第回 : 森 勉さん



『ビート・パレード』〜『抱きしめたい』
60年代コンサートの思い出

 先日 Beatles について書く機会がありまして、"Beach Boys 派が初めて語る「All Need Your Love」の衛星中継と来日公演"って感じです。そこで、今までにないタイプの書き方に挑戦してみたんですよ。当時中学生だったファンはどう思っていたのか。入場チケットはどんな風に入手したのか、その中学生は期末試験をどうやって乗り切ったのかとか(笑)。そんな Beatles 来日にまつわる周辺の出来事を書いてみました。僕の中学校では Beatles のコンサートに行くヤツは手をあげろ、と担任の先生に言われました。出席簿にチェックする訳です。

-コンサートに行くのが禁止だったんですか?
 そんなことはなかったんですけどクラスに4、5人ぐらいしか行くヤツはいなかったんです。それに期末試験が近かったので、ちゃんと勉強しろというプレッシャーをかけたのではないでしょうか。

 最近 Beatles の前座って、ドリフターズだったんですか?って聞かれたりするんですが、ドリフターズが出演した時間って実際には1分くらいしかなかったんですよね。内田裕也と尾藤イサオが中心でバックがブルーコメッツとブルージーンズだったということもちゃんと知ってもらいたいと思って書いたんです。たぶん、 Beatles は東芝のアーティストなので前座も東芝のアーティストしか出演することができなかったと思いますね。当時のネームバリューから言うと、スパイダースが出演しないのはおかしいという話などがあったんです。東芝サイドのプロモーションの一貫だと思われるんですが、当時のごく普通の歌謡歌手、望月浩という人まで出演したんですよね。


来日公演のパンフから。
(時計回りに Shadows、Brenda Lee、Honeycombs、Hermans Hermits、Ventures)
-Beach Boys はどうだったんですか?
 1964年頃でしょうか、Beach Boys は Beatles と並行してよく聴いていましたね。僕が一番目に気になり好きになった曲が「夢のハワイ」という曲。その後に出る Beach Boys のシングルはちょっとずつ買っていました。ほんと全部欲しかったんですが、なかなか買えなかったですね。Beach Boys は66年に来日したんですが、そのコンサートに2回行きまして、それでかなり入っていきました。

-アルバム『Pet Sounds』が出る前のことですよね。
  日本にメンバーが来ていた時に、Brian はこの『Pet Sounds』を作っていたんですよね。アルバムの裏ジャケットに日本での写真が載っている。歴史的名盤に載ったわけですから我ら日本人としては光栄です。(註、Beach Boys の来日は1966年1月、『Pet Sounds』の発表は同8月。Beatles の来日も同じ年の6月になる。)

-当時、日本公演に Brian Wilson が来るとか来ないとか情報は入ってきていたんですか?
 Brian Wilson の存在は知っていましたが、Brian が来ないということが僕達の中でマイナス・イメージにはなっていませんでしたね。その日本公演のステージでは Brian Wilson のファルセットの代わりを Al Jardine がやっていたんです。そのステージの印象が強くてレコードでのファルセットも Al Jardine じゃないかと思っていた時期もあったんですよね。

 ステージを見るとそのアーティストに思い入れが強くなってしまうんですよね。今でもそうなんですが、ライブを見るのが好きだったんですよ。Shadows、Ventures、Hollies、Honeycombs、Stevie Wonder、Martha & Vandellas の来日もありました。Brenda Lee も大好きで、歌もうまいし、来日公演のバックバンドが、Casuals というバンドで演奏も素晴らしかったです。

 昔のチケット代金は現在のように一律ではなくて、4段階くらいに分かれていたんですよ。音のいい真ん中辺りが一番高くて前の方はその次に高い。お金がない時は一番後ろ400円くらいで観たこともありました。高い席はおおよそ1000円くらいだったと思います。Beatles が2100円だったんですけど当時、高いなあと思いましたね。それを境に2000円台が当たり前になりました。でも John Coltrane など有名ジャズ・ミュージシャンなどはもっと高かったですよ。
-中学高校時代はレコード買ってコンサートに行ってそれでもうお金がなくなってしまいますよね。
 ほんと、そうでしたね(笑)。当然のことながら親に「前借り」していましたね。日々どうにかしてレコードを手に入れたいと思っていたのですが、母親が好きだった、 Elvis Presley とか Nat King Cole だったら買ってあげると言われました。それはそれでとてもうれしかったですね。僕が Elvis Presley を知った時は、もう映画の人だったんですが、昔の曲を遡って聴いてみて凄く衝撃を受けました。Elvis の『ゴールデン・レコード』というLPを買ってもらったのですが、いい曲ばかりで Beatles に通ずるものを感じてとても好きになりました。

 これは今聴けなくなっている擬似ステレオ盤。僕はこの変なエコーのかかった音に慣れているのでオリジナルモノを聴くとな〜んかダメなんですよね。





森さん愛用のこのプレイヤーで「Hound Dog」を聴かせていただきました。



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