Singin' In The Rain
Gene Kelly
1952/1974 "That's Entertainment" MGM Records MM 9079-80 / LP
 「雨に唄えば」。ライオンがガオッと吼えてはじまるMGM映画。映画の面白さに気付く高校生のころの僕を惹きつけたのが、MGMのミュージカルでした。全編、歌と踊りとソフトな恋愛。スタアは Fred Astaire、Bing Crosby、Judy Garland、...そしてミュージカルの大将 Gene Kelly。「雨に唄えば」は、彼が土砂降りの雨の中、スクリーン狭しと唄い踊る、大変有名で楽しい曲です。
 Gene Kellyは、あまりハンサムという感じじゃなく、体型もスマートというよりガッチリ。ダンスも華麗というよりは運動神経が先に来る感じ(そうだ、市川猿之助さんだ)。そして歌が美声じゃないと思うんだけど、泣かすところ泣かしてくれる。このシーンの彼は40度の高熱を押して撮影した、とかいう逸話があって、それにも大変感心したりしました(今考えると、この手の逸話は大げさなのが山ほどあったんですけど、それが映画少年にはまた重要だったのでした)。

 このアルバムはMGMミュージカルの集大成の映画のサントラで、いい曲が2枚でいっぱい入っていることもあり(当時からコストパフォーマンスというのも重要だった)、当時の愛聴盤でありました。この映画では「雨に唄えば」が4つも紹介されていて驚きましたが、古くは1929年のもの(Cliff Edwardsの歌、ピノキオの例のコオロギさんです)に始まり、30年代、40年代、Gene Kellyの50年代まで何度も映画で使われてきたそうです。しかし土砂降りの通りを歓びの余り唄い踊るっていうのは、なかなか実生活では有得ない、雨に歓喜をぶつけたいって衝動って無くはないと思うんだけど。そういうのがまたいいのですね。


(たかはしかつみ)



The Rain In Spain
Audrey Hepburn and Rex Harrison
1964/1977 "My Fair Lady" CBS/SONY 25AP802 / LP
 正直にいって Audrey Hepburn は僕のアイドルで、この「マイ・フェア・レディ」のサントラも高校時代に何度も何度も聞いていました。映画はロンドンのコベントガーデンとかそこら辺が舞台で、主人公の下町訛り(コックニー)を矯正するというのが映画の主エピソードなのですが、この曲はその教則歌で「ei」というコックニーに苦手な発音が山ほど出てくる。で、ぜんぜんダメだった主人公がだんだん発音をマスターしてきて、ついに出来た!っていうシーンがこの曲(そして次の嬉しいうれしい大名曲「踊り明かそう」につながります)。

 ところで、僕はこういうミュージカルの大半は日本語吹き替えのテレビで見ているわけです。ミュージカルのテレビ放映の面白さの一つに、実は「ずっと日本語をしゃべっていた人が突然英語で歌いだす」というのがあるのですが、この映画はもっとすごい。なぜかというとこの映画で Audrey の歌はプロの歌手に吹き替えられちゃっているのですが、曲の冒頭はセリフの続きで Audrey が歌っている。すぐに突如上手くなる!!なんだろう!!これに日本語吹き替えが組み合わさるとどうなっていたのか、忘れちゃったのですが、笑います。ちなみに吹き替えの歌手は、「ウエストサイド物語」の Natalie Wood の吹き替えと同じ人であったと思います
 という訳で、この曲は雨とは直接関係ないのですが、やはり雨を思います。というのも、大人になって初めてロンドンに行って、映画とあまり変わっていないコベントガーデンに行き、そこで見た曇り空、そぼ降る雨を思い出すからです。さらには最初に泊まった宿屋のおやじが完璧なコックニーで単語の発音が全くわからない、なのに「お前こんなこともわからねぇのか」ってすごい発音で叱られたのも何かの因縁です。

(たかはしかつみ)

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