Les Patineurs (The Skaters)
composed by Waldteufel / Alexandre Sorel : Piano
1992 " 9 Valses " SOLSTICE SOCD-100 / CD
 校内放送、いわゆる小学校の掃除の時間にかかるインストの音楽であります。この繰り返しくりかえし聞かされた習慣が非常に強烈な音楽体験となっていたのではと思うことしばし。そもそも礼拝に通うとか、シーズン・コンサートに行くとかいう習慣がない私のような者にとって、こういった音楽は何気に季節を感じさせてくれる、というか強引に季節と共に脳裏に割り込んできて困ることがあるやっかいな存在です。
 その中で冬の王様は「スケーターズワルツ」。氷上をすーいすぃと滑るような例の旋律に合わせて、モップがけなんて記憶をお持ちの方も多いと思いますが、実は立派なワルツの名曲です。時代は19世紀後半のパリ。作曲のEmile Waldteufel(ワルトトイフェル、1837-1915)はフランスのストラスブール生まれ、ピアノのセールスなどをしながら音楽を学び、ついにはナポレオンIII世妃ウージェニーのピアノの先生に、そしてパリの宮廷音楽家となります。この時ウィーンではヨハン・シュトラウスUのいわゆるウィンナワルツが大変流行していたのですが、かたやパリでも「スケーターズワルツ」がフランス・ワルツを代表することになります。
 この曲はオーケストラのものが比較的入手が容易ですが、紹介のCDはピアノ演奏になります。どちらも8分あまりの演奏時間で曲の構成は同じ。ブンチャッチャ♪ブンチャッチャの華麗なオケもいいのですが、ピアノ版の方がピアニストである作者の意図をよく伝えると思います。全編を聞くと、あの有名な旋律の他にいくつかのワルツが組まれているのですが、他のワルツ旋律の記憶はありません。ぼくらが校内放送で聞いていたのは、どんな演奏だったのか?パリ発のワルツが日本でどうやってここまでのポピュラリティーを獲得したのかに興味が尽きません。

(たかはしかつみ)



Sleigh Ride
composed by Leroy Anderson / Leroy Anderson : Conductor
1959/1998 " The Leroy Anderson Collection " MCA MVCE-30033-4 / CD
 こちらは鈴の音にバイオリン、ラッパ、楽しいウィンターソングの「そり滑り」。タイトルとメロディーが結びつかない人もいらっしゃるかと思いますが、必ず知ってます。12月にこの曲を聴かないですごすのは極めて困難なあの曲です。
 作曲はアメリカ人の Leroy Anderson(1908-1975)、1948年の作品です。彼は Boston Pops Orchestra を中心にヒット曲を書き続けた作曲家です。B.P.O.のヒット作家というと「Star Wars」の John Williams が思い浮かびますが、Leroy はとくに映画音楽としてではなく、オーケストラ向けの大変ポップで夢あふれる小曲を生み出し続けました。
 紹介するCDは本人指揮による演奏をまとめたもの。「そり滑り」はそこらのBGMよりはるかに速い演奏で、主役の鈴の音に引っ張られて、大変ドライブ感のある演奏です。50年代の音楽としては大変トンがっていたのではないでしょうか。時計がリズムを刻む「The Syncopated Clock」、タイプライターをメインに据えた「The Typewriter」などという曲も彼の作なのですが、Leroyは大変な打楽器アレンジの名手であることも特筆です。とにかく豊かでやさしいアメリカがいっぱいです。なおこの曲で歌詞が付いたものも有名ですが、B.P.O.ヒットの後に作られたとのこと。
 校内放送、商店街のBGM、いたる所にポップな大名曲がころがっているこの季節は、大変危険な季節です。あなたの気になるメロディーは何ですか?

(たかはしかつみ)

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