竹内まりやが、実に18年7ヶ月ぶりにステージに帰ってきた。
結婚、出産、育児と、人生の様々な場面の中で、マイペースながらも常に質の高い作品を届けてくれたまりやだが、いつか、ステージに戻ってきてくれることをファンはずっと待ち望んでいた。そして驚いたことにこんなに長いステージ・ブランクがありながら、腕の立つスーパー・バックバンドを得て、どの曲でも彼女の歌は実に情感がこもり説得力に溢れ、スタジオ・バージョンにも引けを取らない魅力的な仕上がりになっていた。
「五線紙」は、現在のまりやが歌う方が相応しい。松本隆が1980年に書いた10年前を回顧する素敵な詩を、今のまりやが20年前を振り返るように優しく歌い綴る。ラストの「LET
IT BE ME」の夫婦デュエットを聴いていると、いつかは『ダブル・ファンタジー』のような夫婦名義のデュエット・アルバムを作って欲しいと夢は膨らむ。
今回のCD化は、ラジオで流れたライブ音源に対して反応した、多くのファンからのリクエストに呼応する形で急遽実現したと聞いた。長く家庭や育児を優先するために在宅歌手としてマイペースで活動してきたまりやからの、幸運にもライブを見られた一握りのファンへの記念品であるとともに、様々な理由でライブを見ることが叶わなかった更に多くの在宅ファンに向けられた、18年間余りの感謝の気持ちが一杯詰まった贈り物である。
斯く言う私もライブに行けなかった一人だが、CDになったお陰で、家事や育児に奮闘している在宅まりやファンの妻と、今年生まれたばかりの愛娘と家族3人で仲良く、お家でゆっくりと安心して楽しむことができる。たぶん、そんな聴かれ方を彼女も望んでいるんじゃないかな。
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