『Holiday Songs and Lullabies』
Shawn Colvin
SME/Columbia SRCS-8790
1998/CD
 絵を見るのが好きです。中でも、「聖母子像」−−有名なものでは、ダヴィンチから20世紀アートの巨匠ピカソまで−−って心を引きつけるものがあります。聖母マリアとその子イエス像は、後々の画家たちに母子像として普遍性を持ち、受け継がれ、その像は母親が幼いわが子に言葉やまなざしを投げかける「家族」だけの優しい時間のひとこまを見るといえば言いすぎでしょうか。そのような思いを感じさせる音楽があるとしたら…。
私の好きな女性シンガーの一人、Shawn Colvin の「Holiday Songs and Lullabies」を聴く時、感じるのは前述のことです。このアルバムは、クリスマス・ソングとトラディショナル・ソング(中には、R.L.Stevenson,R.kipling,E.Farajeon などの有名な作家の言葉に曲を付けた作品も)を中心に彼女の優しく暖かみのあるヴォーカルに加えて簡素な音数の世界で聴く私たちを前述した世界に包み込む作品集です。資料によれば、彼女がこのアルバムを作るきっかけになったのは、著名な絵本作家の Maurice Sendak (ジャケットの絵を見るだけでピィーんとくる方が多いと思います)の「Lullabies and Night Songs」という絵本から触発され、初めての子(ジャケットにも For Calendria と微笑ましい)の誕生前に録音されたということです。

 「Christmas time is here」(V.Guaraldi-L.Mendelson)は、ピアノ、ドラム、ベースをバックに前作では感じられなかった優しさ、暖かさをシンプルなメロディにのって感じられる小品です。他にも、「Rocking」では「We willrock you」というフレーズが子守歌としてのんびりと、「Love came down at Christmas」もバラードものの中でアクセントがあって好きです。新しい Shawn Colvin を聴くことができる作品集であり、クリスマス・アルバムとしても新しい「定番」になるに相応しい1枚とお勧めします。



 一つの音ともう一つの音との出会いから、さらなる音の世界が生まれる。ヴォーカルで言えば、デュエットで歌われることによってモノトーンの世界から二色以上の世界が生まれるように、器楽においても、例えば、ピアノの連弾よりも異なった楽器との出会いによってより広がりが出てくると思います。
 ジャズのベース奏者である Charlie Haden とピアニストのHank Jones のデュエットアルバム『Steal Away』もそういうアルバムではないでしょうか。副題に、"Spirituals,Hymns and Folk Songs"と付いているように、彼らの音楽のルーツをたどるアルバムとも感じられます。
 Charlie Haden は、Ornette Coleman,Don Cherry らのフリージャズのプレイヤーとの交流を持つベース奏者、一方、Hank Jonesは、ベテランのジャズ・ピアニストであり、トランペッターのThad, ドラマーのElvinと3兄弟としても有名です。
 加えて、(私事で恐縮ですが)偶然にもアルバムの中で高校時代(キリスト教のプロテスタント系の学校)の礼拝時に歌った賛美歌と出会えたのです。「Hymn Medley」の中の「What Afriend We Have In Jesus」がそれです。その当時は歌わされていた歌でしたが、長い年月の間心に残っており、この二人の音楽で呼び戻された感じがします。賛美歌の中でももっとも親しまれており、どなたも一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。ピアノとベースで淡々と奏でられるメロディ、ふっと口づさんでしまいそうになる1曲です。これ以外にも、「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」、「Danny Boy」など耳なじみの曲が入っています。
 クリスマス礼拝でこの賛美歌も歌われていることでしょう。


(伊東潔)

『Steal Away−Spirituals,Hymns and Folk Songs』
Charlie Haden,Hank Jones
Universal/Verve POCJ-1273
1995/CD





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