』』では、Mel Tormé が登場し、この "Blue Moon" を歌います。映画公開と同時に Mel Tormé はシングルリリースします。今回はそのバージョンではなく、1961年の"月" の曲を集めたアルバム『Swingin' On The Moon』から。アレンジは Russell Garcia で Marty Paich Orchestra の演奏です。
1961年には The Marcels がDoo Wop スタイルでシングルリリースします。これが US Billboard Hot 100 の1位となり大ヒット。仕掛人であるプロデューサーは Stu Phillips。1981年の映画『狼男アメリカン』 (AN AMERICAN WEREWOLF IN LONDON) で印象的に使われました。しかし Richard Rodgers はこの The Marcels の Doo Wop スタイルはあまり好みではなかったようです。


My Romance (Rodgers & Hart) / Paul Whiteman Vocal by Donald Novis & Gloria Grafton (1935)

My Romance (Rodgers & Hart) /From "BILLY ROSE'S JUMBO" / Doris Day (1962)

My Romance (Rodgers & Hart) / The Singers Unlimited (1975)

1935年のミュージカル『Jumbo』のために書かれた曲。1936年に Paul Whiteman の楽団が録音しました。歌ったのはイギリス出身の俳優でもあった Donald Novis と Gloria Grafton という女性です。
このミュージカルは1962年に映画『ジャンボ』 (BILLY ROSE'S JUMBO) として映画化されます。主演のドリス・デイ (Doris Day) が劇中で歌いました。
1975年の The Singers Unlimited のアルバム『A Capella II』に収録されたバージョンも合わせて。



* 映画『ワーズ&ミュージック』 (WORDS AND MUSIC、1948) で Lorenz Hart を演じたミッキー・ルーニー (Mickey Rooney) (左) と Richard Rogers を演じたトム・ドレイク (Tom Drake)

* 上記写真、Richard Rodgers (左) 、Lorenz Hart (右)



(富田英伸)