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レッチリによるガッツあるビーチ・ボーイズ

2024.10.05
I Get Around

I Get Around

Red Hot Chili Peppers

ROCK & ROLL HALL OF FAME COVERS EP (2012)

先日の山下達郎のサンデーソングブックは「ビーチ・ボーイズのかからないビーチボーイズ特集」で、その中で Red Hot Chili Peppers による "I Get Around" のカバーがかかりました。これはいいです。

レッチリがビーチボーイズをカバーしていることを知りませんでした。ロックンロール。すごく合ってる。こんななら、もっと明るい曲を歌っていてくれてたらよかったのに (レッチリにいまいち興味を持っていなかったことを言い訳しています) 。



レッド・ホット・チリ・ペッパーズは3リズム+ヴォーカルの4人編成で、ヴォーカルのアンソニーがマイク・ラブを、ギターのジョンがブライアンのファルセットを、ベースのフリーが追っかけコーラスをして、ビーチ・ボーイズを再現しています。

放送で達郎さんは「ビーチ・ボーイズはロックンロールバンド、ガレージバンド。演奏の強さがないとだめ。」と語っています。レッチリのドライブ感がぐいぐい来ます。




こちらはビーチ・ボーイズのオリジナル演奏、1964年のエドサリバンショーのスタジオライブです。レッチリにギターを1本加えたほぼ同構成。デニスのドラムが叩きまくっていて、スタジオ録音よりもロックンロールしています。


同じく放送で達郎さんは『ALL SUMMER LONG』と『SHUT DOWN VOLUME 2』が全盛期と思っているとのこと。日本では80年台の末に『PET SOUNDS』がCD化され、いみじくも達郎さんが解説を書いたのですが、そこから『PET SOUNDS』と『SMILE』の妙なブームが起き、欧米とは変わった認識のギャップができてしまった、とのこと。

『ALL SUMMER LONG』と『SHUT DOWN VOLUME 2』は1964年に発表されたアルバムで、"I Get Around"、"Fun, Fun, Fun" といったロックンロール、"Girls on the Beach"や"Don't Worry Baby"らのバラードが含まれています。

筆者はレッチリのメンバーと似たような世代。ヴォーカルのアンソニーは'62年、ギターのジョンは'70年の生まれという。我々の世代がティーンエイジャーの頃は、ビーチ・ボーイズのレコードがロクに流通していませんでした。筆者は『ENDLESS SUMMER』というペットサウンズ以前をまとめたベスト盤をひたすら聴いておりました。『PET SOUNDS』を聴かなっきゃ、という風潮もなかったし。ただし、当時のビーチ・ボーイズは再発盤の流通の少なさだけでなく、盤の音も悪く、同時代70年代、80年代の音と比べても見劣りし、その時代の若者の心を捉えるにはだいぶハンデがありました。

レッチリの "I Get Around" の演奏は、『MUSICARES』というブライアンのトリビュートコンサート (2005) におけるものです。それに先立つレッチリ2002年のアルバム『BY THE WAY』は、ビーチ・ボーイズの影響下にあると、アンソニーが認めています。他方、調べてみるとギターのジョンは、ビーチ・ボーイズを同アルバムのレコーディングの終盤まで、あんまり聴いてなかった、なんかの発言もあって、なんとなくほっとしたりもします。マニアとかそういのより、純粋にロックンロールとして "I Get Around" を演奏しています。こういうガッツのある演奏をたくさん聴きたいですね。

(たかはしかつみ)