このアルバムのコンセプトのひとつに、「他人に書いた作品を自分で歌うというのがあった」(山下達郎)という。確かにセルフカバーを中心とした内容であり、映画に使われた楽曲も収録されていることから、『REQUEST』は企画物的なアルバムと言ってよいだろう。
しかし、本作は単純にそう割り切れるものでもない。というのも、CD、LP、カセットがそれぞれチャートで1位を獲得。発売後5年を経過した時点でもチャートにランクインしていたのだ。国内チャートとしてはビートルズの『ABBEY
ROAD』が301週連続チャート・インしたという記録(オリコン調べ)があるが、おそらくCDでは『REQUEST』ほど長く売れ続けたアルバムはないのではないか。
これほどのロング・セラーになった一番の要因は、プロデューサー&アレンジャーである山下達郎とまりやの二人が共に“いつ聴いても古さを感じさせない音楽”を愛しているからだろう。確かに今流行している“ホットな音”はある。しかし、それは数年もすれば古臭くなるものだ。『REQUEST』が成功したのは、普遍性があるからである。
本作発表後、まりやは小学生や中学生、あるいは65歳の人から手紙をいただくようになったそうだ。「そういうのを見てると、音楽は世代を超えられるんじゃないかと思いますね」と語る彼女は、このアルバムによって自分の音楽性に大きな自信を持つことになった。
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