The Spiral Starecase のハイトーンボイス、Pat Upton
2024.11.02
今回は The Spiral Starecase の Pat Upton を取り上げます。
Pat Upton は The Spiral Starecase のリーダー、ギターリスト、ボーカリスト。作曲力もある人ですが、なんといってもそのボーカル。その素晴らしいハイトーンボイスは気持ちを晴れやかにしてくれました。
Pat Upton こと Patrick Upton はアラバマ州ジェラルディン生まれ。1964年、アメリカ空軍主催のコンサートに応募するために Pat Upton は The Fydallions というバンドを結成。このグループが Columbia Records の Gary Usher の目に留まります。シングルデビューするにあたって、グループ名が The Spiral Starecase に変更。グループ名の由来は映画『らせん階段』 (THE SPIRAL STAIRCASE、1946) から来ているそうです。1968年に Gary Usher プロデュースでシングル "I'll Run c/w Inside, Outside, Upside Down" がリリース。
Inside Outside Upside Down (Mike Post-Walt Meskel) / The Spiral Starecase (1968)
Gary Usher は Pat Upton に楽曲を書くように勧め、自作の曲を蓄えていきます。1969年、新たにプロデューサーに Sonny Knight が就き、シングル "More Today Than Yesterday c/w No One For Me To Turn To" がリリース。これが Billboard Hot 100 の12位となりヒット。"More Today Than Yesterday" はその後、多くのカバーも生まれ人気曲となります。
その後、The Spiral Starecase はヒットに恵まれず、グループは解散。Pat Upton はしばらく休業した後、セッションミュージシャンとして活動。その後 Rick Nelson のバンド Stone Canyon Band に参加。Rick Nelson のアルバム『Playing to Win』でバックボーカルを務めます。
Pat Upton は Stone Canyon Band の活動の傍ら、アラバマ州ガンターズヴィルでライブレストランを経営。Rick Nelson もそこで公演を行っていました。1985年、Pat Upton のライブレストランで公演を行った Rick Nelson は自家用機で次の巡業先あるダラスに向いました。しかしその自家用機の急な故障で墜落。Rick Nelson は45才で亡くなりました。Pat Upton も一緒にダラス行きを誘われたそうですが、レストランの仕事で断りを入れたそうです。
その後、Pat Upton は音楽から遠ざかっていましたが、1980年代後半からオールディーズ・ショーに出演、"More Today Than Yesterday" を歌い続けました。Pat Upton は2016年、75歳で亡くなりました。
Pat Upton といえば、なんと言ってもその伸びやかなハイトーン・ボイスです。しかし、楽曲制作も良い曲があります。まず、The Spiral Starecase 時代の Pat Upton が作った楽曲を聴いていきたいと思います。
1969年、The Spiral Starecase の唯一のヒット曲。Billboard Hot 100 の12位。One-hit wonder としても有名です。なんといっても Pat Upton のファルセットではない素晴らしいハイトーン・ボイス!聴いていて気持ちがスカッとします。歌っている本人が作っているので、こんな音域が広い曲が書けるんだと思います。アレンジは竹内まりやさんなども手掛けた西海岸を代表するアレンジャー Al Capps。
この素敵なタイトルは フランスの女流詩人、Rosemonde Gérard の詩の一説から来ているようです。
"For you see, each day I love you more
Today more than yesterday"
(ほら、毎日私はあなたをもっと愛している。
昨日よりも今日。)
More Today Than Yesterday (Pat Upton) / The Spiral Starecase (1969)
1969年、Columbia Records からリリースされたアルバム『More Today Than Yesterday』から、3曲聴いていきます。いずれも Pat Upton のペンによる曲です。
Sweet Little Thing (Pat Upton) / The Spiral Starecase (1969)
No One For Me To Turn To (Pat Upton) / The Spiral Starecase (1969)
Judas to the Love We Knew (Pat Upton) / The Spiral Starecase (1969)
ここからは The Spiral Starecase 以降のソロの作品やシンガーセッションミュージシャンとして活動していた頃の作品を聴いていきたいと思います。3曲とも Pat Upton が書いた作品ではありませんが、いい曲。ソングライターから愛されたシンガーだったことがわかります。
I Hear Thunder (Kenny Nolan) / Pat Upton (1973)
1973年、Playboy Records からリリースされた Pat Upton のシングル。Kenny Nolan が書いた曲です。Kenny Nolan らしい良いメロディで、Pat Upton の声にぴったりです。
She Said Goodbye (Jim Ed Norman-Baker Knight-Ed Munter) / Pat Upton (1975)
1975年、RCA Records からリリースされたシングル。Eagles や Linda Ronstadt などのアレンジを手掛けた Jim Ed Norman がプロデュースした作品。Pat Upton が抑制を効かせて切なく歌っています。
I'm In Love Again (Fred Karlin) From "CALIFORNIA DREAMING" / Pat Upton (1978)
1978年、Samuel Z. Arkoff が製作したティーン向け青春映画『CALIFORNIA DREAMING』のサウンドトラックに収録。曲を書いたのは "For All We Know" (邦題「ふたりの誓い」) や"Come Saturday Morning" を書いた Fred Karlin。しっとりとしたバラード曲。サウンドトラックには America、Michelle Phillips などが参加しています。
最後に生前、オールディーズショーに出演している Pat Upton の姿を。全盛期に負けず劣らず、キーを変えずにこのハイトーン・ボイス!素晴らしいの一言に尽きます。多くの人に愛された曲、そして声だったことがわかります。
More Today Than Yesterday (Pat Upton) / Pat Upton (TV Show)
(富田英伸)