ロジャース&ハマースタイン その1
2024.02.11
It Might as Well Be Spring
Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II Part1
(1945)
今回は Richard Rodgers & Oscar Hammerstein II を取り上げたいと思います。
まず初めに Richard Rodgers とのコラボレーションを開始する前の Oscar Hammerstein II の経歴について触れておきます。
Oscar Hammerstein II はニューヨーク、1895年生まれ。Richard Rodgers よりも7才年上になります。父親はユダヤ人の家族の出身で劇場のマネージャーでした。祖父もドイツで劇場を主宰し、Oscar Hammerstein I (1世) という氏名で、そこから名前を取りました。大学では法律を学びましたが、劇場でプロデュース業をしていた父親が亡くなると、自分も演劇の道に進みます。1925年に作曲家の Jerome Kern と出会い、1927年にミュージカル『Show Boat』を作り上げます。このミュージカルは大ヒットし後に、1936年と1951年に映画化されます。その後も、Jerome Kern や Vincent Youmans と組んでヒット・ミュージカルを作り上げました。
1940年代前半、Richard Rodgers とその長らくパートナーだった Lorenz Hart はミュージカル『Oklahoma!』の制作に取り掛かりますが、Lorenz Hart はアルコール依存症により体調を崩し、思うようにミュージカル制作が進まない状況に陥りました。そこでミュージカル制作に実績のあるベテランの Oscar Hammerstein II と Richard Rodgers が組んで、ミュージカル『Oklahoma!』を完成させ、1943年にブロードウェイ初演となります。奇しくも、Lorenz Hart はこのミュージカル公開のその年に亡くなります。48才でした。その後、Richard Rodgers は Oscar Hammerstein II と組んで、多くの優秀なュージカルを作り出すようになります。
今回は Richard Rodgers が Oscar Hammerstein II とコラボを開始した頃の作品、ミュージカル『Carousel』、映画『ステート・フェア』、そして代表作の1つ、ミュージカル『South Pacific』から誕生したナンバーを中心に聴いていきたいと思います。
It Might As Well Be Spring (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) " From "STATE FAIR (1945) " / Jeanne Crain (Dubbed by Louanne Hogan (1945)
It Might As Well Be Spring (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) " / Dick Haymes (1945)
It Might As Well Be Spring (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) " From "STATE FAIR (1961) " / Pamela Tiffin (Dubbed by Anita Gordon) (1961)
1945年の映画『ステート・フェア』 (STATE FAIR) から。映画『ステート・フェア』これまでのようにブロードウェイミュージカルから派生した作品ではなく、1933年の映画『あめりか祭』 (STATE FAIR) のリメイクにあたる作品です。
ステート・フェアとは家畜の品評会や農産品の展示会を通じて始まったお祭りで、年に一度、若い男女の出会いの場でもありました。そんな出会いやラブロマンスを描いた作品。映画からジーン・クレイン (Jeanne Crain) の歌唱シーンを。歌声をアテたのは Louanne Hogan という女性シンガーで後に The Pied Pipers に参加する人です。
この映画にジーン・クレインの兄役で出演したディック・ハイムズ (Dick Haymes) は同年、シングルをリリースし、これが大ヒットします。演奏は Victor Young の楽団です。
映画『ステート・フェア』は1961年に再リメイクされます。主演はパット・ブーン (Pat Boone) 、ボビー・ダーリン (Bobby Darin) 、アン=マーグレット (Ann-Margret) など当時の人気スターが出演しました。その時はパメラ・ティフィン (Pamela Tiffin) の歌唱シーンで登場。歌声は Anita Gordon というシンガーがアテました。
It's A Grand Night for Singing (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) " From "STATE FAIR (1945) " / William Marshall, Dick Haymes, Vivian Blaine, Jeanne Crain (dubbed by Louanne Hogan) ,Dana Andrews (dubbed by Ben Gage) , and Chorus (1945)
It's A Grand Night for Singing (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) / Dick Haymes (1945)
It's A Grand Night for Singing (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) " From "STATE FAIR (1961) " / Ann-Margret, Pat Boone, Bobby Darin, David Street, Pamela Tiffin,and Chorus (Vocals for Miss Tiffin: Anita Gordon) (1961)
