後に訪れる輝ける音楽活動の礎を築き、タイトル通り時流をつかみ、満を持して達郎自身を真のメジャーシーンへ飛立たせた作品。
本作に先駆けてシングル発表されたタイトル曲はマクセルのCFに採用され、達郎初のベストテンヒット(最高オリコン3位)となり、ついに達郎の名はお茶の間にも浸透していく。しかしそういう周辺の動きに惑わされることなく達郎は自らのレコーディングスタイルそしてスタッフを確たるものとしていく。その前者は一人多重コーラスとアカペラである。既に前作『Moonglow』でも取り入れられていた彼の"売り"は、本作「Rainy
Day」「おやすみ」において更に深みを増し、「Ride On Time」のエンディングでは、次に続く名作『On The Street Corner』を予見させる一人アカペラが聴ける。一方の後者は80年代以降の達郎のレコーディング、コンサート活動の核となる青山純(ds)、伊藤広規(b)、難波弘之(kb)、椎名和夫(g)というリズム・セクションとの作業である。
本作では「いつか」、「Daydream」などのサウンドに彼らの邂逅の瞬間を味わえる。この優れたリズム・セクションを得、固定化することで、達郎の才能がその後如何なく発揮されていくことになったのは論を待たない。アナログ盤のA面にあたる「いつか」〜「Ride
On Time」の力強さから一転して、ロバート A. ハインラインのSF小説を曲として表現した「夏への扉」、自らを振り返った名曲「My Sugar Babe」、そして出来上がったばかりのこの曲を竹内まりやに電話で唄った「おやすみ」に至るB面の叙情的なプロセスにより、アルバムを聴き終えた後の心地よい余韻を保証する一作。(田上僚一) |