帰還兵の夫を待っていた妻の気持ちを描いた曲
2024.08.08
Jule Styne の3回目です。
1930年初め、Jule Styne はシカゴから西海岸、ハリウッドに移り住み、ハリウッドスターのボーカルコーチ兼伴奏ピアニストになりました。
1939年の映画『狂った栄光』 (SLIGHTLY HONORABLE) 、1942年の映画『Priorities on Parade』といった映画に楽曲を書くようになります。この映画音楽提供を通じて、作詞家の Sammy Cahn と出会い、2人のコラボレーションが始まり、"You're So Good To Me"、"I'll Walk Alone" といった曲が生まれました。
第二次世界大戦終了した1945年、Jule Styne と Sammy Cahn の2人は "It's Been a Long, Long Time" を書きます。この詩は帰還兵の夫を待っていた妻の視点から描かれており、同年、Kitty Kallen をボーカルにした Harry James and His Orchestra のバージョンが大ヒットとなりました。
It's Been a Long, Long Time (Jule Styne-Sammy Cahn) From "Avengers: Endgame (2019)" / Harry James and His Orchestra Vocal by Kitty Kallen (1945)
It's Been a Long, Long Time (Jule Styne-Sammy Cahn) / Doris Day (1955)
第二次世界大戦終了した1945年に書かれた楽曲。この詩は、帰還兵の夫を待っていた妻の視点から描かれており、同年、Kitty Kallen をボーカルした Harry James and His Orchestra のバージョンが大ヒットとなります。後に Harry James は 1955年に Helen Forrest のボーカルをフューチャーして再録音しました。
この曲は「帰還兵の夫を待つ」という意味で今日まで映画の中で度々使われています。最近では2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』 (AVENGERS: ENDGAME) でも効果的に使われていました。
1965年の Doris Day のアルバム『Doris Day's Sentimental Journey』のバージョンも合わせて。アレンジは "Our Day Will Come" の作曲者でもある Mort Garson。
お久しぶり
あなたが私のそばにいるなんて思いもしなかった
言いたいこと、思っていることはたくさんあるの
そんな言葉は後にとっておくわ
今回は、1940年代を中心に Jule Styne が初期に書いた曲を聴いていきたいと思います。
Who Am I? (Jule Styne-Walter Bullock) From "Hit Parade of 1941" / Frances Langford (1940)
Who Am I? (Jule Styne-Walter Bullock) / Count Basie and His Orchestra Vocal by Helen Humes (1940)
Jule Styne が初期に映画のために書いた楽曲を。1940年の映画『Hit Parade of 1941』から。劇中でアン・ミラー (Ann Miller) の歌アテとしてフランセス・ラングフォード (Frances Langford) が歌いました。
同年に Count Basie and His Orchestra がリリース。その Count Basie にコットンクラブで歌っていたところに見い出された Helen Humes がボーカルを執っています。こちらは、Count Basie らしくノリのいいバージョンです。
It Seems I've Heard That Song Before (Jule Styne-Sammy Cahn) From "Youth On Parade" / Martha O'Driscoll dubbed by Margaret Whiting (1942)
It Seems I've Heard That Song Before (Jule Styne-Sammy Cahn) / Harry James and His Orchestra Vocal by Helen Forrest (1942)
1942年の映画『Youth on Parade』のために書かれた曲。劇中ではマーサ・オドリスコル (Martha O'Driscoll) が出演していますが、実際はまだ若き、Margaret Whiting が歌アテをしています。画質が悪くて残念ですが、とても楽しいシーンです。
同年に Harry James の楽団がレコーディング、このバージョンがヒットしました。歌っているのは Helen Forrest。このバージョンは1983年のウディ・アレン (Woody Allen) の映画『ハンナとその姉妹』 (HANNAH AND HER SISTERS) で印象的に使われました。女性ボーカル、Helen Forrest は僕好みのいい声しています。
I'll Walk Alone (Jule Styne-Dinah Shore) From "Follow the Boys"/ Dinah Shore (1944)
I'll Walk Alone (Jule Styne-Dinah Shore) / Jo Stafford With Paul Weston And His Orchestra (1959)
1944年の映画『Follow the Boys』から。映画の中でノンクレジットでしたが、 Dinah Shore が歌いました。同年、Dinah Shore がこの曲でシングルリリース。Billboard charts の1位のヒットとなります。清楚なアカペラです。
1959年の Jo Stafford With Paul Weston And His Orchestra のバージョンも合わせて。胸染み入るしっとりした曲です。
Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry (Jule Styne-Sammy Cahn) / Harry James and His Orchestra Vocal by Kitty Kallen (1945)
Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry (Jule Styne-Sammy Cahn) / Diana Krall (2016)
この曲は1944年のコメディミュージカル『Glad To See You』から生まれた楽曲で、舞台では子役出身のジェーン・ウィザース (Jane Withers) によって歌われました。翌年に Harry James の楽団が録音、"It's Been a Long, Long Time" でもボーカルを執った Kitty Kallen が歌いました。その後も多くのジャズシンガーによって歌われ、通好みの人気曲となります。
今回は2016年の Diana Krall のアルバム『Quiet Nights』のバージョンを。Diana Krall と Tommy LiPuma のプロデュースの下、Claus Ogerman の流麗なアレンジです。
* 女性ボーカル、Helen Forrest
(富田英伸)