この曲も1945年の映画『ステート・フェア』から生まれたナンバーです。ダンスシーンで多くの人が歌います。まず、舞台上でウィリアム・マーシャル (William Marshall) が歌い出し、全員でコーラス。その後、ディック・ハイムズに繋ぎます。とても優雅なワルツ曲です。
この曲も映画に出演したディック・ハイムズが同年に Decca Reords からシングルをリリースしています。
1961年版の映画『ステート・フェア』でもボビー・ダーリン、パット・ブーン、アン=マーグレットなど出演者によって歌い継がれます。ちなみにこの映画はローズマリー・クルーニー (Rosemary Clooney) の夫であった俳優出身のホセ・ファーラー (Jose Ferrer) が監督しました。
1993年にこの曲を題したミュージカル『A Grand Night for Singing』が作られ、ブロードウェイ初演となりました。
If I loved you (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) From "CAROUSEL" / Gordon MacRae and Shirley Jones (1956)
If I loved you (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) /Barbra Streisand (1989)
1945年にミュージカル『Carousel』から生まれた曲。1956年に映画『回転木馬』として映画化されました。天国で星磨きをしている男が1日だけ下界に降りてくるファンタジーなお話。主人公のゴードン・マクレー (Gordon MacRae) とシャーリー・ジョーンズ (Shirley Jones) によって歌われました。娘役のシャーリー・ジョーンズは殆ど新人で、後に『人気家族パートリッジ』 (THE PARTRIDGE FAMILY) でお母さんを演じ、お茶の間でも人気となります。
映画化以前も Perry Como や Bing Crosby などがレコードディングしましたが今回は、 Barbra Streisand の1989年のアルバム『The Broadway Album』から。アレンジは Peter Matz によるものです。
Younger Than Springtime (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) From "SOUTH PACIFIC" / John Kerr (dubbed by Bill Lee) (1958)
Younger Than Springtime (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) / A Very Close Relative (Frank Sinatra) (1967)
1949年にミュージカル『South Pacific』から生まれたナンバー。1958年の映画化された映画『南太平洋』 (SOUTH PACIFIC) では、ジョン・カー (John Kerr) の出演シーンで登場しますが、歌をアテたのは、Bill Lee。映画『サウンド・オブ・ミュージック』でトラップ大佐役のクリストファー・プラマー (Christopher Plummer) の歌アテをやった人です。
1967年の Nancy Sinatra のテレビスペシャルで、父のフランク・シナトラ (Frank Sinatra) が登場して歌った映像が残っています。プロデューサーの Lee Hazlewood、アレンジャーの Billy Strange の姿も映っています。この録音模様は Nancy Sinatra のアルバム『 Movin' With Nancy』に収録されました。その時のフランク・シナトラのクレジットは "A Very Close Relative=非常に近い親戚" として紹介されています。
Bali Ha'i (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) From "SOUTH PACIFIC" / Juanita Hall (dubbed by Muriel Smith) (1958)
Bali Ha'i (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) / Paul Weston And His Orchestra (1959)
これも1949年にミュージカル『South Pacific』からのナンバー。1958年の映画『南太平洋』ではファニタ・ホール (Juanita Hall) という女性の登場シーンで流れましたが、歌をアテたのは 1952年の映画『赤い風車』 (MOULIN ROUGE) に出演していた Muriel Smith という女性でした。神秘的な島 Bali Ha'i を想うエキゾティックなメロディ。
1959年の Paul Weston And His Orchestra のアルバム『Music For Romancing』からのインストも合わせて。
Happy Talk (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) From "SOUTH PACIFIC" / Juanita Hall (dubbed by Muriel Smith) (1958)
Happy Talk (Richard Rodgers-Oscar Hammerstein II) / Claudine Longet (1968)
これも1949年にミュージカル『South Pacific』からのナンバー。歌は先に登場した Muriel Smith によって歌われています。笑顔のジェスチャーが印象的な可愛らしい曲です。
1968年の Claudine Longet のアルバム『Love Is Blue』のバージョンも合わせて。子ども達の声も一緒に楽しく歌っています。プロデュースは Tommy LiPuma。アレンジは Nick DeCaro 。
* 1956年映画の『回転木馬』から。ゴードン・マクレーとシャーリー・ジョーンズ。
* 上記写真、Richard Rodgers (左) 、Oscar Hammerstein II (右)
(富田英伸)