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前作の成功から3年。もはや音楽界でも確固たる地位を築いた彼らが満を持して発表した通算10作目。17曲と、XTC
史上最も多くの曲数からなるアルバムで、アナログ盤はまたまた前作に続いて2枚組となりました。しかし
English Settlement、Oranges and Lemons、そしてこれと、XTC の2枚組 LP はどれも窮屈に1つのジャケットの口に2枚を詰め込むスタイルですね、何故だか。
Elton John で知られる Gus Dudgeon がプロデュース。Andy によると、Elton との仕事ではなく、Bonzo Dog Band の『The Doughnut In Granny's Greenhouse』のプロデュースを評価しての起用だったとの事。またドラマーはFairport Convention の Dave Mattacks という大物。米国録音だった前2作とは対照的に、伝統的英国ロックの正統継承者であることを世に知らしめようとする作品であることが、タイトルの Nonsuch や仰々しいジャケットデザインからも伺えます。 しかし Gus Dudgeon は実質何もしておらず、また案の定 Andy とは意見が合わず衝突、途中で解雇されて Nick Davis に交代する等、XTC 恒例の多難なレコーディングとなったようです。そのせいか Nonsuch は前2作に比べ統一感に欠け、曲数も多いので取っ散らかった感じがしないでもありません。しかし、個々の楽曲には優れたものが多く、XTC 健在を印象付けました。特に LP で D面にあたる部分は素晴らしい。愛聴しました。 オープニングの「The Ballad of Peter Pumpkinhead」からして貫禄十分。XTCに しては珍しいほどの堂々たる Stones 風ロック。内容は殉教者のことを歌っているのに何故か「南瓜頭」としてしまうところが Andy らしい。「The Disapponted」は憂鬱になるような歌詞ですが、曲調はそれとは裏腹の明朗なBeach Boys 風という彼らの得意パターン。ハモンド・オルガンの音色が耳に残る「The Ugly Undernearth」。今や XTC しか作れないような伸びやかなポップ・ソングの「Dear Madam Barnum」,「Holly Up On Poppy」,「Crocodile」。恒例のワールド・ミュージック趣味(ブラジル?)も「Ommibus」に出ています。 特徴的なのは今まで以上に重い印象を受ける曲が多いことで、坂本龍一のようなピアノ曲「Rook」、Genesis 的な「That Wave」、検閲制度への怒りを唄った Clapton 調のバラッド「Books Are Burning」、そして名曲「Wrapped In Grey」。この辺の作風が、後の Apple Venus Vol.1 に継っていることは言うまでもありません。 Colin は「My Bird Performs」で Simon & Garfunkel、「Smartest Monkey」で Police のような作品に挑戦してます。また、右傾化を糾弾する「War Song」、老後の人生を唄う「Bungalow」など、こちらも Colin にしては重い後味を残す曲があります。 「My Bird Performs」のフリューゲル・ホーン、「Smartest Monkey」のオルガン・ソロ、「Crocodile」と「That Wave」のDaveのギターソロなど、演奏面でも聴きどころが多いアルバムです。中でもやっぱり「Books Are Burning」のラストでの Andy と Dave のソロの掛け合いがハイライトでしょう。今聴くと感慨深いというか、複雑な気分が致します。また優れたプレイヤーが去ってしまいましたね。 ただ、音楽誌のレビューではこれまでになく低調で、ファンからの評価も前2作より芳しくありませんでした。ただ商業的には英国以外で過去最高の売上を記録しました。特に日本では先行発売やレコード会社による「XTC来て来てキャンペーン」などもあってか(?)、XTC 作品の売上記録を更新したそうです。 このアルバム発売後、Andyは突然来日し、バージン・メガストア横浜店開店イベントに参加、サイン会までやったそうです。私はいろいろあったので行けなかった(泣)。そのバージン横浜店も今では閉店してしまい、思えば随分時間が経った訳ですね。7年も前なんですよね。小学生が高校生になるほどの年月ですからね。実に長かった。 |
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