The Blue Nileは1980年代初頭にスコットランドのグラスゴーで結成されたグループで、Paul Buchanan(vo,g,kb), Robert Bell(b,kb), Paul Joseph Moore(kb)の3人組。元々はエレクトリック・ポップの分野で活動を開始し、1981年にRSOから出されたデビューシングル「I Love This Life」では単に簡素なエレポップ・サウンドを奏でていました。その数年後にインディレーベルのLinn(後にVirginの傘下)でファーストアルバム『A Walk Across the Rooftops』を発表。その頃に大流行したZTTサウンドなどに比べると音が薄くて淡白な印象を受けますが、デビューアルバムにして老成を感じさせる楽曲やプロフェッショナルなセンスに溢れた渋い音作りには当時から耳を奪われてしまいました。
中でも「Tinseltown In The Rain」は、80年代以降の雨の歌の最高作の一つだと思います。雨の日のTinseltown(ハリウッド)。その中で浮かび上がる男と女の気まぐれな出会いと別れ。まるで映画の断片のような情景が淡々と歌われています。しかしその内側には狂おしいまでに熱気を帯びた情感が籠められており、どこか山下達郎「スプリンクラー」に共通するところがあります。叩きつける雨のようなシンセストリングが素晴らしくて、当初は小雨だったのが次第に激しくなり豪雨になっていく感じが見事に表現されています。あと時代を感じさせるチョッパーベースが「スプリンクラー」や「スペイス・クラッシュ」を彷彿させるところも実に僕好み(笑)。