『The 4 Seasons Greetings』
The 4 Seasons
Vee-Jay 1055
1962/LP
 その昔、12月が近づくと(頼まれもしないのに)クリスマス・テープを作っては友人に渡していたものでした。その時に、Phil Spector、Beach Boys、Carpenters という強敵を抑えてA面1曲目の座を常にしとめていた曲があります。それがThe 4 Seasons のクリスマス・アルバム『The 4 Seasons Greetings』の冒頭に収録されている「The Merry Christmas Medley」でした。
小さい頃からアメリカかぶれだった僕にとって、クリスマスは強烈に古き良きアメリカを感じさせる特別なイベントでした。別にクリスチャンの家庭に育ったわけでもなく(母親は寺の娘)横浜の山の手に育ったわけでもない(千葉の田舎町)のですが、クリスマスの時期になり姉がツリーをリビングのステレオの脇に飾ると、それだけでものすごくワクワクした気分になったものです。その時にステレオから流れる BGM といえば、父親の趣味である(Billy Vaughn や Percy Fath などの)イージー・リスニングのクリスマス・アルバムだったような気がします。そのゴージャスでノスタルジックでロマンチックなサウンドは、今でもそのままクリスマスのイメージに直結したままなのです。
 『The 4 Seasons Greetings』のA面はSid Bass の格調高いオーケストラ・アレンジによるメドレーで構成されていて、そんな小さい頃のクリスマスのイメージを再現してくれています。特に前述の「The Merry Christmas Medley」と「Joy To The World Medley」は、これでもかってくらいゴージャスなアレンジで幸せな気持ちにさせてくれます。



 変わってB面はこれぞ The 4 Seasons Sound!って感じで、特にVee Jay 時代の音のファンにはたまらないでしょう。1曲目の「Santa Claus Is Coming To Town」はもろ「Sherry」だし、「I Saw Mommy Kissing Santa Claus」は Chipmunks もびっくり、Frankie Valli お得意の高音ファルセットがコミック・ソング一歩手前の楽しさ。そしてアルバム中唯一 Bob Crewe - Sid Bass 作のオリジナル曲「Christmas Tears」と、「Jingle Bells」ならぬ「Jungle Bells」も必聴です。
 最後にデータ的なことを付け加えておくと、この『The4 Seasons Greetings』は「Sherry」のヒットと同じ年の1962年の暮れに発表されています。Ventures の『Christmas Album』が'65年、 Beach Boysの『Christmas Album』が'64年、Spector の『A Christmas Gift For You』や Miracles の『Christmas With The Miracles』が'63年の発表ですから、60年代に入ってからチャートの常連になったグループの中ではクリスマス物一番乗りですね。もともとジャズ・ヴォーカル・グループの伝統的なスタイルという側面を持っている彼らだからでしょうか。プロデュースは Bob Crewe、アレンジは Charles Calello とSid Bass、ヴォーカル・アレンジは Nick Massi。「SantaClaus Is Coming To Town」がシングルとして発表され、(B面は「Christmas Tears」)全米23位まで上がっています。なお、Philips 移籍後の'66年に『The 4 Seasons' Christmas Album』として再発されていますが、なぜかメンバーの表情が深刻なジャケットに変更されています。個人的には Bob Crewe がデザインしたVee Jay 盤ジャケの方が断然好きなんだけどなあ。


(高瀬康一)






Copyright (c) circustown.net 1999 - 2000, All Right Reserved.