1989年に製作・公開された『クリスマス・バケーション』という映画をご存知でしょうか。『Saturday Night Live』出身の Chevy Chase が主演をつとめたこのファミリー・コメディ映画、おバカな展開を予感させるプロローグのアニメーションや、そのお下劣でハチャメチャなストーリーがお約束の大団円を迎えるエンディングで、主題歌の「Christmas Vacation」がじつに効果的に使われていました。シャン・シャン・シャン・シャンというスレイ・ベル(橇の鈴)の刻むリズム・パターンを下敷きに、教会の鐘を想わせるサンプリング音によって心浮き立つメロディが奏でられ、そこへ、張りのある女性の歌声が、ための効いたドラムと絶妙に噛みあいながら、弾けるように続きます。
さあ クリスマスがやってきた
一年で一番楽しい時だよ
聞こえる? サンタの乗ったソリの音が
それ行け クリスマスの休暇だ
(水野佳彦訳・日本版字幕より)
この「Christmas Vacation」は、現在では、「Ultimate Christmas Album 3: 3WS Pittsburgh」(Collectables 1010663)に収められ、綺羅星のごとき他の収録曲とならんで、クリスマス・ソングの定番の地位を獲得しつつあるようです。それもそのはず、作詞・作曲は、『アメリカ物語』の主題歌「Somewhere Out There」で、1987年度グラミー賞の2部門を、James Horner とともに受賞した Cynthia Weil と Barry Mann、歌うは、Staple Singers のリード・シンガーを永らくつとめた Mavis Staples と、クリスマス映画の主題歌としてはまさに定石通りの取り合わせだったのです。