Rain On The Roof
The Lovin' Spoonful
1966/2003 "Hum Of The Lovin' Spoonful" Kama Sutra/BMG Heritage 74465-99732-2 / CD
 暑い夏の前触れのようなスコールが大都会それもニューヨークに降ります。レンガ壁の建物の屋上に降る情景をイメージしてしまう歌、それが The Lovin' Spoonful の「Rain On The Roof」なんです。
 「Do You Believe In Magic」の大ヒットでおなじみの The Lovin' Spoonful。私は、彼らの音楽を耳にすると、都会の夏の喧騒とざわめきを感じます。彼らの「Six O'clock」、「Summer In The City」、「Day Dream」などがラジオから流れてくると、私は、夏の熱波(Heatwave)が覆うニューヨーク、そしてまどろみを誘う束の間の涼風にうたたねの気分を感じるんです。それは、John Sebastian のあのゆったりとしたヴォーカルによるものかもしれませんし、彼らのサウンドの根底のひとつにある懐かしさを感じさせるアメリカのルーツ・ミュージックの音の感触かもしれません。

 「(You And Me And)Rain On The Roof」は、彼らの曲としては、小品、小さな歌ですが、ニューヨークのイメージで聞きながら歌詞の内容を読むと、どちらかといえば郊外の農村のブリキ屋根に降る、シャワーの情景が見えてくる歌です。
 シンプルなサウンドをバックにした John Sebastian のヴォーカルが、ほのぼのとした幸福感を聴く人すべてに与えてくれる雨の歌です。


(伊東潔)



Costant Rain
Sergio Mendes & Brasil'66
1967/2002 "Equinox" A&M/Universal Music UICY-3702 / CD
 Sergio Mendes & Brasil'66。私たちの年代のポップス・ファンにとっては、「セルメン」の愛称で通じてしまう懐かしい名前です。60年代後半、私のようなアメリカン・ポップスが大好きな中学生には、「ブラジル音楽」もまして「ボサ・ノヴァ」という言葉さえ知らずにラジオから流れてくる彼らのデビュー曲「Mais Que Nada」に魅了されました。そのリズム、ヴォ−カル、サウンドが新鮮でした。第2弾の The Beatles のカバー「Day Tripper」もデビュー作を踏襲したサウンド・デザインながら、アレンジの妙でセルメンの「Day Tripper」になっていました。彼らの制作スタッフにはアレンジに Dave Grusin、エンジニアに Bones Howe や Bruce Botnick らが参加していたのを後で知りました。

 「Constant Rain(Chove Chuba)」は、彼らの3作目のヒット曲であり、「Mais Que Nada」と同じ Jorge Ben(英語詞はNorman Gimbell)の作品です。エレキ・シタール風の音とチェレスタの音をバックに、降り止まぬ雨の音を連想する歌いだし"Chove Chova,Constant Is The Rain"。Lani Hall(グループから離れてソロになったことは有名)のハスキーがかったヴォーカルは、夏が連れ去っていった失われた恋をしっとりと歌って心にしみるラヴ・ソングになっています。
 この曲の入った彼らの2枚目のアルバム『Equinox』は、先の Jorge Ben をはじめ、Antonio Carlos Jobin の「Wave」、「Triste」、Joan Gilberto といった作家の作品によってボサ・ノヴァ色の濃いアルバムになっていますが、どの曲もセルメンならではのボサ・ノヴァに仕上がっていて、ボサ・ノヴァ入門としていいアルバムだと思います。
 その後のセルメンは、「Fool On The Hill」、「Pretty World」などのヒットでA&Mの代表的なグループになっていきます。

(伊東潔)

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