第1回 : 上柴とおるさん



K-ROCK レボリューション!

-ところで関西のロックを紹介するお仕事もなさっているとか。
 これは70年代後半から80年代にかけての関西を中心にしたロックね。まあ全国区もありますけど、CD化されてなかったんですよね。洋楽の復刻とか仕事でやっていると、何か大阪でしかできないこともあるんじゃないかとふっと気が付いて、当時"日本のロックの夜明け"みたいな企画でいっぱい出ましたよね、ロックの復刻盤。で、「何で東京ばっかし出るの?」と。別に反発してたわけじゃないんですが、関西は全く手つかずでしたから。当時、渦中にいたわけではないんですが、結構ミュージシャンの取材はしていたんです。

それで周りを見回すと、当時やっていた人って結構まだやっているんです。関係者がみんな関西にいるんですよね。関西でデビューして、関西でライブやっていた人が、関西で引退し関西で別の仕事しながらまだ音楽に関わっているんですね。それでこれは何か出来るんじゃないかという直感があって、あるグループのライブがあるというので観に行って「ますますええな」と。それでこれは、自分でアルバム持ってないのもあるし、復刻しようと。


『Keep On Truckin'』
アイドルワイルド・サウス
(VIVID CHOPD-072)


『Starking Delicious』
スターキング・デリシャス
(VIVID CHOPD-074)


『2枚目』
誰がカバやねんロックンロールショー
(VIVID VSCD-3031)

-それはここ数年の動きですか。
 ええ、ここ2年ほどですね。VIVID さんに話を持っていって。昔、トリオ・レコードってありましたよね、ここがわりと関西の音源が多くてその権利を持ってるVIVIDさんとしてもこれを活かしたかったんですよね。それで私が企画を持ち込んだタイミングも良くて、じゃあ出そうということになって。

Tin Pan ほど話題にはなってないですけど、再結成したりとか今も活動しているバンドが少なくないんですよ。私もライブに出掛けたりしていろいろ交流ができてきましてね。

で、FM大阪がライブの模様を収録していて、Web Radio という、僕がDJやってるインターネットの番組「K-Rock伝説」で毎週流してるんです。

-70年代から関西フォークとかブルースとか関西独特のムーブメントがありました。
 話題に上がるのはフォークとかブルースばっかりなんですよね。岡林(信康)がいたりシューベルツとか上田正樹が出てきたり憂歌団が出てきたり。でも話はそこで終わってるんですよ。

僕はそこから先の話をしているんです。それで関西ロックは終わった訳じゃない。70年代後半から80年代前半、そこが一切触れられていないような気がするんですよ。それが悔しくて。

東京の音楽メディアでは一切触れられていないし知られていないんですよね。憂歌団までなんですよね。それ以降の話をしたくてね。

-ホームページで紹介されているアーティストで誰がカバやねんぐらいは分かるんですけどサザンクロスとかちょっと知らなかったですね。
 そうですね。一部の全国展開をした人以外は知られていないですね。いっぱいあるんですよ他にも。レコード会社も動いてくれないんですね。邦楽で千枚も売れないなんて出してくれないですよね。

 関西ロックでは取材してライナー書いているんですが、それがやりたかったんですよ。僕の原点ですから。しんどいですよね。いちいち訪ねていって喫茶店や居酒屋でビール呑みながら話聞くんですね。時間かかったけどすごいやりがいありましたね。

音楽云々よりもその人の人生が見えてきて面白かったですね。クスリでぼろぼろになった人もいるし(笑)、復帰して積極的に曲書いてライブやってる人もいますしね。同世代に近いので自分の人生に重なるようなところがあってね。

 80年代はインディーズを除いては関西のロックシーンはさっぱりでした。不遇の時代というかその時期、かつての人たちはだいたい活動をやめてたんですけど、90年代以降にぼちぼち再開し始めて、おっさんのパワーというか。

-上柴さんがさんが紹介されることで関西でそういう機運が盛り上がってきているんですか?
 いや、もともとそういう機運があったところに私が乗っかっただけですね。CD化することによってすごく喜んでもらったのでそれをきっかけに発売記念のライブをやろうとか、火をつけた部分はあるかもしれないですね。

 別にそれで儲けてやろうとかいうことではなくてただ好きでみんなやってるんですよね。時代に関係なく。そういう姿勢が潔いし、そういうのって洋楽にもありますよね。一世を風靡したミュージシャンでも「あの人は今」って人いっぱいいるけど、実はちゃんとやってたりするんですよ。関西ロックってそういう姿と重なるんです。本人達は別に「落ちぶれた」とか全然思ってないんですよね。「好きなことやれてええわ」って感じで。

Christopher Cross なんかもそうですよね。グラミー賞まで取った人だけど、今は幸せそうに「好きな音楽やれていいよ」って感じでね。

-本人の意思とは無関係にまわりが祭り上げちゃった部分っていうのがあるんでしょうね。
 音楽っていうのは時流と関係なくやっていけるものだし、聴いていけるものなんだなと思いますね。関西ロックをやっていろいろ勉強になります。40代からの生き方みたいなものも含めてね。バイトしながら歌ってるとかね、会社辞めてまたバンドやりだした人とか。辞めてまですることないやろって思たけど(笑)。それだけバンドというのは魅力があるんですねえ。なんか、羨ましいですよ。

『It's Gonna Take A Miracle』
The Royalettes
(Celeste CMYK-6142)

『The Elegant Sound Of The Royalettes』
The Royalettes
(Celeste CMYK-6143)

-さて最後に今後の活動について教えて頂きたいのですが。
 実は僕が担当していた「eLife」というホームページは現在は更新が止まってるんですよ。12月いっぱいで実はリストラされたんです(笑)。何とかこれを引き継いで自分でもやっていこうと思っているんですが。
(「eLife」は「関西おもしろ人間図鑑」(http://www.holonnet.com/kansai/)として3/15にリニューアル・オープンいたしました。)

 あとは仕事が来ればやるという(笑)。3月に VIVID から The Royalettes の 1st と 2nd アルバムが出るんですが、これは解説が何と4人がかりなんです。当初、一人で書くのかなと思ってたら「上柴さんは曲解説だけお願いします。」って、一番難しいところを頼まれまして。全部調べるのに結構時間かかっりましたね。スタンダードも歌ってるんですけどオリジナルは英語の歌詞カードもなくて苦労しました。これにガール・グループについて書く人と、バイオグラフィーを書く人がいてすごい豪華なんです。これは楽しみですね。

 それからさっきも言った Dunhill のCD化はぜひやりたいですね。あとは全国ネットのFM番組でポップス・グラフィティみたいな、ていうかもっとマニアックなことをやりたいですよね。

(2001年1月27日東京 キャピトル東急ホテルにて)



Copyright (c) circustown.net 1999 - 2001, All Right Reserved.