第1回 : 上柴とおるさん


上柴さんが選んだ
California Dreamin'

The Mama's And The Papa's
1966 / ビクター SS-1669
 自分のお金で最初に買ったレコードです。66年の春中学3年でした。僕がポップスを聴き始めた年です。メロディーが良かった。それまでクラシックしか聴いてなかったのでポピュラー・ミュージックを聴くということに対する後ろめたさみたいなものがありましたが、この曲はええ曲やと自信を持って言えるんじゃないかと。何の予備知識もなくて聴いただけに、引きつける魔力があったんでしょうね。ジャケットのサインは94年に大阪ブルーノート で Denny Doherty からもらったものです。ママ・パパ以前のLPとかも持って行ったら、えらい喜んでくれてねえ。何でこんな所にこんなやつがおるんやろうと(笑)。最初に買ったレコードがこういうので良かったです。他の友人たちは歌謡曲とかそういうのですからね(笑)。
Unchained Melody
/Ebb Tide/Soul & Inspiration
/You've Lost That Loving Feelin'

The Righteous Brothers
1966 /グラモフォン/ヴァーヴ SKV-1008
 これも66年です。僕は66年がポップスの全ての始まりですね。ライチャスは、何と言っても「Soul & Inspiration」なんですよ。タイトルがいいじゃないですか。とにかくこの曲を聴いてポップス・ファンになっていこうって決心したんですよ。当時はお金なかったでしたからコンパクト盤は結構重宝してた。これは当時450円。グラモフォンはよそよりも50円安いんですよ(笑)。彼らは日本ではあんまり人気なかったですね。当時 Phil Spector なんて口にする人なんて周りにはいなかったし。大滝さんぐらいじゃないですか、田舎でそんなことゆうてたの(笑)。「Soul & Inspiration」は彼らの曲の中でも日本では評価低かったように思いますね。「Unchained Melody」はスタンダードでしたし、当時の大人にはこっちの方が受けたんでしょうね。
La La Means I Love You

The Delfonics
1968 / Bell 1150
 68年には日本では出てなくて、当時はラジオからテープに録って聴いてました。心斎橋のヤマハでジャケットを見た記憶がありますね。当時高校2年生で小遣い500円でしたから、LPは高かったですね。2600円ぐらいやったかな、今の1万円ぐらいの価値でしたかねえ。500円の4曲入りコンパクト盤がせいぜい。LPなんて正月とか、高校入学祝いとかそんなときだけですね。それで一年後に買えたのかな、小遣いためて。当時の小遣い帳に記録が残ってます(笑)。フィリーソウルなんて意識は全くなくて、とにかくラジオから流れてきたこの曲にすごく感動したんです。感動っていうとすごく安っぽいけどすごい衝撃があったんです。あんな曲聴いたことなかったから。このちょっとあとに Intruders の『Cowboys To Girls』が出てやっぱり似たような感じを受けましたね。とにかく Delfonics は全部買いましたからね。スイートソウルと言うだけでは片づかないんですよ。これはもう格別なんですよ。Stylistics も同じ Thom Bell ですけど甘さというか、色気が違うんですよね。William Hart と Russell Thompkins Jr. のファルセットは全然違うんですよ、格段に。Delfonics が横綱なら Stylistics の方は前頭三枚目ぐらいの違いがありますね(笑)。

【上柴さんの番組】-2001年3月現在-

YES-fm (http://www.781.net)
 『ザ・ビートルズ』(選曲・監修)月〜日(6:00〜7:00)
 『夜のポピュラー・ミュージック』(選曲・構成・DJ)月(20:00〜21:00)
 『千日前ポップス・ファイル』(選曲)火(20:00〜21:00)
 『TOP40 なんば』(洋楽曲監修)月〜金(8:00〜/13:00〜)
 ※USEN440(CG35)チャンネル(東京・千葉・埼玉・神奈川はG38)でも聴けます。

FM大阪 WEBラジオ(http://fmosaka.net/radio/)
 『K-ROCK伝説』(構成・DJ)毎週月曜日更新

USEN440(http://www.usen.ne.jp/usen440/)
 『U-WIDE/上柴とおるのパラダイス・ア・ゴー・ゴー』(CG31)(構成・DJ)
 火(12:00〜14:00)再放送:水(17:00〜19:00)日(21:00〜23:00)

BS朝日(http://www.bs-asahi.co.jp/index2.html)
 MUSIC GATE(曲・アーティスト紹介)毎週更新

取材を終えて
 初めてお会いした上柴さんの第一印象は意外(失礼!)とシャイな雰囲気を漂わせていらっしゃったということでしょうか。しかしいざ喋り始めると、軽妙かつ率直な語り口は爽快そのもの。その語り口の端々にポップスへの深い愛情を感じさせるインタビューとなりました。一方で、日本での認知度や時代背景を考えると、こうしたジャンルの音楽を長年に渡って紹介していくのは結構忍耐のいるお仕事だったのではないかと思います。きっとじれったい思いの連続だったのではないでしょうか。そして、上柴さんは今の音楽を取り巻く状況に対してもある種の物足りなさと危機感を感じていらっしゃるようでした。
 しかし、地元関西で頑張る同世代ミュージシャン達への熱いエールや、埋もれている音楽の地道な発掘作業といった活動について嬉しそうに話されている目の奥には、きっと若き日のミニコミ時代と変わらぬであろう、好奇心と情熱の火が宿っているようでした。

聞き手・構成:脇元和征 写真:富田英伸



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