第2回 : 宮治淳一さん |
" Unknown But Goodies " -探しつづけている幻のレコードみたいなものはないんですか? " Unknown But Goodies "、自分にとってまだ知らない曲でいい曲があるはずだ。それをアメリカのレコード屋の無造作に積まれた一山幾らの段ボール箱の中から見つける。100ドル、200ドルするような曲で聴いたことない曲は大概コンピレーションのCDになっています。今はそういう曲を聴くことはできるんです。そういう高いものはそのCDで聴けばいい。それよりも誰も気にしないで放り出してある1ドル市の中からいかに見つけてくるかなんです。 |
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-聴いてから買っているんですか?
買う時に聴ける環境じゃないですね。買う時は聴いていません。それで自分の今の買い方がある程度確立してきたんですよね。作家、プロデューサーとかレーベルとかアレンジャー。見た瞬間に自分のテイストかどうか分かってきて、Barry Mann だったらいいだろうとか、Goffin-King だったらいいだろうとか、アレンジャーだったら Jimmy Wisner だったら悪かないだろうとか、あくまでも自分の好みなんだけど。 -まったく知らないとか見たことも聴いたこともないレーベルにも惹かれて買うことはあるんですか。 -呼ばれる? 最近はシングルのビニール袋にステッカーみたいなのを貼っちゃうんですよ。気になったやつはどんどんパッと貼っちゃう。貼ってあるやつはおそらく当時、1回聴いた時に気になっていたんだなあと思うわけです。 今は6種類ステッカーがあるんです。Barry Mann はオレンジ色。Carole King は赤色。Jack Nitzsche 関連は青色。スクリーン・ジェームス関連の Barry Mann 、Carole King 以外は白。Burt Bacharach は緑。それ以外で気になったやつは黄色。そうするとたまに何か漠然と聴きたいなあと思ったら、黄色のステッカーを引っ張ってくれば OK。 あと1人のアーティストでシングルが3枚以上たまってきたら、仕切り板を作るようにしているんですよ。仕切り板がないアーティストの方が圧倒的に多くて、おもしろいものがたくさんあります。 整理する方が集めるよりも圧倒的に時間がかかりますよ。問題はどう整理するかですよね。おそらく自分のためだけだったら(整理を)やらなかったんじゃないかなあ、というのもあって今の Brandin があるんです。人に見てもらおうとすると、やらざるを得ないじゃないですか。ある意味、脅迫観念を持つということですね(笑)。やっているとなかなか終わらないですね(苦笑)。エンドレス・ゲームです。 |
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-常連の方はどこにLPがあるか、宮治さんよりもよく把握している方もいらっしゃるとか(笑)。
自分が持っていないと思っていたレコードでも、「いやあ、ここにありましたよ、宮治さん」、とお客さんが探してくれる(笑)。 LPはもう殆ど増えないからお客さんの方がよく承知してますよ。2階においてあるシングル盤はまだ4、5000枚ぐらいABC順に整理されていないやつがあるんですよ。たまに少しずつ1階に持ってきて整理してたんですけどね。最近はお客さんがいらっしゃいますので散らかすといけないので一切1階では整理しなくなったんですよ。この前、土曜日に棚卸しみたいなことをやって・・・。 まあ、そうやって老後の楽しみに急ぐことなくじっくりとやっていきたいと思っています(笑)。全部整理ができちゃうと楽しくないし、毎日レコード部屋に入って何か発見ができたらいいですね。「あっ、今日はいい曲見っけ!」みたいに。そしてシールをぱっと貼る(笑)。ほんと「牛歩」です。何とかがんばってシングル盤だけは20世紀中には、と思っていたんですけどね・・・。 僕がLPよりもシングル盤に惹かれるのは、知らない曲がLPよりも圧倒的に多いんです。今のアーティストは当然のようにアルバムを出すけど、僕の好きな70年代以前の人は普通、LPなんか出せないわけです。1曲だけでいなくなっちゃった人もいるし。そうなると究極的にはシングル盤に行かざるを得ない。持っているLPの中に好きな曲を見つけると、それがシングルで出ているとすれば、そのシングル、欲しくなっちゃうんです。 僕の好きな Paul Williams の1枚目のアルバムで『Someday Man』というLPがあるんですけど、いろいろ調べてみたらそのアルバムの1曲目に収録されている「Someday Man」はシングルカットされているんだよね。そのことを知ると欲しくなる。それ、モノラルでボーカルがちょっと違うんだよ。 |
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-雑誌 VANDA でRoger Nichols のことを連載されていましたが。
やってましたね。まさに探検隊でした。1965年以前、いわゆる「オールディーズ」といわれるものはカントリーにしてもR&Bにしてもロカビリーにしても、レーベル・リスティング(Label Listing) の研究が70年頃から進んでいるんです。例えば Imperial のレーベルなどは全て分かる。でも1965年以降のアメリカ人の関心が薄いようなレーベルは、全然研究が進んでないですね。Roger Nichols の文字自体、アメリカのコレクター誌で一切見たことない。A&M レーベルの資料なんかも見たことがないです。何番から始まっているか知らないけど。本当はそういうのがあれば助かるんですが。 -そういうのはむしろ、イギリスもそうかもしれないけど、日本の方が研究している人が多いのではないでしょうか。 1987年くらいにキャニオンから出た、『Roger Nichols And A Small Circle Of Friends』が出るまでは The Carpenters の「雨の日と月曜日は」などの一連の作家としてしか知らなくて、自分で歌っているものが出ているなんて知らなかった。 ちょうどその頃、アメリカへよく行っていた時でホテルに缶詰にされた時など、「雨の日と月曜日は」をよく聴いていたんです。これがすごくよく聞こえてきて中古レコード屋にいくと、Roger Nichols の"N" か A Small Circle Of Friends の "A"の欄は必ずチェック。時間がないときでも"N"と"A" は絶対に見る(笑)。そういうふうに探していたらそのうち全部集まっちゃったんですよ。見つかれば1ドル。誰も買わないんだね。 -宮治さんがお好きなソングライターとかプロデューサー、アレンジャーは誰ですか? |
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-ソウル・ミュージックはいかがですか?
以前はサザン・ソウルとかも好きでした。もう歳が歳だけにあんまりシャウト、汗がバ〜ッと出てくるやつは、たまに食べるビビンバみたいでいいんだけど、毎日はちょっと辛い(笑)。ソウルはどっちかっていうとシカゴ系のノーザン・ソウルとかね。Bruwnswick とか、ああいうのがいいですよね。デトロイトとか。やっぱり、あれもどこかそのシンガーよりもソングライターチームが作ってる側面が多い。だからそういう中間的な音楽が好きなんですね。 -レーベルで気になるとかずっと追いかけているものってありますか? -アルドンのスタッフライター系の曲とかは全部、揃いましたか? そう思うと、まだまだゴールのないライフワークというか、老後の楽しみにとってます。日本みたいにレコード会社が4社、8社ぐらいしかなくてそれで、統制的に出してたものと違って、3枚ぐらいしか出さないレーベルとかいくらでもあるわけです。レーベル名だって、何千、何万とあるし。アメリカはそういう意味じゃ出口がない。だから面白い。まだまだいい曲があるはずだ。だからそういう意味じゃ、最初の頃はヒット曲を聴くというのはヒットしない曲よりも自分にとっていい曲だという確率が高いから、ヒット曲を聴くようにしていたんですね。ヒットしてるからとりあえず聴いてみよう。えっ?なんでこんなのがヒットするんだよって曲もあるから。でもヒットしてない曲でもいい曲が多いって言うのもあるし。 最初はね、人気投票の500とか、そういうところから僕は始まってるんですよ。だからとりあえず、だいたいのヒット曲を聴いてるんですよ。その辺のベースに乗っかってるから良かったなと思うんです。今の若い人みたいに最初から各論に入っていける程、CDなんか当時ないしね。とにかくあるものから聴かざるを得ない。そういう意味ではヘルシーな順番。 |
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